「オーナー家」の過剰な聖域化が不祥事生む 京都新聞HD違法報酬問題

元相談役への違法報酬問題で、会見冒頭に頭を下げる京都新聞ホールディングスの山本社長(左)=21日午後2時すぎ、京都市下京区のホテル

 京都新聞ホールディングス(HD)が元相談役の白石浩子氏(81)に違法に報酬を支出していた問題で、第三者委員会は不祥事の背景として、「オーナー家」と呼ばれた白石家が社内に及ぼす影響力の大きさを指摘した。歴代の経営陣は自分の地位が危うくなるのを恐れ、白石家の一員で大株主でもある浩子氏の処遇に触れることを「タブー視」したと分析した。

 第三者委の報告書によると、京都新聞社では1946年から35年にわたって代表取締役を務めた故白石古京氏の存在が大きく、白石家自体も同社の象徴的な存在とみられていたと指摘。古京氏の実子で社長を務めた英司氏が83年に急逝した後、妻の浩子氏が株式を相続し、大きな影響力を持つようになったとした。

 経営陣は、事業を円滑に進めるために浩子氏に「過剰な配慮」をするようになったと認定。その状況が長期間続いたことで、「浩子氏の処遇について触れること自体をタブー視する組織風土」が経営陣に醸成されたとした。

 また報告書では、経営陣は大株主の浩子氏について、「その意向に反すると取締役を解任されるなどのリスクがあると認識していた」と推認。自分たちの代で処遇を見直すことが見送られ、前例踏襲が続いたと分析した。

 21日に記者会見した山本忠道京都新聞HD社長は「白石家が当社グループの発展に大きな功績を残した事実は否定されるものではない」とする一方、「(白石家に対する)過剰な聖域化が、前例踏襲や『ことなかれ主義』による思考停止につながり、順法意識の欠如を招く結果になった」と謝罪。再発防止に向け、社外人材の役員登用や役員に関する社内規定の見直し、取締役間の相互監視強化を挙げた。

■京都新聞社・大西祐資社長のコメント

 京都新聞ホールディングスが会社法に違反して、特定株主に利益供与を続けていたとする第三者委員会の調査報告書が公表されました。読者、市民の信頼を揺るがせたことを深くおわびします。京都新聞社は、京都新聞ホールディングスの100%子会社ですが「正義」「自由」「真実」を守ることを掲げた社是の通り、独立した立場で今回の問題を報道していきます。

■京都新聞ホールディングスのコメント

 京都新聞ホールディングスは4月15日、主要株主に対して報酬支払いを継続してきたことが、法令の適用上、どのような法的判断を受けるのかということに関し、調査を依頼していた第三者委員会から調査報告書の提出を受けました。

 第三者委員会の見解は、主要株主である前相談役に対して相談役報酬の支払いを継続してきたことが、株主の権利の行使に関する利益供与を禁じた会社法120条1項に反して違法との判断でした。当社は、公共性と文化的使命を担う新聞事業を行い、より高い倫理意識が求められる立場であるにもかかわらず、第三者委員会から法令違反を指摘されたことを極めて重く受け止めております。

 当社は今後、主要株主である前相談役や利益供与に関与した役員に対する法的措置を検討するとともに、再発防止に向けて役員間の相互監視の強化や社内規定の見直しなどに取り組み、法令順守を徹底してまいる所存です。

 読者をはじめ、株主、取引先の皆さまにご迷惑、ご心配をおかけいたしましたこと、心よりおわび申し上げます。

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