上野千鶴子による総合的なフェミニズムの入門書『フェミニズムがひらいた道』が発売!

シリーズ累計35万部突破、NHK出版「学びのきほん」の最新刊の一冊は『フェミニズムがひらいた道』。 フェミニズムを常に切り開いてきた第一人者、上野千鶴子氏による、誰もがフェミニズムの歩んできた道のりを知ることができる入門の書だ。本日4月25日より発売開始。 ロシアのウクライナ侵攻が始まって2カ月が経ったいま、ロシア軍兵士によるウクライナ人女性への「性暴力」に関する証言が相次いでいる。女性に性的な暴力をふるうことは、いつの時代でもあってはならないこと。だが、戦時の「性暴力」がそれとして認識されるようになったのは、わずか30年前のことだという。本書の中で、著者の上野千鶴子は、次のように述べている。

それまで戦時性暴力というものは前線の兵士が衝動的に起こす偶発的な逸脱行為だとされていました。それが、黙認され、場合によっては組織的に遂行されることによって、戦争兵器の一部として機能するという認識に変わったのです。

性暴力に対する認識が変わったのが「たった30年前」であるという事実に驚愕するが、「たった30年前」の女性の性差別に関する驚愕はそれだけではない。 たとえば日本では、女性が国際結婚をした際は日本国籍を失っていた。また、日本企業では「女性にお茶くみをさせる」とか「女子社員が持参する弁当をチェックする」といったセクハラがあたりまえに起きていた。セクハラ防止が企業の責任になったのは21世紀になる直前。もっと歴史をさかのぼれば、日本で女性に参政権が認められたのは戦後になってからだ。 女性たちはこうした性差別の一つ一つと常に闘ってきた。女性たちが自律的に、女性の性別役割からの解放をもとめること。これがフェミニズムだと言われている。 本書では、フェミニズムを常に切り開いてきた第一人者・上野千鶴子が、その「うねり」を4つの波に分けてコンパクトに整理している。女性参政権、性別役割の解放、#MeToo……フェミニズムはなぜ生まれ、何を変え、何を変えられなかったのか。『フェミニズムがひらいた道』は、誰もがフェミニズムの歩んできた道のりを知ることができる一冊だ。 「フェミニズム」というと、人によっていろんなイメージを思い浮かべるかもしれない。2019年4月、東京大学の入学式に来賓として祝辞を述べた上野千鶴子は、フェミニズムについて次のように述べている。

フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です。

また本書の中では、このようにも述べている。

人は弱者として生まれ、弱者として死んでいきます。強者である期間は、人生のあいだで一時のことにすぎません。弱者に強者になれと要求したり、強者に抵抗することを要求したりできるでしょうか。それができないからこそ弱者は弱者なのです。だからといって差別されたり抑圧されたりする理由はありません。弱者が弱者のままで尊重されることを求めて当然でしょう。フェミニズムは、同じである権利を求めるものではなく、ちがっていても差別されない権利を求める思想と実践なのです。

人はいつ、どんなときに弱者になるかわからない。しかも、どんな人であってもいつかは弱者になっていく存在。フェミニズムは、女性の差別との闘いの歴史であると同時に、私たちに「ほんとうの平等とは何か」という問いを投げかけてくる。いまこそ、そんな思想の一端に触れていただきたい。

『フェミニズムがひらいた道』構成

◉はじめに 区別が差別に昇格した ◉第1章 ウーマン・リブの産声 ◉第2章 第一波フェミニズムのころ ◉第3章 第二波フェミニズムの到来 ◉第4章 女性学の登場 ◉第5章 第三波フェミニズムと揺り戻し ◉第6章 第四波フェミニズム、 そしてどこへ? ◉フェミニズム人物小事典

上野千鶴子 プロフィール

1948年、富山県生まれ。社会学者、東京大学名誉教授。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。専門学校、短大、大学、大学院、社会人教育などの高等教育機関で、40年間教育と研究に従事。主な著書に『近代家族の成立と終焉』『家父長制と資本主義』(岩波現代文庫)、『おひとりさまの老後』(文春文庫)、『ひとりの午後に』(NHK出版/文春文庫)、『在宅ひとり死のススメ』(文春新書)、『おひとりさまの最期』『女ぎらい』(朝日文庫)、『ケアの社会学』(太田出版)など多数。(プロフィール写真撮影:後藤さくら)

© 有限会社ルーフトップ