<書評>『琉球の考古学 旧石器時代から沖縄戦まで』 最新の沖縄の考古学を解説

 本書は県内各地において近年明らかにされてきている最新の考古学の情報を、著者の豊富な発掘調査等の経験から遺跡を通して解説している。
 著者の宮城弘樹氏は、今帰仁村教育委員会の発掘調査専門員から出発し、世界遺産今帰仁城跡の発掘調査や整備において実績を積み、その後は母校の沖縄国際大教員となり、沖縄県内の考古学界に広く関わっておられる。
 本書は5章で構成されている。第1章では日本や東南アジア島嶼(とうしょ)部からの影響によって作り上げられてきた琉球列島独自の時代区分や地理的特質について、第2章では旧石器時代の琉球列島、特に近年著しい成果をあげている更新世人類化石について、最新の成果を紹介している。第3章では先史時代の琉球列島の貝塚文化と本土の縄文文化の違いについて、これまでの研究史から解説している。第4章では宮古・八重山地域の沖縄本島とは異なる先史時代の紹介、第5章ではグスク時代から近世琉球、沖縄戦の発掘調査に至るまで解説している。
 最後の「おわりに」には著者の地元沖縄への思いが特に表れている。大国に翻弄(ほんろう)されてきた沖縄の過去の歴史、そして本州より約千年遅れてやってきた農耕の始まりが、遅れた文化として揶揄(やゆ)されてきたことに対し、遺跡調査を通して魅力にあふれた沖縄文化の素晴らしさを説いており、島人(シマンチュ)考古学者としての矜持(きょうじ)があふれている。くしくも今年は復帰50年の節目の年であり、沖縄文化を再考する一助となるであろう。
 本書はオールカラーによる図や写真で遺跡を介して沖縄の歴史が解説されており、考古学に携わる者にとってはおなじみの土器編年や、遺跡が時代によってどのように立地しているのかなど、図や写真を多用しているのが特徴だ。100ページ程度で手に取りやすく、小難しい考古学専門書を一般向けに分かりやすく解説しているので、考古学初心者、琉球の歴史・文化になじみのない方にはぜひお薦めしたい。
 (玉城靖・今帰仁村歴史文化センター館長)
 みやぎ・ひろき 1975年名護市生まれ、沖縄国際大准教授。著書に「首里城にいたるまでのグスク」(単著)、「南島考古入門」(共著)などがある。

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