「対馬博物館」30日開館 国境の島の歴史、文化発信 展示品600点超

江戸時代の朝鮮通信使行列の様子を描いた「朝鮮国信使絵巻」=対馬市厳原町

 対馬の歴史や文化を発信しようと、長崎県と対馬市が整備した「対馬博物館」(同市厳原町)が30日に開館する。現地で26日、報道関係者向けの内覧会があり、江戸時代の外交使節団を描いた「朝鮮国信使絵巻」や、室町時代に造られた日韓混合様式の「梵鐘(ぼんしょう)」(高さ約140センチ)など国重要文化財を含む国境の島ならではの展示品600点超が公開された。
 同館は2棟で構成。「博物館ゾーン」(延べ床面積約4100平方メートル)には、古代から近現代までの歴史を伝える平常展示エリアがある。三根遺跡や金田城跡など島内各地で出土した土器片や、朝鮮国信使絵巻の実物、絵巻の人々が動くアニメーション動画、日本と朝鮮半島のデザインが混ざり合った梵鐘などを展示。数カ月おきに入れ替える。

取り付け部分の竜頭(りゅうず)は双頭の竜があしらわれた日本式、胴体は朝鮮半島式の竜や天人がデザインされた日韓混合様式の「梵鐘(ぼんしょう)」など、対馬ならではの貴重な文化財が公開された=対馬市厳原町

 特別展示室では年に数回、企画展を開催。対馬藩主宗家が残した「対馬宗家文書」などの史料約11万2千点を収める収蔵庫も整備した。貴重な文化財を保管・研究する役割も担う。
 「交流ゾーン」(同約840平方メートル)には、グッズなどを販売するショップのほか、市民が利用できるギャラリー、体験学習室、講座室、図書コーナーなどを設けた。町田一仁館長は「来館した市民に対馬の歴史を改めて知ってもらい、誇りを持ってほしい。観光客には対馬の情報を発信し、島全体への周遊を促す拠点としたい」と述べた。
 同館は2017年度、旧県立対馬歴史民俗資料館前の駐車場で着工。総事業費は40億5800万円。


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