<社説>沖北委復帰50年決議 立法府の矜持伝わらない

 衆議院沖縄北方対策特別委員会は21日、沖縄の日本復帰50年に関する決議を賛成多数で可決した。自民党や立憲民主党など5派の共同提案で提出されたが、日米地位協定の改定や見直しの記述が決議文に盛り込まれなかったことから共産党が反対し、全会一致にはならなかった。 地位協定見直しを認めない日本政府に配慮する与党の立場にほとんどの野党も折り合いを付け、双方が体裁を繕った形式的なアピールという印象だ。いったい誰に向けた決議なのか。国権の最高機関である立法府としての矜持(きょうじ)や歴史観は伝わらない。

 委員会決議は「沖縄の自立的発展」「地元の意思を十分尊重」と掲げ、復帰50年で沖縄に寄り添う姿勢を示す。一方で、2022年以降の新たな沖縄振興を巡るこれまでの国の制度改正は、沖縄の主体性を後退させ、政府の関与を強める傾向が顕著に表れた。

 国会は3月末に改正沖縄振興特別措置法を全会一致で成立させたが、政府のさじ加減で沖縄関係予算が増減する構造的な課題は解決されず、県が策定する沖縄振興計画の「5年以内の見直し」も新たに規定された。政府の「沖縄振興基本方針」では「沖縄の自主性を最大限に尊重」の文言が削除され、領土保全の重要性など沖縄の安全保障上の役割が強調されている。

 いずれも決議と矛盾する。沖縄に寄り添う決議の精神が本物であれば、名護市辺野古の新基地建設に反対する県政を冷遇し、振興費を絡めて地元を分断しようとする政府のやり方を問う方向で国会議論を深めるべきだ。

 国家の起こした戦争によって沖縄は苦難の道を歩まされた。県民の4人に1人が犠牲になり、県土が破壊された。日本本土と切り離された米軍支配下の27年で、戦後の経済復興は大きく遅れた。

 復帰から50年がたっても過重な基地負担は解消されないどころか、県民投票で投票者の7割が反対した新基地建設が進められる。日米地位協定によって米軍基地には国内法が及ばず、基地から生じる騒音被害や環境汚染、そして繰り返される事件事故という不条理が押し付けられる。

 日米地位協定があるがゆえの問題を沖縄県は長年にわたって訴え続け、全国知事会も2018年から地位協定の改定を提言している。国家の在りようが問われている。しかし、沖北委の決議で野党側の素案にあった地位協定の改定は、与党側の反発を受けて最終案で削除された。

 民主主義や憲法が保障する権利が完全に適用されない復帰50年の沖縄の現実を、立法府がどう認識しているのかを決議は示さなければならないはずだ。沖北委に続き、衆院本会議での決議も検討されている。沖縄の訴えに真剣に向き合ってもらいたい。そして、国家が戦争を繰り返さないという決意を新たにすることが今まさに重要だ。

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