TikTokがJリーグをバズらせる! ウンパルンパ×佐藤陽一(TikTok Japan GM)

2022年4月11日、JリーグはTikTok Japanとのサポーティングカンパニー契約締結を発表しました。同日、JFAハウスにて共同記者会見が行われ、Jリーグから野々村芳和チェアマン、特任理事の中村憲剛さん、TikTok Japan の佐藤陽一GM、そしてアンバサダーに就任したクリエイターのウンパルンパさんが出席しました。

TikTok上ではユーザーによって投稿されるバラエティに富んだ動画が、世界中で幅広い層に視聴されています。Jリーグは、Z世代へのアプローチを課題に挙げており、TikTokとの施策を通じた魅力の発信に期待を寄せています。

記者会見終了後、AZrenaでは佐藤GM、ウンパルンパさんに単独インタビューを実施しました。
佐藤GMは、GoogleやMicrosoftでの勤務を経て19年にTikTok Japanへ入社。翌年1月にはGMに就任しました。ウンパルンパさんは、“あるあるネタ”で人気を集めるTikTokクリエイターです。TikTokのフォロワー数は150万を越え、TikTok CREATOR AWARD 2021ではコメディ部門最優秀賞を受賞しました。

日本のTikTokを異なる側面から支えているお二人に、Jリーグとタッグを組むに至った経緯や、今後に向けた意気込みを伺いました。

スポーツはTikTokの一大カテゴリー

―まずは、TikTokがJリーグとパートナー契約を結んだ理由を教えていただけますか?

佐藤:近年、TikTokは『UEFA EURO 2020』の公式スポンサーになるなど、グローバルなパートナーシップを展開してきました。そんな座組を日本でもやりたいなと思い、以前からJリーグさんとお話を進めさせていただいたんです。

TikTokにおいてサッカーコンテンツは数も多く動画再生数も伸びる、非常に人気のカテゴリーです。例えば、世界で「#soccer」や「#football」を付けて投稿された動画の総再生回数が5,100億回※を超えており、欧州には1,000万フォロワー以上のクラブアカウントが多数存在するなど、大きな数字が人気を表しています。(*2022年4月11日時点)

―今回、ウンパルンパさんを起用した理由は?

佐藤:サッカーのTikTokクリエイターで真っ先に頭に浮かんだのがウンパルンパさんでした。動画の編集技術だけでなく、リアルな演技力も圧倒的に優れています。TikTok CREATOR AWARD 2021ユーザー投票などによってコメディ部門の最優秀賞も受賞されました。

彼のコンテンツは“共感”を呼ぶんです。会見の中で、野々村チェアマンも「こういうのあったなあ」とおっしゃっていましたよね。ウンパルンパさんにお願いすることに、迷いはありませんでした。

ウンパルンパ:最初にお話をいただいた時は、「うそでしょ!」と(笑)。地元・愛知の豊田スタジアムで名古屋グランパスの試合を見ていましたし、小学生の頃からJリーグは憧れの舞台だったので、即答でしたね。

―あるあるネタでサッカー部の先生を演じていますが、動画内で使用する笛にもこだわっているそうですね(笑)。

ウンパルンパ:そうですね(笑)。500円くらいの安い笛も売っていますが、僕は監督や審判の方と同じ6,000円くらいのものを使ってるんです。

―ちなみに、ウンパルンパさんがTikTokを始めたきっかけは。

ウンパルンパ:友だちから勧められたことがきっかけです。最初は本当に軽いノリでした。コロナ禍で授業も部活もなくて、時間があったんです。安倍(晋三)元総理のモノマネなど、今とは違うネタを投稿していました。

ただ、全然バズらなくて悔しかったんです。そこで、あるあるネタを思いつきました。これなら興味を持ってもらえるかなと。一気に10本くらい投稿したうちの一つがバズって、今ではこうしてお仕事をいただけるようになりました。

―動画の登場人物のモチーフにしている人はいるんですか?

ウンパルンパ:オリジナルでやっています。ただ、同級生からは、「絶対あの人だろ」と言われます(笑)。昔から担任の先生のモノマネなどをしていましたし、影響は受けているかもしれません。

―フォロワーが増えるにつれて、周囲の反応はどう変化しましたか?

ウンパルンパ:あるあるネタを投稿している方が他にもいたので、当初は「パクリだろ」とか「二番煎じだろ」と言われることもありました。それでも自信をもってやり続けた結果、半年くらいで温かいコメントが増え、街で声を掛けられるようにもなりました。

親も最初は反対していました。もともと僕は教員を目指していたこともあり、TikTokは安定という道ではないですからね(笑)。今は応援してくれています。

クリエイターの情熱が流行を生み出す

―ウンパルンパさんは、学校の先生を目指していたんですね。

ウンパルンパ:サッカー部の顧問になりたくて、教員を目指していました。中学生までは選手としてプロを目指していましたが、愛知県内の強豪高校に進学して「自分より上手い人がこんなにいるんだ」と。プロになる夢はあきらめましたが、なにかしらの形でサッカーとは関わりたいと考えていました。

―ウンパルンパさんのサッカーへの熱量は、コンテンツの面白さや人気に繋がっていると思います。その他の人気クリエイターも「熱量」が伝わってきますよね。

佐藤:スポーツにおいてプロ選手になれる人はほんのひと握りです。ただ、ウンパルンパさんは学生時代にサッカーに情熱を燃やしていたからこそ、面白いコンテンツをつくれるし、見た人が共感できるのだと思います。クリエイターの情熱が、流行をつくっています。これをJリーグ人気にも昇華させたいな、と。

先日、指パッチンの動画などで人気のTikTokクリエイターの「指男」さんとお話する機会がありました。彼は「指パッチンをもっと極めたい。指という楽器で人を楽しませる」という信念の下、本気で取り組んでいます。

TikTokは、クリエイターの熱意が素早くダイレクトに伝わるプラットフォーム。TikTok発のクリエイターが活躍の幅を広げる理由の一つはここにあると思います。

TikTokはリアルとの接触に強みがある

―Jリーグにとって、「Z世代に届ける」というのが一つの鍵かと思います。ウンパルンパさんは、同世代のJリーグへの関心をどう感じていますか?

ウンパルンパ:Jリーグは知っていても、スタジアムに行く人は少ないですよね。自分の周りも、Jリーグより海外サッカーをスマホで見ている人が多いです。

―TikTok、オンラインを通じたPRに力を入れるのはもちろんですが、実際にスタジアムへどう行ってもらうかが大事ですよね。

ウンパルンパ:小学生の時、豊田スタジアムで名古屋グランパスの試合を見ました。大歓声のなかでプレーする選手を見て、興奮したんです。「自分もこうなりたい。ここでプレーしたい」と。その経験からプロサッカー選手を目指し始めました。間違いなくスタジアムには魅力が詰まっているので、多くの人がそこへ行くきっかけをつくりたいですね。

僕がアンバサダーとしてJリーグファン以外に“ウケる”投稿をするのもそうですけど、選手がオフの姿を見せることも重要かなと。試合中とは違う意外な一面を見せることで、新しいファンが生まれるかもしれません。ハンドボールのレミたんがまさにそうですよね。

@anriremi

回線速度の歴史

#meme

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佐藤:皆さんが思っている以上に、TikTokはリアルとの接触が強いプラットフォームです。TikTokで紹介された本が、実際に書店で売れて話題になることもあります。

スマホはどこへでも持っていけるデバイスで、ほぼ全ての人が持っている。僕のような年を取った人間が思っているほど、オンラインとオフラインは断絶されていません。スポーツの話ですと、Bリーグ・川崎ブレイブサンダースさんがTikTok上の施策を通じてチケット販売増に繋がったという話もあります。

別の視点でいうと、日本のプロスポーツでもっと魅力を発信していける部分は競技以外のエンタメ性です。たとえばアメリカのメジャー野球は、球場に行く道のりから楽しいんですよね。グッズやスタジアムグルメなど、サッカーをあまり知らない人でも楽しめる発信も重要です。それだけでスタジアムに行く理由になりますから。動画投稿のハードルが低い若年層の力を借りて、様々な世代の人々の心を動かしていきたいです。若いクリエイターのみなさんに、スタジアムの楽しさを発信してもらいたいですね。

―佐藤さんのキャリアを見ると活字系メディアが長いと思いますが、動画メディアが伸びている理由はどこにあるとお考えですか?

佐藤:本を読む習慣がある人はかなり少ないと言われていますが、それをベースに考えると長い文章でのメッセージが届く人は限られています。文字を読むのが苦手な人も含めた広い層に短い動画でアピールできるのは絶対的な強みです。

また、TikTokのユーザーが見るのはフォローしているクリエイターの動画だけではありません。ほとんどの人が「おすすめ」フィードを見ます。ここではフォローしているかどうかに関わらず、話題になっている投稿やユーザーの嗜好に合う動画が見られます。面白いアカウントやコンテンツとの偶発的な出会いがつくれるんです。そういった特徴も含めて、TikTokには活字メディアとは違う面白さ、強みがあります。

―最後に、TikTokを通してJリーグにどう貢献したいかを教えてください。

ウンパルンパ:僕の視聴者さんには、サッカーをあまり知らない人も多くいます。そうした人に刺さる動画をつくって、Jリーグをさらに盛り上げたいと思います。

佐藤:僕たちは舞台をつくることしかできません。あとは、クリエイターやユーザー、Jリーグに関わる方がTikTokを面白いと思ってくれるか、楽しんで動画を作ってくれるかにかかっています。縁の下の力持ちとして、相乗効果に期待しています。

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