平和条約70年

 作家、半藤一利さんの講演を文字でまとめた「昭和史 戦後篇(へん)」(平凡社)では、1952(昭和27)年ごろの日本の姿がこう語られている。〈「通商国家」として国際復帰した戦後日本ですが…基地問題、沖縄問題を曖昧なままずーっと引っ張って、えっちらおっちら交渉を続けていかねばならない〉、そんな時代だった、と▲半藤さんは、その当時、蔵相の秘書官だった宮沢喜一さんの回想も引いている。独立した日本に米国の軍隊を駐留させることは、認められるだろうか。〈大多数の国民が納得するような方式は容易に見出(みいだ)しえなかった〉▲つまり、独立国家の船出は心もとないものだった…と、半藤さんも宮沢さんも述べている。日本が主権を回復した52年のサンフランシスコ平和条約が発効して、28日で70年たった▲「主権回復」の一方で、これを境に沖縄は日本から切り離され、米軍に長いこと統治された。28日を沖縄では「屈辱の日」と呼ぶ▲全国の米軍施設の70%ほどが今も沖縄に集まっている。〈曖昧なままずーっと引っ張って〉きた問題の、始まりの日であることも忘れまい▲きょうは遠い激動の時代を思う「昭和の日」。終戦の日、原爆の日のように、目を閉じて思いをはせる昭和がある。じっと目を凝らさないと、ぼやけていく昭和もある。(徹)

 


© 株式会社長崎新聞社