困っている家庭の一助になりたい─。その一心で子どもたちに無料で夕食を振る舞う居酒屋が、横浜市港北区にある。新型コロナウイルス禍で本業が苦戦する中、取り組みを開始して半年余り。共感の輪を広げながら、徐々に利用者を増やしている。
市営地下鉄新羽駅前の「味(み)くり家(や)」は昨年9月、子ども食堂の運営を本格的に開始した。定休日を除く毎日午後4時~5時半、店舗を訪れた中学生以下の生徒や児童に無料で夕食を用意。おかわり自由の白米とみそ汁に、揚げ物や野菜などのおかずを添えた定食を提供している。
食材費の一部には寄付金を充てている。全国で展開されている「夢食堂」と題したプロジェクトに参画し、飲食客らに1枚200円の「夢チケット」を販売。店頭のボードに貼り出している。子どもはチケットを剝がして店員に渡すだけで、1食分を受け取れる仕組みだ。
取り組みは共感を呼んでいる。「居酒屋のお客さまに加え、通りがかりに寄付金を置いていく方が少なくない」と横溝博店長(52)。年金の支給日に立ち寄り、現金を渡してくれる高齢者もいるという。地元の農家からは、事あるごとに採れたての野菜が届く。
口コミの広がりもあって、直近は連日数組の親子が訪れるようになったが、横溝店長は「経済的に困っている子どもたちは大勢いる。支援がより幅広く届くように、できることは何でもやりたい」と力を込める。