デビュー50周年!チューリップが一瞬で引き戻してくれた “青春の時間” 50周年のアニバーサリー! コンサートツアー「the TULIP」がスタート

チューリップ 50周年コンサートツアー「the TULIP」スタート

今年デビュー50周年の記念ツアーを開催するチューリップについて書こうと思う。

実は編集部の方に今回の執筆依頼をいただくまですっかり忘れていたのだが、僕は4年くらい前にチューリップにまつわる思い出話を『第2期チューリップ「2222年ピクニック」普遍的な愛とスぺーシーサウンド』でしていたのだった。

今改めて読み返すとまとまりのない文章がダラダラと続いたあげく、締めの一文は「やっぱり一回では完結できない。この続きはまたの機会に改めることとしよう。」と唐突に強制終了していた。

ひどい。あまりにもひどい。途中棄権に終わったその文章を読んだ僕は、赤面と発汗と目眩に襲われた。ただちにリマインダーへ削除の申し入れをしようと思ったくらいだ。それが叶わぬなら、リマインダーのサーバをハックしてでも削除しなければと。

いやしかし、規約的に無理だろうし、ハックしたら不正アクセスでタイホだ。そもそもそんな高度なことが僕にできるはずがない。ここは腹を据えて今回をその “またの機会” にしなければならない。

「2222年ピクニック」がきっかけで大好きになったチューリップだったが…

前回の内容をおさらいすると、いかにして僕はチューリップが好きになったか、という話だった。

1982年、当時中学2年だった僕の愛聴番組『坂崎幸之助のオールナイトニッポン』にゲスト出演したメンバーの人柄と、その時に流れた「2222年ピクニック」がきっかけでチューリップが大好きになった。そして好きになればなるほどジレンマを抱えることになったという話だ。

今回はその続き。

そのジレンマが何かというと、友達にチューリップが好きなことを言えないことだった。

当時は日本の音楽史上、空前絶後の洋楽優勢時代。そして、特に男子はヘビーメタルが大ブームとなっていた時代。かくいう僕も小学生の頃にビリー・ジョエルで洋楽に開眼。中学に入ってからは友達と洋楽ロックに深く傾倒していた。

そんなロックの友達に「チューリップ聴く?」なんて言ったらどんな反応するだろうか? そう考えると、僕は自分がチューリップファンであることを誰にも言えず、独りでこっそり聴くようになった。

友達との間では「今度のリッチーのギター最高じゃん!」とか話しながら、家に帰ったら体育座りでチューリップ。

今思い返すと甚だナンセンスな話だ。音楽なんて個人の好みで選ぶものなのに。そういう時代だったのかもしれないが、まさに中二病的な世界だ。

しかし、ある日僕がチューリップのファンであることがバレてしまった。親友とも言える存在のJ君が僕の家に遊びに来たときに、部屋のカセットテープラックに「2222年ピクニック」があるのを見つけられてしまったのだ。

友達が来る時にはチューリップなどの聴いていることを知られたなくないテープは隠していたのだが、その日はうっかり忘れていた。J君はそれを見つけて驚いて笑いながら言った。

チューリップがつないだ友情

「えええ、チューリップなんて聴くの~!?(笑)」

J君はメタル好きで、特にオジー・オズボーンやレインボーをいつも一緒に聴く仲だった。よりによって知られたくない奴に見られてしまった。

秘密がバレて僕がシドロモドロになっていると、J君は意外な方向に話を続けた。

「俺も実はすげえ好きなんだ。財津和夫が出てるCM覚えてる? カッコいいよね~」

実はJ君も無類のチューリップファンなのだった。そもそも、音楽を聴くようになったきっかけがチューリップらしく、僕よりもファン歴は長く詳しかった。

その日以来、J君からチューリップのことを色々と教えてもらうことができた。J君もまた僕と同様に独りチューリップファンだったので、語り合える友達ができたのは嬉しかったらしい。

みんなと一緒にいるときは「今度のマイケル・シェンカーは…」とか言ってるのに、二人きりになると「安部さんの今回のフレーズは…」となる。なにか、二人だけでチューリップの秘密結社を作っているような気分だった。

その後、お互いに大学に入る頃にはチューリップの活動量と比例するように、J君との距離も少しずつ遠のいていった。

財津和夫が語るポピュラー音楽の力

今年、チューリップのデビュー50周年記念のツアー『the TULIP』を行うと知って、僕は迷わずチケット予約に申し込んだ。家族は行かないので一枚だが無事ゲットできた。

そして、その時J君の顔が思い浮かんだ。彼とは20年以上連絡してない。しかし、Facebookでは検索して見つけていた。僕は勇気を出してメッセンジャーで問いかけてみた。久しぶりの挨拶もそこそこに、「チューリップはまだ聴いているか」と。

彼からはすぐに返信があった。

「あいかわらず聴いてるw 今度ライブやるよね。行く? 俺は行くけどw」

この時、僕らはメッセンジャーを使っているけれども、一瞬で中高生の頃に戻っていたような気がする。J君もまた今回のツアーのチケットを取る時に、私との日々を思い出していたらしい。

残念ながら私がライブに行く日とJ君が行く日は同じでなかったけれども、今度呑もうという約束をした。

チューリップのメンバーが離れては再会するように、僕らも再結成できそうだ。チューリップの半世紀には及ばないけれど、40年の歳月を飛び越えて。

そういえば、最近読んだ財津さんのインタビューにこんなことが書いてあった。

「青春の時間に一瞬で引き戻してくれる力があるのがポピュラー音楽なんだと思います」

財津さん曰く、ポピュラー音楽はタイムマシンなんだ、と――

本当にその通りだと思う。

財津さん、そしてチューリップが作った数々の楽曲は、僕にとっては最高のタイムマシンのような存在なんだと――

カタリベ: 阿野仁マスヲ

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