雨にも負けず最終SSで再逆転。トヨタのロバンペラ、タナクを破り2連勝/WRC第3戦クロアチア

 4月24日、WRC世界ラリー選手権第3戦クロアチアの競技最終日となったデイ3は、SS17~20の計4SSが行われ、TOYOTA GAZOO Racing WRTのカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が逆転に次ぐ逆転劇で今季2勝目を飾った。

 2022年シーズン最初のフル・ターマック(舗装路)ラリーとして開催されたクロアチア・ラリーは、22日金曜のデイ1から雨の影響で荒れ模様の展開となった。翌23日(土)は一部を除いて降雨に見舞われなかったものの、アドリア海に面したリエカ近郊の山林で行われたSS11では予想外の雨と霧によりフルウエットでの戦いに。

 初日から独走状態に入り、後続に対して1分10秒以上のリードを築いていたロバンペラはこのステージにウエットタイヤを履いて臨むが、左フロントのパンクよって大きくタイムを失う。一方、同じくウエットタイヤを選択していた総合2番手のオット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1)が同ステージでタイムを伸ばし、その差は一気に16.8秒にまで縮まった。

 首位ロベンペラ、19.9秒遅れてタナクが2番手につけた状態で迎えた競技最終日。朝から晴天に恵まれた1日だったが、午前中の2本目のステージでふたたびドラマが起きる。デイ3のオープニングとなったSS17では、初日のSS1でクラッシュを喫したエサペッカ・ラッピ(トヨタGRヤリス・ラリー1)がベストタイムを刻み、ロバンペラがセカンドベストをマーク。タナクが遅れたことでその差は31.1秒に拡大する。

 タナクは続くSS18で2番手タイムを記録してわずかにギャップを縮めるも、残り2本のSSで28.4秒のギャップはロバンペラにとって“セーフティ・マージン”になるものと思われた。しかし、SS17の再走ステージでふたたび雨雲が襲来。ステージはドライから一転、ウエットコンディションになってしまう。

 この状況がウエットタイヤを2本、ドライ用のソフトタイヤ4本を選択していたタナクを助けた。2019年王者のエストニア人はこのSS19で後続を大きく引き離すタイムでステージウインを果たす。これに対し、同じく2本のウエットタイヤを選んでいたもののドライ用タイヤはハードをチョイスしたロバンペラはステージ8番手タイムに留まる。タイムではライバルから29.8秒の後れを取りタナクに逆転を許した。

■鬼神の走りでターマック初優勝

オット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1) 2022年WRC第3戦クロアチア
クレイグ・ブリーン(フォード・プーマ・ラリー1) 2022年WRC第3戦クロアチア

 トップ2台のタイム差がわずか1.4秒となって迎えた最終SS20、路面コンディションはドライだがコーナー部はインカットにより泥が掻き出されている状況だ。優勝を争う2台ではロバンペラが先にタイム計測へ。

 再逆転優勝を狙うロバンペラはスプリットタイムで全体ベスト、フィニッシュ時点でそれまでのベストタイムを記録していた僚友エバンスより21.9秒速い驚速タイムをマーク。最終走者タナクの到着を待つ。

 首位で最終ステージを迎えたタナクは、最初のスプリットでロバンペラから1秒遅れ、続くスプリットで4秒、最終的には5.7秒遅れてフィニッシュした。このため、ロバンペラがライバルを上回り再逆転で今戦のウイナーに。タナクは4.3秒差の総合2位となった。

 優勝争いの後方では、最終日を前に4.9秒差となったクレイグ・ブリーン(フォード・プーマ・ラリー1)とティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)による3位表彰台争いが繰り広げられ、SS18でステージ優勝を果たしたヌービルが4番手から3番手に浮上。同ステージでブリーンが大きく遅れたことで、両者のタイム差は1分42秒にまで拡がった。

 これにより勝負が決したかに思われたが、最終ステージでヌービルがまさかのクラッシュを喫す。しかし、ベルギー人ペアはその後もスロー走行でなんとかフィニッシュまで辿り着き、ダメージを負ったマシンで文字どおり3位を死守することに成功した。この結果、ヌービルは2戦連続でポディウムを獲得している。

 総合4位となったブリーンの後ろではTGR WRTのエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)が今季初入賞となる完走を果たし、日本人WRCドライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)が総合6位で続いた。総合7位はWRC2優勝を果たしたヨハン・ロッセル(シトロエンC3ラリー2)だ。

 長い春のブレイクを経て、約2カ月ぶりにラリーイベントが行われたWRCの次戦第4戦ポルトガルは、5月19日(木)から22日(日)にかけて開催される。

ティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1) 2022年WRC第3戦クロアチア
エルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第3戦クロアチア
勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第3戦クロアチア
ヨハン・ロッセル(WRC2/シトロエンC3ラリー2) 2022年WRC第3戦クロアチア

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