日本の食文化を語る中で決して欠かすことができないのが味噌と醤油。
近年では多くのメーカーが全工程を機械で製造するようになった中、昔ながらの製法で真面目に取り組んでいる醸造所があります。
創業は江戸時代、嘉永2年(1849年)。
徳島空港からは車で約1時間、徳島県阿波市にある『三浦醸造所』。
ここでは、「自然生え」と言われる伝統製法を守り、作り続けられている三浦醸造所の「ねさし味噌」をご紹介させていただきます。
より安全で美味しいものを。
美味しく楽しいのはもちろん、愛情もしっかり味わうこと。
「効率のよい現代の製造方法に比べれば、どうしても手間と時間はかかります。でも、昔ながらの味や本来の美味しさ、そして代々の作り手が繋いできてくれた技術や発酵文化を伝えるには、やはりこのやり方が一番だと思うんです。」
そう語られる三浦杜氏夫妻。
そんな思いが込められたのが、三浦醸造所で作られる「ねさし味噌」なのです。
素材にも徹底的にこだわりたい。
三浦醸造所では原材料の栽培も自ら手掛けています。
「どちらかと言うと、農業がやりたくて家を継いだんです。農業を始めて数年たった頃、ある自然農法家さんに出会いました。その方が作っておられる味噌を食べて衝撃を受けました。こんなにおいしい味噌があるのか!と…。」
この経験が、食と農に対する価値観を大きく変えるきっかけになったという三浦さん。
原材料である米は全量、大豆も一部ご自身で栽培されておられます。
「どんな糀を作るか、そのイメージをしっかり持って米や大豆を育てています。」
栽培方法も実にユニーク。
お伺いしたときは冬だったので稲は刈り取った後でしたが、「放り苗」の跡を見ることができました。(画像手前・稲株の跡が整列していないところが「放り苗」の跡)
味噌の醸造蔵は創業時からのもの。
「ねさし味噌」を仕込んでいる蔵は築174年。
つまり、創業以来この蔵で仕込みをしていることになります。
蔵全体には「ねさし味噌」の香りが漂います。
「ねさし味噌」は、国産丸大豆とにがり成分を多く含んだ塩だけが原料。
余計なものは一切入れずに昔ながらの製法で作り上げられるのだそうです。
はしごを使って蔵の2階に上がると、むしろの上に直径10cmほどの円盤状のものが並んでいるのが見えます。
大豆を蒸して、冷めないうちにミンチの機械に通してすりつぶし、なまこ状に成形したものを2cm程度にカットし、稲わらのむしろの上に斜めに寝かせながら並べ、自然に毛カビが生えるのを待つ…
これは「なまこ」をむしろに寝かせてから半月ほど経った状態のものです。
気温が低ければ、毛カビが生えるのはゆっくりなのですが、気温が上がれば2〜3日でふわふわに生えることもあるのだそうです。
毛カビの状態を確かめる杜氏の顔は真剣そのもの。
日によって気温が変化する今の時期は特に神経を使うのだとか。
気温によって変わる発酵の速度。
それを見極めるのが杜氏の大事な役割。
そんな杜氏の表情がパッと和らぐ瞬間が…
どうやら今年の仕込みも順調なようです。
「ねさし味噌」は、大豆、塩、そして蔵に住み着いた毛カビの菌がいるからこそ、生み出される味わいなのです。
「ねさし味噌・米糀味噌セット(生味噌・各450g×1パック)」
(写真提供:三浦醸造所)
国産丸大豆とにがり成分を多く含んだ食塩のみを使用し、蔵付きの糀菌を用い、3年から5年じっくり寝かせて熟成させた「ねさし味噌」。
杜氏自ら育てた自家栽培米を100%使用し、通常の2倍の糀を用いた「二十割糀」で仕込んだ「米糀味噌」。
この2つの生味噌をセットにした「ねさし味噌・米糀味噌セット」をお届けします。
素材の旨味をグッと引き立てる「ねさし味噌」。
たっぷりの野菜の旨みを「ねさし味噌」が更に引き立てる。
昨今、減塩が多い味噌ですが、しっかり出汁を取ったり、カリウム含有量の多い海藻や野菜を具材に取り入れたりすることで、余分な塩分を摂取せずに昔ながらの味噌を味わえます。
しかも、美味しいから毎日でも飲みたくなるのです。
3年間寝かせて出来上がった「ねさし味噌」の香りは強く、同じ発酵食品であるブルーチーズを連想する人もいるのだとか。
サバの煮つけ、麻婆豆腐、カレーやミートソースのような煮込み料理の隠し味にもオススメだそうです。
杜氏の想いが感じられるエピソードをご紹介
三浦醸造所がある、徳島県阿波市市場町筋の古い数え歌に登場する十軒の商家。
その中の一節にある「むらいさんくの味噌、醤油」のむらいさんは創業者の三浦村次さんのこと。
今でも営業を続けられているのはここ三浦醸造所だけで、創業は1849年で江戸時代から続く老舗なのです。
創業以来続く「ねさし味噌」造りに対して、醤油造りは太平洋戦争のときに原料の調達が困難になり、止む無く中止していたのです。
「昔、それぞれの家で手作りしていた頃のような素朴で豊かな味わいを再現したい…」
杜氏のそんな想いはついに行動へ。
(写真提供:三浦醸造所)
とび職の経験者であった、出入りの桶職人にアドバイスをもらいながら仕事の合間を縫い、15年かけて自らの手で蔵を建設。
醤油づくりについても、図書館に通い古い文献を調べて一から手探りで勉強したそうです。
そう、まさに手作りの蔵でつくる手作りの醤油!
(写真提供:三浦醸造所)
常温で2年間じっくりと熟成させたもろみを一回だけ搾った一番搾りの醤油につけた名前は「夢來(むらい)」。
杜氏の30年越しの夢が叶ったこの醤油、三浦醸造所の創業者である三浦村次氏の愛称である「むらいさん」にちなみ、そして「MIURA」の5文字の並べ替えという遊び心も加えて、「夢來(むらい)」という名前を付けたそうです。
杜氏が復活させた「一番搾り限定醤油」は、MITASU Storeでの取り扱いはありませんが、杜氏の熱い想いと行動力が感じられるお話だったので紹介させていただきました。
素材に徹底的にこだわり、より安全で美味しいものを作りたいという杜氏の想いがこもった「ねさし味噌・米糀味噌セット」。
ぜひご自宅で味わってみてはいかがでしょうか。
■「ねさし味噌・米糀味噌セット」
■こちらでもオススメのお店などを紹介しています!
Instagram:https://www.instagram.com/hitoshi_saichan/
三浦醸造所
〒771-1604 徳島県阿波市市場町市場町筋468
*この記事は2022年2月時点の情報を基に作成しています。
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ライター:さいちゃん