明暗分かれた「GAFAM」の決算発表を解説、金利上昇局面はIT大手にどう影響したのか

4月28日に日銀金融政策決定会合があり、その結果を受けてドル円は20年ぶりに130円の大台をつけました。同じ週、IT企業の雄である「GAFAM」の決算発表がありましたね。

GAFAMとはGoogle、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftの頭文字を取った呼び名で、世界市場で圧倒的な存在感を放つ大型IT銘柄です。4月26日にMicrosoftとAlphabet、同27日はMeta、同28日にAppleとAmazonが決算発表を行いました。

今回は、GAFAM各社の決算を紐解いていきます。


GAFAMも金利上昇局面は弱い?

GAFAMのサービスは、皆さんよく利用されているのではないでしょうか? 私もApple社製のiPhoneを使ってGoogleで検索し、Amazonで買い物もしています。そしてWordでこの文章を書いて、配信されたらFacebookでもシェアします。振り返ると日々GAFAMのサービスの恩恵を受けているなと感じています。

そんなGAFAMですが、2020年に5銘柄の時価総額の合計が日本の東証1部の合計額を上回ったと報じられたことで記憶に新しいところです。コロナ禍でも巣ごもり消費やリモートワークなどのDX推進を追い風に米市場をけん引してきたGAFAMですが、年明け後に調整色を強めているのです。

その背景には、米政策金利の早期利上げ見通しがあります。本格的な金融引き締め開始が目前に迫ってきており、足元ではFRBが5月3-4日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げをする見通しであり、保有資産の縮小(QE)も開始が決定されることが折り込まれています。追加利上げが0.5%となれば、そのペースは2000年5月以来となります。

金利が早く引き上げられてしまうと、その打撃を受けやすいと言われる高PER銘柄、ハイテク株に代表されるグロース株は一般的に下落しやすいと言われます。

ナスダック総合株価指数は4月18日週の1週間で4%安となり、同25日週も26日火曜日に4%下落し、年初来安値を更新すると水曜日も連日で安値を更新しました。ただ好決算を手がかりに28日には反発しています。

GAFAMの決算をまとめると…

GAFAMの決算を個別に紐解いていきましょう。

アルファベット【GOOG】

世界最大の検索サービス「Google」を運営している企業で、アルファベットの企業名で上場しています。検索以外にも様々なサービスを提供しています。地図サービス「Google マップ」、動画共有サービス「YouTube」、メールサービス「Gmail」、Webブラウザ「Google Chrome」、スマートフォン用のOSの「Android」、そしてAndroid端末向けのコンテンツ配信サービス「Google Play」と、企業のDX化が加速する中で圧倒的認知度の高さとシェアの多さ、クラウドサービスの多彩さが強みといえます。

4月26日に発表された2022年1〜3月期決算は売上高が市場予想を下回る結果となりました。売上高が前年同期比23%増の680億1100万ドル、純利益は8%減の164億3600万ドルでした。

主力のインターネット広告事業は小幅にですが予想を上振れましたが、クラウド事業の売上高の伸びは前年同期と比べて鈍化しており、株式投資関連の損益も気になるところでしょうか。インフレ高進や地政学リスクの影響、サプライチェーンの問題なども影響しているようです。

アマゾン・ドット・コム【AMZN】

アマゾンは1995年に書籍販売サイトとして誕生した企業で、eコマースにおける世界的なリーディングカンパニーです。「地球上で最も豊富な品揃え」、そして「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」という企業ビジョンを掲げており、物流など自社ですべてまかなうことができることが強み。

パンデミックでもさらなる成長を遂げたアマゾンは、利益のほとんどを将来の投資に回すことでも有名な企業ですが、購入履歴などユーザーから収集する膨大なデータは同社の財産で、「Amazon プライム」という継続的な利益を上げるストック型ビジネスも展開していることも強みと言えます。

4月28日発表の第1四半期決算は、純損益が38億4400万ドルの赤字と、15年1-3月期以来となる7年ぶりの赤字転落でした。倉庫の運営費や配送費のコスト増のほか、電動自動車(EV)メーカーの「リビアン・オートモーティブ」への投資が要因となっているようです。

メタ・プラットフォームズ【FB】

メタは旧フェイスブックですが、2004年に創業された企業で、FacebookのほかInstagramやWhatsAppなどを運営するデジタル・ソーシャルメディア大手です。売上高の内訳はFacebook内の広告がほぼ占めています。SNS(会員制交流サイト)はサービス維持コストに対し、高い営業利益率であること、アメリカだけではなく新興国も含む世界中で使われているのも大きな特徴で強みです。2021年10月にメタバース事業を柱にするべく、社名をメタプラットフォームズに変更しています。

4月27日に発表した2022年1〜3月期決算は、売上高が前年同期比7%増の279億800万ドルと市場予想を下振れ、米メディアでは上場以来最も低い伸びであると指摘されています。純利益は同21%減の74億6500万ドルと2四半期連続の減益、一方でEPS(1株当たり純利益)は2.72ドルと予想を上振れしています。

プライバシー保護規制の強化が主力のインターネット広告事業への逆風となっている模様です。好材料はSNSの利用者が再び増加に転じたこと。Facebookの1日当たりアクティブユーザーは19億6000万人と伸長しており、アナリスト予想をやや上回ったというのは良いニュースといえます。

決算を好感して時間外取引で株価が18%あまり上昇、翌営業日も株価は前日比17.6%高と急伸しています。

アップル【APPL】

スマートフォンの「iPhone」、タブレット型情報端末の「iPad」、パーソナルコンピュータの「Mac」、携帯音楽プレーヤーの「iPod」、ウェアラブル端末の「Apple Watch」などの開発と販売をする会社です。技術力だけではなく圧倒的なブランド力も強みで、iPhoneのリピーターが多いほか、iTunes StoreとApp Storeの売上高や、Apple CareやApple Payのライセンス料金も伸長。またApple Storeはコンピュータストアの概念を変えたと言われており、サードパーティー製アクセサリーの売上にもつながっていて競争力の強さに繋がっています。

4月28日発表の第2四半期決算では、iPhoneの販売が堅調だったことなどから売上高は前年同期比8.6%増の973億ドルと過去最高に。EPSも1.52ドルと、ともに市場予想を上振れる良い決算だったといえます。

またAppleは5%の増配を発表したほか、900億ドルの自社株買いも発表。自社の株式を取得することで純資産が減少し、財務レバレッジも期待感がある、つまり収益性の判断指標のひとつである「自己資本に対しての利益率」(ROE)が上がるため、投資家に好感が持たれています。

マイクロソフト【MSFT】

1975年に「ビル・ゲイツ」によって創業されたソフトウェアの巨大IT系企業で、1986年にNASDAQに上場していた老舗のハイテクといえる企業です。OSの「Windows」やワード・エクセルなどの「Microsoft Office」シリーズ、家庭用ゲーム機「Xbox」などで知名度が高く、クラウドサービスの「Azure」やデバイス・プラットフォーム事業も展開しています。

4月26日に発表した第3四半期決算は、売上高は前年同期比18%増の493億6000万ドル、EPSは2.22ドルとともに予想を上振れとなりました。今回の決算ではAzureクラウドビジネスが好調であることが見て取れるほか、ビジネス特化型SNS「LinkedIn」も好調のようです。

コロナ禍でいっきに浸透したハイブリッド勤務など各企業や各産業でDX化が継続するなかで、BtoBビジネスは底堅いといえそうです。

今週の日経平均の値動き

4月22日(金)の日経平均株価は2万7105円26銭でした。同28日(金)の終値2万6847円90銭、今週は29日は祝日でしたので、週間では257円36銭の下落となります。

中国でコロナ感染者拡大が止まらず、上海市だけでなく北京市にもロックダウン懸念が出ているほか、FRBの早期金融引き締めも引き続き相場の重しとなっています。

4月28日の日銀金融政策決定会合では、金融政策は予想通りに現状維持となりましたね。指値オペが連日で実施される方針(明確化)とも伝わっており、日銀のハト派の姿勢から20年ぶりに為替市場でドル円は130 円台の大台に突入しています。


5月2日週は、5月3-4日に開催されるFOMCや、週末6日の雇用統計など相場が大きく動きそうなイベントがあります。連休の方も多いと思いますが、ゴールデンウィーク中の値動き、ポジションにはくれぐれもご注意ください。

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