2021年10月にオープンして以来、地元客を中心に人気を集めている「中華小皿 うーろん」。
中華料理と聞くと、「大皿一品料理」「がっつり食事をしに行く」といったイメージをもつかもしれませんが、「中華小皿 うーろん」ではその名のとおり、本格中華を小皿で楽しむことができます。
この記事では、尾道・新開(しんがい)エリアにオープンした「中華小皿 うーろん」店主・新谷直樹(しんたに なおき)さんに話を聞き、その人気や魅力に迫ります。
「いろいろな中華料理を食べたい…」そんな希望を叶えてくれるコンパクトな中華料理屋
尾道の「新開(しんがい)エリア」といえば、ちょっとディープな飲み屋街。
「中華小皿 うーろん(以下、うーろん)」は、そんな新開の入り口エリアにあります。
目印はかわいらしいキャラクターの袖看板。
こちらのキャラクターは、新谷さんの奥さんが描かれたもので、モデルは娘さんなのだとか。
カウンター8席のコンパクトな作りですが、これは「お客さんの顔が見える店にしたい」という新谷さんのこだわり。
食べながら、飲みながら、店主とのおしゃべりも楽しんでください。
中華料理好きの「食べたい」を満たしてくれる昼・夜メニュー
うーろんはランチ営業とディナー営業でメニューが分かれています。
上の写真は夜メニューです。看板のキャラクター同様、こちらも新谷さんの奥さんが描かれたそうですよ。
▼ドリンクメニューも豊富です。
中国酒だけでなく日本酒やワイン、ノンアルコールビールもあるので、シーンや好みに合わせて楽しむことができますね。
ランチメニュー
ランチには基本の麻婆豆腐、豆乳担々麺セットのほか、週替わりのセットがあります。
ランチメニュー(午前11時30分~午後1時30分)
- 麻婆豆腐セット 800円(税込)
- 豆乳担々麺セット 800円(税込)
- 週替わりセット 900円(税込)
とくに豆乳担々麺が人気なのだとか。
取材時にお話した常連客によると「豆乳もラー油も主張しすぎない塩梅(あんばい)」「ほかにはない奥深い味わい」なのだそうです。
週替わりメニューは、うーろんのInstagramでわかるので要チェック!
ここからは取材時に注文した夜メニューを紹介します。
前菜の盛り合わせ
季節の食材を贅沢(ぜいたく)に使った前菜の盛り合わせ。
取材時の盛り合わせ内容
- よだれ鶏
- サーモンのねぎソース
- きゅうりの甘酢
- ホタルイカの中華風佃煮(つくだに)
- ピータンといちごの甘酢
「通常メニューに少ない、さっぱりした味わいの前菜をそろえました」と新谷さん。
メインの麻婆豆腐や餃子と合わせて食べたいメニューです。
麻婆豆腐
店主おすすめ!「うーろんといえばコレ」と言っても過言ではない代表メニュー、麻婆豆腐です。
こだわりの豆板醤を6種類使っているうーろんの麻婆豆腐は、ちゃんとシビ辛。深みのある味わいがたまりません。
新谷さんが追究を重ねて辿り着いた味をぜひ堪能してください!
焼き餃子
手作りの皮がモチモチ・プリプリな焼き餃子は麻婆豆腐と同様、うーろんの看板メニュー。
肉汁があふれるようにバランス良く配合されたひき肉が使われているので、口に入れた途端ひき肉の旨みと香味が口いっぱいに広がります。
ネギの風味と香りをたっぷり移したネギ油を使って香ばしく焼き上げられた餃子は、にんにく不使用。
にんにくなしでもなぜこんなに風味があっておいしいのか理由を尋ねてみると、ポイントは大きくカットしたニラとネギ油なのだとか。
餃子は、新庄みそを使った店主特製のみそダレとポン酢と一緒に提供されます(取材時は「わけぎ」が旬だったこともあり、わけぎポン酢でした)。
筆者はいつも酢醤油で餃子を食べていましたが、みそダレのおいしさに感動!
やみつきになるおいしさのループをぜひ体験してください。
白酒ハイボール
中国の蒸留酒である白酒(パイチュー)。
とうもろこしといった穀物が使われ、すっきりとしたのどごしが特徴で、「紹興酒は強くてちょっと苦手……」というかたでも飲みやすいお酒です。
何を飲んだらいいだろう?と迷ったら、ぜひ新谷さんに尋ねてみて。
紹興酒をはじめ日本酒に至るまで、店主おすすめのお酒や飲み方を教えてもらえますよ。
「本日のオススメ」も要チェック
メインのメニューだけでなく「本日のオススメ」も外せません。
そのときどきの旬の食材を使って新谷さんが作る中華小皿。
バリエーションも豊かなので、その日の気分で注文したいですね。
▼この日は撮影用に「うーろんのしろ天」を提供してもらいました。
しろ天とは牛ホルモンの上ミノという部位の天ぷらで、山椒塩と一緒にいただきます。
メインメニューとは違ったおいしさを堪能できるので、友人と行ってシェアするのもおすすめです!
神戸からの移住を果たしファンを増やし続けている「中華小皿 うーろん」の店主・新谷直樹さんに話しを聞きました。
「中華小皿 うーろん」の新谷直樹さんにインタビュー
独立のきっかけは、納得のいく麻婆豆腐が完成したから
──「中華小皿 うーろん(以下うーろん)」、2021年10月のオープンからわずか半年でかなりの人気店ですね!何か工夫されたことはありますか?
新谷(敬称略)──
ありがとうございます。確かに開店前に設定した売上目標を上回る毎日で、来ていただくお客さんには日々感謝しています。
工夫というほどではないんですが、開店前の2021年8月から毎日Instagramを更新して、開店準備の状況なんかも投稿していました。
そんなようすを見ていたお客さんが開店後に来てくださって、徐々にリピーターが増えていったように感じます。
新谷──
また尾道で店を出すことになったきっかけに、家族ぐるみで付き合いのあるご夫妻の存在があります。
このご夫妻は2人とも尾道に店を出していて、ご主人が1po hair salon(イッポヘアーサロン)という美容室、奥さんがCHIRPという帽子店を営んでいます。
1poさんとCHIRPさんがそれぞれのお客さんにうーろんを勧めてくださったことで、地元のお客さんとつながることができました。
──尾道でお店を始めることにしたきっかけにそんなエピソードがあったんですね。では、独立しようと思ったきっかけはありましたか?
新谷──
自信を持っておいしい!と思える麻婆豆腐の試作品が完成したからです。
料理を始めたときから「30歳までには自分の店を持ちたい」と考えていたので、独立については10代のころから常に考えていました。
麻婆豆腐はひとつの目標で、これが完成したら店を出そうと思っていました。
──うーろんさんの麻婆豆腐はシビ辛のバランスが絶品で、私の周りにもファンが多いです。新谷さんが料理を始めるきっかけやこれまでについて教えてください。
新谷──
僕は広島市の五日市出身です。
もともと食べることが大好きだったこともあり、高校卒業後に1年制の調理師専門学校に通い、卒業後は宇品のホテルや地元の中華料理店で働きました。
中華料理店は高校生の頃からアルバイトでお世話になっていた店なんですが、この店のマスターの背中を見て中華料理の道に進むことになったくらい、ここではゼロからさまざまなことを学びましたね。
──うーろんが誕生したのも、この経験があったからなのですね。
新谷──
そうなんです。マスターの奥さんも第2の母のような人で、お2人には家族のようにかわいがってもらいました。
マスターはいわば「中華の師匠」。とはいえ、手取り足取り料理を教えてもらったわけではありません。
むしろ絶対に口では説明してくれないような寡黙(かもく)な人だったので、料理の仕方や使っている食材は目で見て学びました。
マスターの麻婆豆腐の味に近づけたくて、ときにはゴミ箱をひっくり返して食材を研究することもありましたね。
新谷──
そんななか、もっと大きな都市で経験を積むために単身神戸へ行くことに。
うーろんを開店する直前まで、神戸の大きなレストランで働くかたわら、仕事後に立ち呑み屋でほぼ毎日アルバイトをしていました。
レストランもかなり忙しく、睡眠時間がなかなか確保できないくらい働いていましたね。
──忙しい仕事のかたわらでアルバイトですか……!
新谷──
でもアルバイト先の立ち呑み屋は大好きな店で、ここのご主人は僕にとって「神戸の師匠」です。
この立ち飲み屋では和食と接客、酒の基本を学びましたし、常連客だった奥さんとの出会いもありました。
新谷──
神戸で忙しく働くあいだにもいつか自分の店で出すために料理の研究は続けていて。
麻婆豆腐をはじめ、餃子、担々麺の試作品が完成したことで、独立することを決意しました。
店舗物件を探しに、導かれるように尾道へ
──満を持してメインメニューの味が決まったんですね。
新谷──
そうなんです。すぐに店舗の物件を探し始めました。
先ほどお話した1po hair salonとCHIRPのご夫妻に「尾道はどう?」とお誘いいただき、2021年3月に初めて尾道へ。
初尾道時は良い物件と出会えませんでしたが、翌月1人ふらっと日帰りで再訪したところたまたまこの物件の張り紙を見つけて。
すぐに大家さんに問い合わせて物件を見せてもらい、その場ですぐに「ここにします」と伝えました。
広さも立地もイメージ通りでした。
──2回目に訪れた尾道で、まるで導かれるように物事が進んだんですね。
新谷──
そうなんです。
会社は2021年7月いっぱいまで続けて、8月中旬に奥さんと娘の3人で尾道へ移住してきました。
引っ越しの次の日から店舗の工事に入り、それから急ピッチで開店準備を進めたんです。
──そして2021年10月にオープンですね。うーろんさん、入り口の扉がとてもかわいいです。
新谷──
ありがとうございます!
扉は高校の友人の縁で、雑貨や家具を作っているかたがいて作ってもらいました。
お客さんにもよく「かわいい」と言ってもらえます。
──移住や独立と、ライフイベントとなるような大きな出来事がかなりトントンと進んだ印象ですが、ご家族の反応はいかがでしたか?
新谷──
奥さんと付き合う前から「いつか店を出したい」という想いは伝えていたので、驚かれはしなかったと思います。
ただ、コロナ禍という状況もあって時期やタイミングについては心配をかけてしまいました。
──度重なる自粛要請などで、飲食店は大きな影響を受けています。
新谷──
本当にそうなんですよね。
でも、僕は性格的に真っ直ぐ進んでいってしまう。
さっき「導かれるように」と言ってくださいましたが、自分が「良い」と思った方向に進んで、これまで後悔したことがあまりないんです。
大事な決断を迫られる場面でも自信を持って進んでいけるのは、自分の長所だと思っています。
──移住してみて、尾道はいかがですか?
新谷──
よく「水が合う」という表現がありますがまさにそうで、尾道の空気感は自分にとても合っていると感じます。
どこかのんびりしていて、時間の流れも都会よりゆっくりなところも気に入っています。
奥さんは姫路出身なんですが、映画好きが高じて尾道には昔からよく遊びに来ていたそうなので、実は僕より詳しかったりします。
また、彼女はパティシエールの経験があって。ぜひ尾道でカフェをやってほしいと思っているんですよ。
──そうなんですか!それは楽しみです。
新谷──
というわけで、2022年4月中旬からはうーろんのデザートを奥さんが担当することになります。
ジャスミン茶のレアチーズケーキや、夏には杏仁豆腐風のパンナコッタ、シフォンケーキなども考えています。
楽しみにしていてくださいね。
2人の師匠への尊敬と感謝を込めて名付けた店名「うーろん」
──店名の由来やコンセプトについて教えてください。
新谷──
先ほど「中華の師匠」と「神戸の師匠」のエピソードをお話しましたが、実はこの2人の師匠にちなんで「うーろん」になりました。
中華料理を連想しやすいようにという想いはもちろんありますが、「うーろん」には2人の師匠のリスペクトが込められています。
新谷──
やるからには出し惜しみをしたくない。
とにかくお客さんにおいしいものを食べてほしい。
うーろんは「週1で来たくなるような店」を目指しているんです。
究極、その人の一番の店じゃなくてもいいと思っていて。
「うーろんに行けばうまいものが食える」と思ってもらえる、アテにされるような店でありたいです。
──やりがいを感じるのはどんな瞬間ですか?
新谷──
リピーターの存在です。
2回、3回と何度も来店してくださったときに「やった!」と心の中でガッツポーズしています。
また、ありきたりですが「おいしい」の一言をいただけるとやっていて良かったと思いますね。
──この先、どんなお店にしていきたいですか?
新谷──
飲食業界は逆風も強いので「まずは10年」とは言っていますが、うーろんは僕が死ぬまで続けたいと思っています。
またもう少し先のことになりますが、この店を本店として違う業態の飲食店にも拡大していきたい。
目指すは、こだわりの酒を並べて串カツを出すような立ち呑み屋!
地元の人しかこないような、ちょっとディープでアットホームな店に憧れているんです。
いつか実現させるために、今後も地盤を固めていきたいと思います。
おわりに
休日の過ごし方について聞いたところ、「食べるのが大好きなので、だいたいずっと食べています」と新谷さん。
同業他店の研究かと思いきや、“ファストフードが大好き”というおちゃめな一面も見せてくれました。
ランチでも夜のちょい飲みでも楽しめる「中華小皿 うーろん」。
新谷さんのこだわりが詰まった中華料理を食べに、ぜひ足を運んでみてください。