特定少年 更生へ「功」か「罪」か 18、19歳の実名報道、顔写真解禁 改正少年法 4月1日施行

改正少年法による特定少年の刑事手続きの流れ

 改正少年法が今月1日施行された。これまで少年として扱われていた18、19歳を「特定少年」と区別。少年法の枠内に置いたまま、犯した罪の内容によっては大人と同じ刑事手続きに乗せる。起訴後は氏名や顔写真など本人を特定する報道も解禁された。18、19歳の更生にとって、改正法は「功」か「罪」か-。

◎逆送対象大幅拡大

 少年法は1949(昭和24)年に施行され、神戸の連続児童殺傷事件(97年)まで、大きな改正は一度もなかった。その後、社会を震撼(しんかん)させる少年事件が相次いだため、立て続けに改正。5度目となる今回はそれまでと事情が異なり、選挙権年齢や成人年齢の引き下げと整合性を取るのが目的だ。
 すべての少年事件をまず家裁に送致し、罪を犯した背景、成育環境などを鑑別所などで調査した上で更生への手だてを探る-。改正法でも、この仕組みは従来と変わらない。ただ、検察官送致(逆送)する対象事件は大幅に拡大された。
 現行の殺人、傷害致死など「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」に「刑の下限が1年以上の懲役・禁錮の罪」を追加。強盗罪や強制性交等罪なども対象となり、逆送・起訴されれば、非公開の少年審判でなく、大人と同じ公開の刑事裁判で審理されることになる。
 長崎県警によると、県内の少年による刑法犯件数(2021年)は143件。少子化の影響もあり10年前の957件に比べ大きく減ったが、18、19歳の割合は13%から25%に拡大している。長崎地検管内で逆送は16~20年で51件あったが、「道交法違反で逆送され略式起訴されたケース」なども交じっており、耳目を集めた事件はほとんどない。

◎厳罰化か適正化か

 少年の有期刑の上限は15年だが、特定少年は20歳以上と同じ30年に引き上げられた。刑の執行後、前科による国家資格取得制限も適用。18歳未満に死刑を言い渡すことはできないが、特定少年は事件の内容次第で死刑判決が言い渡されるケースも想定される。「厳罰化」か「適正化」か。立場によって見方は分かれそうだ。

特定少年の厳罰化

 少年法(第61条)は、少年犯罪について犯人が誰か分かるような記事・写真などの報道(推知報道)を禁じていたが、特定少年は除外される。改正後、「実名解禁」の初の事例となったのが甲府市の夫婦殺害事件。殺人罪などで起訴された特定少年(19)について甲府地検は8日実名を公表し、報道機関の多くが氏名などを報じた。
 しかし、いざ逆送・起訴され、刑事裁判手続きに乗ったとしても、裁判所が「(少年法上の)保護処分が相当」と判断すれば、事件が再び家裁に戻されることもある。その場合、既に実名が出ていれば取り返しがつかない。各報道機関の姿勢も問われる。
 少年の更生に多く関わってきた諫早地区保護司会の小野由利子会長は「被害者のことを考えれば実名報道もやむを得ない」と理解を示す一方、「(少年の)立ち直りには仕事に就き、労働の喜びを知ることが欠かせない。実名報道されることで就労への道が閉ざされないか」と危惧する。


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