京都新聞HD、大株主に違法支払い19億円 本人や元役員らに返還請求へ

会見冒頭で頭を下げる京都新聞HDの山本社長(左)=21日午後2時すぎ、京都市下京区

 京都新聞社の持ち株会社の京都新聞ホールディングス(HD)が、大株主で相談役だった白石浩子氏(81)に多額の報酬を支払っていた問題で、京都新聞HDは21日、34年間に及ぶ相談役報酬の支払いや私邸の管理費用の肩代わりが会社法違反に当たるとした第三者委員会の報告書を公表した。違法な支払いは総額で19億円に上るという。記者会見した山本忠道社長は「当社が負うべき社会的責任に照らして許されることではない。法令に照らして厳正に対処する」と謝罪した。

 京都新聞HDは浩子氏や元役員らに返還を求める。現役員の中で支払いに関わった同HD前社長の松山和義取締役(59)と、浩子氏の息子の白石京大取締役(48)は次回の役員改選時には再任しないという。

 報告書によると、浩子氏は1987年に京都新聞社の相談役に就き、同HD設立後はHDの相談役に就任。子会社5社の相談役も務め、2021年まで多い年で6千万円超の報酬を受け取り、34年間の総額は約16億4700万円に上った。また、同HDなどは左京区にある浩子氏の私邸の管理費を少なくとも約2億5900万円負担した。

 第三者委は、浩子氏が在職中、出社せずに業績報告を受けるなどしていただけで「(同HDなどが)報酬に見合う役務を受けたとは認められない」と判断。報酬は、特定株主への利益供与を禁じた会社法の規定に抵触すると結論づけた。私邸の管理費の負担も「浩子氏のための支出」とし、違法と認めた。

 浩子氏は代表取締役を務める資産管理会社と個人で28.4%の株式を保有している。報告書は、違法な支払いが始まった経緯について「(当時の経営陣は)浩子氏に対し、大株主として経営方針に口出ししない代替に多額の報酬を保証するという合意が成立した」と推認。経営陣の人事に大きな影響力を持つとみられた浩子氏の意向に反することができず、問題が是正されなかったとした。

 浩子氏の報酬を巡っては2014年の大阪国税局の税務調査で過大との指摘を受けたが、修正申告した後も高額の支払いが続いた。20年に京都新聞グループ内で疑問視する声が上がったため、内部調査を実施。不適切な可能性があると判断して昨年3月に相談役を解嘱した。

 京都新聞HDは同6月に弁護士の元大阪弁護士会長小原正敏氏が委員長を務める第三者委を設置、調査を進めていた。

■京都新聞社のコメント

 京都新聞ホールディングスが会社法に違反して、特定株主に利益供与を続けていたとする第三者委員会の調査報告書が公表されました。読者、市民の信頼を揺るがせたことを深くおわびします。京都新聞社は、京都新聞ホールディングスの100%子会社ですが「正義」「自由」「真実」を守ることを掲げた社是の通り、独立した立場で今回の問題を報道していきます。

■京都新聞ホールディングスのコメント

 京都新聞ホールディングスは4月15日、主要株主に対して報酬支払いを継続してきたことが、法令の適用上、どのような法的判断を受けるのかということに関し、調査を依頼していた第三者委員会から調査報告書の提出を受けました。

 第三者委員会の見解は、主要株主である前相談役に対して相談役報酬の支払いを継続してきたことが、株主の権利の行使に関する利益供与を禁じた会社法120条1項に反して違法との判断でした。当社は、公共性と文化的使命を担う新聞事業を行い、より高い倫理意識が求められる立場であるにもかかわらず、第三者委員会から法令違反を指摘されたことを極めて重く受け止めております。

 当社は今後、主要株主である前相談役や利益供与に関与した役員に対する法的措置を検討するとともに、再発防止に向けて役員間の相互監視の強化や社内規定の見直しなどに取り組み、法令順守を徹底してまいる所存です。

 読者をはじめ、株主、取引先の皆さまにご迷惑、ご心配をおかけいたしましたこと、心よりおわび申し上げます。

■京都新聞ホールディングスとは

 前身は京都日出新聞と京都日日新聞の合併で1942年に設立された旧「京都新聞社」で、2014年の持ち株会社化に伴い今の社名に変更した。傘下には100%子会社として、新聞の編集や制作を担う現在の京都新聞社、広告や新聞販売を担当する京都新聞COM、新聞印刷を行う京都新聞印刷などを持つ。

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