【宮日紙面診断】男女共同参画センター所長・冨山幸子 性差ない社会実現を

 ウクライナへのロシア侵攻。「平和」がこれほど危ういものだったのか。誰もが衝撃を受けたに違いない。本紙は連日、1面で戦況や各国の動きなどを発信し続けた。「あってはならない」「早く戦争をやめてほしい」。そのような切実な思いが、紙面から感じられた。

 戦場の悲惨さを伝える写真や戦況を示す図解・地図などと共に、ロシアへの経済制裁、わが国や本県への影響など深刻化する事態の変化を丁寧に報道していた。

 県内でも、募金箱の設置や避難民受け入れが次々に表明されている。これら、官民を挙げてウクライナ支援が活発化していることも、本紙により詳細に知ることができた。せめて募金でもと、多くの読者が自分事として捉えたのではないか。

 投稿欄「窓」に寄せられた数々の読者の声。「若い目」に掲載された小学生の作文。ウクライナの人々を案じ、寄り添う気持ちに、強く心打たれたのは私だけではあるまい。地方紙だからこその地域に光を当てた報道を今後も期待している。

 一方、「あるロシア女性の手記」(15、16日)や、米国公演を続ける宮崎市出身のロシアバレエ団ダンサーの記事(16日)。この戦争が一般のロシア人にとってもつらく不幸なことなのだと読者に訴えた。ロシア人への偏見を生んではならないとの配慮、人権を重んじる本紙の姿勢が読み取れた。一日も早い事態の解決を望みたい。

 3月8日は国連が定める「国際女性デー」。ジェンダー平等をテーマとした一連の記事には圧倒された。「ジェンダーの現在地」「地域からジェンダー平等」と題して現状や課題などを複層的に発信。目を引いたのは8日の「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」に係る特集である。

 分かりやすくグラフィックス化され、識者の声と共に深掘りされたインパクトある紙面。世界から大きく後れを取っている日本の中で、さらに遅れている本県の現状を憂い、ギャップを埋めるべくムーブメントを巻き起こそうとする本紙の意気込みが感じられた。

 男女格差解消と多様性を認める地域づくりは全住民の生きやすさにつながるとの社説(9日)。ジェンダー平等が実現された社会は、一人一人が個性を発揮し、他を尊重し合う。結果的に、イノベーションや生産性向上により企業成長を加速させる。経済的・社会的にも大きなメリットをもたらし、豊かな地域づくりに貢献することが期待されている。

 本質は、相手を思いやり、寄り添う気持ちであろう。SDGsにうたわれている「誰一人取り残さない」精神であろう。

 本紙には、SDGs先進県として大きなポテンシャルを有する本県の素晴らしさと可能性をこれからも大いに発信し、読者に気づきや希望を与えていただきたい。地域社会に大きく貢献されることを心から祈念している。

 とみやま・さちこ 神奈川県出身。県工業技術センター所長や県発明協会常務理事などを務め22年4月から現職。宮崎市。65歳。

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