新山詩織、活動再始動後初・約4年半ぶりのツアー開催! オープニングアクトに21歳女性シンガー・Ran、さらにスペシャルゲストに盟友・山崎あおいが登場!

まずは改めて新山詩織のこれまでを振り返ってみたい。 2013年、16歳の高校生で彗星の如くデビューした彼女は、デビュー時から早くもサウンドプロデューサーに笹路正徳(スピッツ等)、島田昌典(aiko, いきものががり等)、さらにChara等の錚々たる面々を立て、制作活動を軸に5年余りのアーティスト活動を一気に駆け抜けていく。まさに10代にしか表現できない、時には自分の心をすり減らしながら、目を背けることなくリアルな感情を完成度の高いサウンドとともに吐き出していく。英国パンクバンドのダムドやチバユウスケが大好きという、人と話すのが苦手なか弱い一人の少女が音楽業界ひいては世間の荒波を渡っていくには、まだまだ時間が必要だったのだろう。2018年まさにこれから! というときに突如活動を休止する。 そこから約3年という月日が流れ、彼女は再びシーンに戻ってきた。

先日4月6日にオリジナルアルバムとしては実に5年半ぶり、『I'm Here』をリリース。初のセルフプロデュースとなるこのアルバムは、これまでの作り込まれたサウンドとはうって変わり、初期のポール・マッカートニーのソロアルバムのようなある種の『未完成なサウンド』、加えてアコースティック中心の生々しい歌声を封じ込めたサウンドで、改めて彼女の存在感と才能をリスナーにアピールした。今回のツアーはそのアルバム発売記念ともいうべきツアーということになる。 このレポートは今週末に大阪と名古屋公演があるため、全てお伝えすることは差し控えるが、今回のツアーの再始動ライブでは新山詩織を敬愛する、10代で単身福岡から上京して、現在21歳の福岡県出身の女性シンガー・Ranがオープニングアクトを飾る。可愛い少女のような外見とは裏腹に、中毒性のある個性的な声と、ギターをかき鳴らしながら聞き手をグイグイ惹きつけるパフォーマンスが魅力の、将来が楽しみなシンガーが会場を盛り上げていく。 このライブが行なわれた4月17日は、新山詩織のメジャーデビュー日(2013.4.17)という記念すべき日ということもあり、コロナの影響で声を出さずとも、この日を待ちに待ったファンの秘めた熱気のようなものが開演前の場内を渦巻いていた。 客入れのBGMは新山詩織が最近傾倒しているシューゲイザーサウンド(ニューアルバムにもその傾向が見られる)。For Tracy Hyde(メンバーの管梓も今回の新作に参加している)やスーパーカー、ダイナソーJrやMy Bloody Valentineなどの幻想的なナンバーが開演前のオーディエンスの気持ちをさらに静かに盛り上げていき、いよいよステージに彼女が登場する…(こちらの開場中および終演後のBGMプレイリストは彼女のインスタグラムに公開中)。 先ほどもお伝えしたように、まだツアー中ということもあり公演の詳細まではお伝えできないが、約5年ぶりのバンドスタイルという今回のライブ、新進気鋭の若手ミュージシャンに巨匠、小野塚晃がバンドマスターとして参加。打ち込みの音を一切出さずすべて生音にこだわったその洗練されたバンドサウンドで、デビュー当時の10代の頃の楽曲から最新アルバムの曲までが満遍なく演奏されていく。まさにベスト新山詩織というセットリストだ。年齢を重ね、過去を受け入れ、未来に向かって行く彼女は人間的にはもちろん、その繰り広げられるサウンドや歌唱力にさらなる深みを増して一瞬たりともステージから目を離せないほど、オーディエンスを引き込んでいく。

ステージ途中、盟友・山崎あおいがスペシャルゲストとして登場。この山崎あおい、新山詩織より少し先輩だが、近年では自己のアーティスト活動と並行してハロプロ系やジャニーズをはじめ多くのアーティストへ幅広く歌詞や楽曲を提供していて、まさに日本の音楽業界になくてはならない期待のシンガーソングライターである。 そんな彼女が、オリジナル曲『ともだち』を披露。 この曲は同時期にデビューした多くの『ギタジョ』を思って書いた曲だそうで、別の夢ができて辞めておく人、自分より先にさらに華やかなステージに行ってしまった人…今もここにとどまっている自分が、そんな仲間のことを思い、切なく歌い上げる名曲だ。 そして次はこの日のために新山詩織と山崎あおいの二人で作った『Free』という新曲を披露。ぼんやりと先の見えない未来だけど、二人ならきっとうまくいく…そんな誰にでもある不安を抱えながら二人の力強い絆を表した壮大なミディアムバラード。今回に限らず、今後この二人のコンビから生まれてくる曲にも期待したい。

アンコールは、オープニングを務めたRanと山崎あおいが再びステージに登場してThe Timers(モンキーズ)の『デイドリームビリーバー』を披露。再始動にふさわしい、明るく力強い素晴らしいステージとなった。 デビュー当時、10代の頃の今にも泣きそうな表情のジャケット写真。そこから約10年を経て、最新アルバムの自信に満ち溢れ凛とした彼女の表情の変化を見比べると、これからの彼女の音楽活動が末長く充実したものになると、期待せずにはいられない。[文:ペリー今村/撮影:達川範一(Being)]

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