神尾楓珠「役者業との向き合い方が変わった」

4月28日、映画『20歳のソウル』の完成披露試写会が都内で開催され、上映前の舞台挨拶に神尾楓珠、福本莉子、佐野晶哉(A ぇ! group/関西ジャニーズ Jr.)、佐藤浩市、秋山純監督がそろって登壇。約 8 万通もの応募の中から当選した観客を前に映画に込めた思いを語った。

舞台挨拶では、映画にも出演した市船高校の吹奏楽部による生演奏がステージ上で行なわれる予定だったが、新型コロナウイルスへの感染対策のため直接の来場はかなわず、代わりに同校からの生中継で、部員124名による演奏が披露された。映画の完成披露で高校吹奏楽部の演奏が会場に生中継されるのは今回が初めての試み。

まずは、主人公のモデルとなった故・浅野大義さんが手がけ、同校に受け継がれている応援曲「市船 soul」が演奏され、さらに、同校が吹奏楽と演劇を組み合わせて独自に作り上げた総合芸術パフォーマンス「吹劇」による「桃太郎特別版」が披露された。

吹奏楽部の顧問である高橋健一先生は「奇しくも5年前の4月28日は、私がこの映画の原作と脚本を手がけた中井(由梨子)さんと市船高校で出会った日です。先ほど、秋山監督に教えていただいてびっくりしました。しかも、出会った時間は(この日の映画の上映開始予定時刻である)19時ということで、大義らしいイタズラなのか、ユーモアなのか? 偶然と思えないものを感じています」と感慨深げに語った。

吹劇に続き、再び吹奏楽部による「市船 soul」の演奏が始まり、この生演奏と会場の観客の手拍子をBGMに神尾らキャスト、スタッフ陣が舞台上に登壇!

主演を務めた神尾は「僕は、実在の方を演じるのが初めてで、いままで演じてきた役とは勝手が違う部分もあり、最初は戸惑いましたし、撮影を終えて、(映画を通して)やはり人ひとりの人生を生きるって大変なことだなと感じました。役者という仕事は、ひとりの人間の人生を生きることですが、そこへの向き合い方が、この映画で浅野大義くんを演じて変わったなと感じています」と仕事への姿勢に大きな影響を受けた大切な作品になったとふり返った。

福本は、大義の恋人・宮田夏月を演じたが、モデルになった女性が実在し「今日も会場にいらっしゃっているということで、より緊張するんですけど…」と笑いつつ「撮影前に実際にお会いしたら、柔らかい雰囲気の可愛らしい方で、そのイメージを壊さずに、神尾さんが演じた大義くんを支えられたらと思って演じました」と語った。

佐野は、大義の親友・佐伯斗真を演じたが「斗真は市船を象徴するような役」と語り、さらに「僕も実際に中学の時、吹奏楽部でサックスを吹いていました。別の教室で遊んでて『合奏始まってんで!』と友達が呼びに来たり、合奏をサボって先生に怒られたり、僕が送っていた中学時代をもう一度、取り戻させてもらって、楽しませてもらいました」と笑顔で撮影を振り返る。

佐藤は、部の顧問・高橋先生を演じたが「実在の人を演じることはよくありますが、市船高校をロケ場所に使わせていただいて、ほぼ毎日、現場に高橋先生がいらして、実際の人を目の前に芝居をするというのは、なんと面映ゆいというか、不思議な感覚でした。年齢も近いので、撮影の合間に話しながら撮影ができて、貴重な体験でした」と撮影を述懐した。

そして秋山監督は「大義くん、すごい俳優が参加して、そして君の後輩たちが魂のこもった演奏をしてくれて、すごい映画が完成しました。大義くん、おめでとう!」と天国の浅野さんに向けて言葉を掛ける。そして観客に「この映画は、決して悲しい映画じゃないです。浅野大義くんという一人の人間が、20 年という短い時間でしたが、力の限り生き切った希望の物語です。大義くんが生きた証は、今日、こうしてスクリーンで見ていただいたひとりひとりのみなさんの心の中に残ればいいなと思います」と呼びかけた。

神尾は、本作でトロンボーンに挑戦したが「本当に組み立て方も扱い方もわからないところからで、不安でした…」と述懐。だが現場では、吹奏楽部のメンバーにも支えられて「分からないことがあって聞いたら、すぐにみなさん、教えてくださって、とても温かかったです」と感謝。やはり楽器の演奏は奥が深いようで、撮影開始前から2~3 か月にわたり練習を重ねて挑んだが「面白さを感じたか?」という問いには「まだ『面白い』まではいかないです。『難しい』しかないです(苦笑)」と本音を口にしていた。

一方、サックス経験者の佐野だが、本作で担当したのはピアノとスネアで「サックスだったら楽々吹けたのに、なぜか監督が、僕がピアノを弾けると思ってて…。実際は高校でちょっと習ってたくらいで…」と苦笑を浮かべる。劇中で、浅野さんが作曲した曲「Jasmine」を佐野演じる斗真が演奏するシーンがあり、佐野は「ぶっつけ本番で、震えるような緊張感のある撮影を無理やり楽しみました」と述懐。神尾は、そんな佐野の演奏について「メッチャ弾けてた!晶哉のBGMで感情が入った!」と絶賛。佐野も神尾の言葉に「僕も楓珠のセリフがあって感情が入りました」と照れくさそうに笑みを浮かべていた。

福本は、楽器を演奏するシーンはなかったが「(楽器を)背負ってはいました!」と笑い「(演奏に向けて)やる気は満々だったんだけど…(笑)。みなさん、楽しそうで羨ましかったです」とちょっぴり残念そう。実際、演奏シーンなどで市船吹奏楽部員が撮影に参加しているが、佐野は「ほぼ毎日、顔を合わせていたし、最終日に部員の子が斗真のキーホルダーをプレゼントしてくれて、いまも大切にしています!」と現場でも交流があったと明かす。

佐藤は、本物の吹奏楽部のメンバーが参加したことについて「ご覧になればわかりますが、どこまでが出役(本物の俳優)で、どこからが普通の高校生か、線引きできない――それくらいのエモーションを持ってみなさん、参加してくれました。2年前の撮影ですが、定期演奏会などがなくなってしまったコロナ禍の後に参加してくれた彼らの思いが映画に映っていると思います」と言葉に力を込める。

秋山監督は佐藤の言葉に深くうなずきながら「とにかく、大義先輩のこととなると、(部員たちは)みんな、目の色が変わるんです。本当に尊敬してる伝説の男であり、みなさんの魂がこもっていました。最初、神尾くんが大義くんの役をやるとなった時は『あ、そうなんだ』という感じで見てたかもしれないけど、撮影の日々を重ねるごとに『すごい!』となって、『僕らも俳優部に負けちゃいけない。失礼があっちゃいけない』という部活ノートが回ってました。みんな本気で、テストなしで一発本番に臨むような気持ちで向かってくれました」と改めて撮影に協力した吹奏楽部への感謝と尊敬の念を口にしていた。

最後に神尾は「この映画は、市船吹奏楽部のみなさんの青春と絆、そして家族の愛情――そういうものがたくさん詰まってる映画です。大義くんが最後まで生き切る姿を見届けていただけたらと思います」と呼びかけ、温かい拍手の中、舞台挨拶は幕を閉じた。

【ストーリー】
浅野大義(神尾楓珠)は市立船橋高校吹奏楽部に所属する男の子。担当はトロンボーン。活発で優しく、そして真っすぐな大義は、いつも周囲を明るく照らし、そして大義自身も部員たちに支えられ、青春を謳歌していた。なにより特別な存在である顧問・高橋健一先生(佐藤浩市)に大きな影響を受け、心身共に成長していった。大義は、市船・野球部のために、オリジナル応援曲の作曲に挑戦。作曲の難しさに葛藤しながらも高橋先生からの叱咤激励や親友・佐伯斗真(佐野晶哉<Aぇ! group/関西ジャニーズJr.>)の助け、母・桂子(尾野真千子)の応援もあり「市船soul」が誕生する。そして、いざ試合で演奏されるとたちまち得点を呼ぶ〝神応援曲″と呼ばれる様になる。高校を卒業した大義は、高橋先生の様な教師を志し音楽大学へ進学、夢に向かってキャンパスライフを過ごしていた。そんなある日、大義の身体を異変が襲う。診察の結果、大義の身体は癌に侵されていた——。

出演:神尾楓珠
尾野真千子 福本莉子 佐野晶哉(A ぇ! group/関西ジャニーズ Jr.)
前田航基 若林時英 佐藤美咲 宮部のぞみ 松大航也
塙宣之(ナイツ) 菅原永二 池田朱那 石崎なつみ
平泉成 石黒賢(友情出演)/高橋克典
佐藤浩市
原作:中井由梨子
「20 歳のソウル 奇跡の告別式、一日だけのブラスバンド」(小学館 刊)
「20 歳のソウル」(幻冬舎文庫)
企画・監督:秋山 純 脚本:中井由梨子
主題歌:「Jasmine」 Kenta Dedachi(EPIC レコードジャパン)
配給:日活 ©2022「20 歳のソウル」製作委員会
公式サイト:20soul-movie.jp 映画公式 Twitter:20soul_movie

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