1万円で手に入れた不動バイク「アドレスV125G」!無茶な方法で特定した故障の原因とは?【V125G復活第1回】

ある日、いつものように平日昼間にガレージでゴソゴソ撮影などをやっていたところ、ご近所さんに声を掛けられた。

足に使っていたアドレスV125Gが故障してしまい、修理代が嵩むため、乗り換えることになったとのことである。

毎日自宅にいる怪しい中年男性としては、日々、近所の人の「怪しい人を見る視線」を痛いほど感じているので、こんな時は全力で笑顔を作り、話し相手をする。

ご近所さんも、ボロバイクが詰まっているガレージのことは知っているので、私が良い歳をして毎日家にいるバイク好きということは知っているのだろう。恰好の話題ができたので、どう見ても怪しい私に話しかけてくれたのだ。

アドレスからDio110に乗り換えることになったそうだが、行きつけのバイク屋さんでは原付二種の店頭在庫は1台しかなく、他のバイクの取り寄せではいつ入ってくるかわからないということで、選択の余地はなかったらしい。

さて、ボロ愛好家として気になるのは新しいバイクのことより故障したバイクの方だ。果たして修理を断念することになった故障とはどんなものなのだろうか。

故障箇所は話を聞いただけで察しが付いた

故障の内容としては少し古いバイクにありがちなもので、ものすごく深刻な訳ではなかった。不具合としては充電不良によって走行中に充電が行われないので、バッテリー電力を使い果たすと止まってしまうというものである。

そして、壊れたアドレスV125Gは下取りにもならず、そのまま廃棄となるのだそうだ……。

ならばと考えるのは悪い癖だ。数年前に2ストのアドレスV100も焼き付いたのを貰ってきて直したものの、結局乗らずに売却してしまった前科もある。

ただ最近、昨今のコロナ禍の中、夫婦ともにリモートとなったことですっかり乗らなくなった車を一台売却したところだったこともあり、手軽な脚バイクが欲しいところではあったのだ。

そこでついうっかり、

「そのアドレス1万円で売ってください」

などと悪魔のような言葉が口をついて出てしまった。

ご近所さんとしては「怪しい近隣住民に話しかけたらただのゴミが突然1万円になった」のだから断る理由も無い。

こうして幸か不幸か商談成立、我が家にまた不動車が増えることとなったのである。

ファミリーカーのVOXYをトランポ仕様にしていたので引き上げに

原付き2種くらいのサイズであれば片側のセカンドシートだけ外せばOK

こんな経緯で引き揚げてきたアドレスV125Gはしかし想像以上にボロかった……。

1万円アドレスV125Gの現状

充電不良以外にも手を入れなければならなそうな部分が多数。

冷却ファンのカバーは大割れあり

マフラーは歪んでいてフェンダーと接触している

ヘッドライトのカウルは真っ二つに割れてる

その他も外装は傷だらけ

しかし、趣味バイクではないので、とりあえず機関をしっかりさせることだけにフォーカスして外装関係は目をつぶることとする。

フロントタイヤは溝も無いし2019年生産品

まず真っ先に取り掛かるべきは充電不良の原因探求と修理である。

ここに多大な費用と手間がかかるようであれば、さっさと諦めて引き返した方が時間も手間もダメージが少ない。

僕的には新しいと感じていたアドレスV125Gもすでに絶版車であるし、中古車体価格で10万円を切るので、本当に欲しいなら程度の良い中古車を買うのが正解なのである。

安い故障車を自分で直せば得をするなんてのは幻想で、安い故障車はボロいので、結局全面的に手を入れなければならず、結果的に程度の良い中古車をお店で買う方が得をするというのはバイクいじり趣味歴30年の中から導きだされた真理である。

とはいえ、これは癖なので、今回も手を出してしまいました。

充電不良の2大原因を解説!

エンジンがかかっていても、バッテリー充電されないというような不具合の原因は大きく分けて2つの原因がある。

①ジェネレーター(ステーター)コイルの不良による発電不良

V125Gをはじめ多くのバイクが採用するマグネット式ジェネレーターの場合、ステーターコイルの外周を永久磁石を内蔵したクランクシャフト直結のフライホイールが回転することで交流電気を発生させている。

ステーターコイルの焼損で発電不良に陥るのがよくあるトラブル。

②レギュレーターレクチファイヤの故障による充電不良

レギュレーターはジェネレーターで発電した大きな電圧を12Vに下げる役目。

レクチファイヤは発電した交流の電気を直流に変換する役目

昔々のバイクはレギュレーターとレクチファイヤは別体式だったが、今は一体式で、これがパンクすると発電した大電圧がそのままバッテリーを経て灯火類に流れるので、ヘッドライトとかテールランプが次々に切れたり、バッテリーが過充電で膨らんだりするのですぐに異常だと判断できる。

一方、一切電気を流さなくなることもあるので、それが原因で充電不良になったりもする。

もちろんこの2つの原因以外にもヒューズ切れとか配線の破断とか、配線端子の錆とか色々と原因は考えられるのだが、だいたい、ジェネレーター(ステーター)かレギュレーターの2つが発電&充電不良の原因である場合が多い。

部品注文前に故障箇所を診断する

今回の場合、ステーターコイルが怪しいのではないかと思ったのだが、間違っていたら部品代分を損するので、まずはテスターを片手に故障診断してみることに。

とりあえず、フロントカバーを開けて

レギュレーターを確認。 この黄色の3本の線がステーターコイルに直接に繋がっている。

3本それぞれの交流電圧を測ってみるとアイドリングで7Vくらい。回転を上げると12Vくらいは上がる。けどかなり低いみたいだ。

しかし、ステーターに繋がる線をカプラーから外して回路になっていない状態で交流電圧を測定してみると、1本は14Vくらいまでしか上がらないものの、他の2本はそれぞれ30Vは出てて、結構しっかり発電してるかも……。

レギュレーターを通った後の出力線の電圧は7Vくらいしか出てないので、これは12Vには遠く及ばない数値。

となるとレギュレーターが怪しいような?

VMAX1200用レギュレーターを仮接続してみる

この時点で混乱してきたので、緊急手段としてVMAX1200のレギュレーターを外して、V125Gにバラック配線でつないでみることにした。

VMAX1200のレギュレーターはステップ裏に設置されていた。

左がVMAX1200のレギュレーター。

レギュレーターは基本的にどのメーカーの車両も機能は同じなので、配線さえ繋ぎ直せば流用できてしまうのだ。

端子直はショートの危険があるので真似しないでください!

VMAX1200のレギュレーターをつないでエンジン始動してみると、やっぱり電圧は上がらない!

壊れていないレギュレーターを繋いで駄目なのだから、これはもうステーターコイルの不良と判断!

交換が必要な新品の純正部品代はガスケットなどの周辺部品を含めると15000円くらいだった。

格安サードパーティー品もネットで販売されていたが、ステーターコイルの交換は結構大変そうなので、そんなに何度もやりたくない作業である。 信頼性優先で純正部品を頼んでみることにした。 車両も部品も海外生産だろうが「純正部品」という響きに信頼を寄せることにしたのである。

注文部品はすぐに届いた。ここら辺は比較的新しい機種の強みである。古いバイクは部品探しからスタートである。

新しいと言っても調べたら13年前のバイクでしたね!

というか、私は個人的にフューエルインジェクションのバイクを所有するのは初めてでした! 恐ろしい話です。

さっそく部品が揃ったので、さっそくサクッと交換を行いたいところであります。

もはや、某メンテナンス専門誌みたいな展開になっておりますが、次回はステーターコイルの交換で充電不良が直ったかどうかのリポートをお届けしたいと思います!

Text&Photo 丸山淳大

© パークアップ株式会社