FXと他の投資との代表的な5つの「違い」とは

私は、1998年のFX(外国為替証拠金取引)スタートから間もなく、為替専門家として個人投資家へレポートやセミナーで情報発信してきました。さらに、2011年には、大手FX会社の投資教育プロジェクトの責任者に就任し、お客様がどうしたらFXで資産を増やせるかを考えてきました。

「円資産だけ保有するリスク」への懸念が着実に高まっている可能性のある時代において、本連載を通じ長年の経験の中で見てきたFXでの「失敗例」とその理由について、わかりやすくお伝えすることでFXも資産防衛の有効手段になれることを確認したいと思います。これは、私にとっての「FXへの恩返し」でもあります。

改めて今回はほかの投資、とくに株式投資とFXの違い、ある意味では「魅力」とも言える点について確認してみたいと思います。


株式投資とFXの比較図

マネックス証券の取引ルールを元に、株式投資とFXとの代表的な5つの違いについて見ていきましょう。

【図表】

違い1 投資対象

まず「違い」のその1は、投資対象です。たとえば、日本株投資における個別銘柄は約4000あります。これに対して、マネックス証券のFXPLUSで扱っている通貨ペアは16(2022年3月末現在)ですから、圧倒的に少ないですね。もちろん、FX会社によってはもっと多くの通貨ペアを取り扱っているケースはありますが、それでもせいぜい「数十」という単位です。

投資対象が少ないことは、人によってとらえ方が違うでしょう。初心者やなかなか手が出せない・何から始めていいかわからないといった方にとっては、投資対象を選ぶのに迷うことがなさそうとメリットを感じるかもしれません。ただ実際に取引を始めてみると、意外にそうでもなく、結構迷うことはあるようですが、それについては後で述べてみたいと思います。

違い2 取引時間

「違い」その2は、取引時間です。原則的に日本の株式投資の場合は、9時から15時まで、そして昼休み休憩もあるといった具合に取引時間が決まっています。一方、FXは24時間取引が可能です。これは、日本の通貨である円だけではなく、世界中の通貨が取引されているからであって、もちろん日本の祝日も取引は行われます。

この「24時間いつでも取引可能」ということは、FXの大きな特徴の一つですが、別の見方をすれば、自分の取引が24時間ずっとリスクも抱えているということでもあります。人間は寝ないではいられないので、1日24時間のうち為替相場と離れる時間をどう作るかが大切になってきます。

違い3 「売り」から始められる

「違い」のその3は、FXの場合は「買い」だけではなく、「売り」から取引を始めることもできることです。株式投資の場合、信用取引などの例外はありますが、基本は「買い」で取引を始めることになりますので、この点もFXの特徴の一つです。

FXは通貨同士の売買なので、例えば米ドル/円といった通貨ペアで考えた場合、米ドルを売るということは、裏返せばそれは円を買うということなので、「売り」から取引を始めたと言えます。

違い4 金利差利益

「違い」その4は、金利差利益です。前述したように、通貨同士の売買であるFXでは、それぞれの通貨に付いている金利の差も利益の対象となります。世界屈指の低金利国・日本の投資家の場合は特に、相対的に高い外貨の金利に着目し、FXを選択するというケースは多そうです。

金融取引の利益は、保有するだけで安定的に得られる「インカムゲイン」と、売却することで得られる「キャピタルゲイン」に大別されます。FXの場合の「インカムゲイン」はこの金利差利益であり、それを専門的には「スワップポイント」と呼びます。足元の円安加速がアメリカの長期金利上昇が背景と言われるのは、この金利差を意識して低金利の円を売って、高金利のドルを買ってスワップポイントを狙う、という動きが広がっているためです。

違い5 レバレッジ

そして「違い」のその5は、レバレッジです。これは、元金の数倍の取引が可能な仕組みのことを指している言葉です。何度かのルールの見直しを経て、現在は元金の最大25倍までの取引が可能となっています。ちなみに、株式投資においても信用取引では、このレバレッジの仕組みがありますが、最大で約3.3倍ですから、それに比べるとFXのレバレッジの大きさは目立ちますね。

FXの魅力の一つとして「少額の資金でも取引が可能」といったことが取り上げられ、それこそがFXを投資家が選択する代表的な理由と推測されますが、それを可能にしているのがこのレバレッジという仕組みです。

ただ、これこそ「FX=ハイリスク」といったイメージの主因といってもいいでしょう。1998年からスタートしたFXは、これまで何度かのルール改正が行われてきましたが、その主軸の一つがレバレッジ上限引き下げに関するものでした。もともと規制がなく、元金の数百倍の取引を行うケースさえあったところから、上述のようにレバレッジ上限はその後25倍まで引き下げられました。

それにしても、なぜ「25倍」になったのか。その理由と、そしてそもそも「FX=ハイリスク」とされるものの、そのリスクはレバレッジ次第で投資家自身がコントロールできるものだということなどについては、また別の回で具体的に説明したいと思います。

以上、主に日本株投資と比べてみた場合の主なFXの「違い」「特徴」について見てきました。次回からは、これらの「特徴」を活かせない「失敗例」と、どう活用することで取引の優位性を高めことができるかについて、掘り下げて考察していきます。

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