改正マンション管理適正化法・マンション建替円滑化法が完全施行 管理組合は主体的に適正管理を 所有者責任を考え廃墟化防ぐ努力を 戎正晴弁護士インタビュー②

管理組合は主体的に適正管理を 所有者責任を考え廃墟化防ぐ努力を 戎正晴弁護士インタビュー①より続く

認定制度、組合は管理が適正かチェックを 自治体は状況把握へ活用を

改正法では、推進計画を作成した自治体は管理計画認定制度が実施できるようになるが、これも認定することもできる、というより、管理組合が認定申請するのが当然、と捉える方がむしろ正しい。管理組合が管理計画を作成し認定申請するのは、その管理計画に基づいて適正な管理ができているかを自治体が把握するためでもある。申請された管理計画をもとに自治体は管理状況を把握し、状況に応じた助言や指導、勧告等を行い、マンションの特定空家化を防止していくことができる。改正法は、自治体のための法律とすらいえる。

管理計画認定制度で行う認定の意味は、管理組合が管理計画を作成する過程で自分たちが行っている管理が適正化指針やガイドラインなどとどれだけ乖離しているか、それをチェックすることにある。申請することは、自治体が管理状況を把握できるだけでなく、管理組合自身で適正に管理しているかどうかを認識できる機会になるので、積極的に申請してもらいたい。

自治体からすると、自分たちの区域にマンションがどれだけあり、その管理状況がどうなっているかわからないケースが多く、それを知らなければ適正管理をどう推進していくかも導き出せない。管理組合に認定申請してもらうことで、自治体がマンションの管理状況を把握できる。それが施策を進める上での基礎情報にもなり、助言・指導等のもとになる。管理計画認定制度は、自治体のための制度でもある。

認定により管理状況が不動産市場で評価される効果が期待されるかもしれないが、それは管理状況に関する情報を公表・開示したことによる効果であり、認定の趣旨とは違うものと考えるべきだ。だからこそ、管理計画認定制度は認定基準を満たしたか満たしていないかだけで判断していて、市場での評価は開示された情報をもとに行われる。マンション管理業協会のマンション管理適正評価制度や、日本マンション管理士会連合会のマンション管理適正化診断サービスでは、管理状況をランク分けするなどして認証する仕組みとなっており、認定と認証の違いを理解すべきだ。改正法で自治体と管理組合の責務が強化されている点を踏まえ、管理計画認定制度がどう解釈・運用されなければならないか、自治体も管理組合も理解しなければならない。

今回の改正はマンション管理適正化法とマンション建替円滑化法の一体改正だが、これはそれぞれの法律を単に同時に改正したのではなく、「管理の適正化と再生の円滑化の一体的な対応」に向け一体改正した点を押さえておく必要がある。適正管理も再生も、目的は不良ストックや廃墟を残さないことにある。適正管理ができなくなった時に最後の所有者責任を果たすには、自らの資金でマンションを除却解体することになる。改正マンション建替円滑化法で敷地売却事業が決議・施行可能なマンションや建替え時の特別の容積率割増しが可能なマンションに増やしたのはこのためといえ、長期修繕計画作成ガイドラインの見直しで長期修繕計画に建替え時期の明記を求めたり、修繕積立金を建替えのための調査等に要する費用などに活用することなどが記載されたのも同様の趣旨だ。管理組合としては、この一体的対応を所有者の責任として考えてもらう必要もある。

2022/4/5 月刊マンションタイムズ

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