漫画家・むらかみさんが期間限定でオープンした、アセクシュアルが集うスペース「ARU」とは?

一年前ほどにアセクシュアル(性的欲求が他者に向かない)で、クワロマンティック(恋愛感情と友情の違いが分からない)を自認した漫画家のむらかみさん。以前まではレズビアンバーやイベントなどに足を運んでいたそうだが、いざアセクシュアルが集う場所を探すと交流できる場所の選択肢の少なさに唖然…。

「もっと気軽に行けて、通える場所があればと思っていたのですが、一年経ってもできなかったので自分でオープンしてみることにしました(笑)」。今回はマスク越しでも伝わってくる優しい笑顔が魅力的なむらかみさんに、アセクシュアルやAスペクトラムの方が集う「ARU アセクシャルスペース」オープンに込めた想いを伺った。

ーー次につながるきっかけを。アセクシュアルの方たちが集う「ARU」で見つける次の自分。

現在のセクシュアリティを自認する前はパンセクシュアル(全性愛)を自認していたので、レズビアンの方たちが集まるようなバーやイベントに出入りをしていました。行こうと思えばバーもあるし、週に数回イベントが開催されるのも当たり前。

ただ二年前ぐらいにアセクシュアルという言葉を知ったときは、気軽に当事者が集えて、通えるような場所がなくて。「交流会」のような形で、ファシリテーターが参加者の話を順々に聞いていくといったものはあったのですが、私の求めていた場所とは違いました。

そういった交流会には数度参加して二人の友人ができましたが、形式ばったものではなくてもっとふらっと足を運べる場所があればなぁと思っていたら、あっと言う間に一年が経ってしまっていて……(笑)。ないなら自分で作ってしまおうと「ARU」を期間限定でオープンすることにしました。

ご来店いただくお客様からのお話としては、勇気を持って自分のセクシュアリティを友人や家族にカミングアウトとしたとしても「何それ?」と、言葉そのものが認知されていないがために、取り合ってもらえないということはよくお聞きしますね。

また、話を聞いてもらえたとしても「悩みすぎてそういう答えにたどり着いちゃったんだね~」など、性的欲求があることを前提に善意で慰められるなんてこともあるみたいで、その度にアセクシュアルというセクシュアリティの認知度がもっと上がればね~なんて話をしています。

「LGBT」という言葉は浸透してきていますが、まだまだ知られていないセクシュアリティの一つなので、徐々に知ってくれる人が増えていったらと思っています。

そういった意味では、NHKで放送されていた「恋せぬふたり」の話でも盛り上がったりもして、第三話あたりまでは過去の嫌な経験を思い出して見るのが辛いとか、親にやんわり勧めてみてジェンダーやセクシュアリティに対する考えを伺う、といった方もいました(笑)。

ちなみに私は最終回まで観れた派で、こういった作品が世に出ると周囲の人にもアセクシュアルというセクシュアリティがあることや、恋愛できないことが勘違いではないことを説明する時にも役立つので傷つく人も少なくなるんじゃないかなと思いました。

このようなお話も含めて「ARU」を訪れたお客様にとって、自分の気持ちを共有する場所であったり、他のお客様と繋がる場所、何より次につながるきっかけを見つける場所になれていたら本望です。ここは5月末までの営業になりますが、誰かが同じようなスペースを開きたいなって思ってくれたら、それが一番嬉しいですね。そのときは今度は私がお客さんとして、こういったスペースを楽しめたらいいなって思ってます。

■ARU アセクシャルスペース
営業時間|毎週金曜日18:00〜22:00
住所|中目黒ふらっと公民館(東京都目黒区上目黒2-24-14)
料金|2500円(事前チケット購入制/ソフトドリンク2杯付き)※詳細はツイッターをご確認ください
※アルコールの提供や持ち込みはできません/フードの提供はありません/ソフトドリンクや軽食・お菓子などの持ち込みは可能/※2022年5月末までの期間限定オープン
Twitter@ARU_acespace

取材・写真/芳賀たかし
記事制作/newTOKYO

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