子1人手取り年収760万円のアラサー共働き夫婦「4000万円の住宅購入は厳しい?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、妻29歳、夫30歳の共働き夫婦。子どもは1人で今後の予定はなしとのこと。4,000万円程度の物件を希望していますが、家計的に問題ないでしょうか? また、効果的なローンの組み方は? FPの渡邊裕介氏がお答えします。


住宅購入を検討中です。

現在の希望エリアは土地含め3,700万円程ですが、ウッドショックなどで同条件でも今後4,000万円程度になりそうで、購入できるか不安です。購入は2年後を予定。それぞれの両親から100万円ずつほど援助があり、頭金にする予定。借り入れは3,400万円を予定しています。

妻(私)は29歳の公務員、夫は30歳で会社員、共働きで3歳の子どもがいます。手取りはそれぞれ20万円の計40万円。私のボーナスは、年間手取り70万円、夫のボーナスは、転職から間もないため不明(2年目以後は年間手取り40万円程度)。

子供は1人のみで、今後も予定していません。想定している進路は、大学院まで国公立(自宅外通学)です。

なお、それぞれの両親は蓄えがあり介護費用の負担などは不要です。

【相談者プロフィール】

・性別:女性、29歳、公務員 ・夫:31歳、会社員 ・子ども:3歳

・住居の形態:賃貸(北陸地方)

・毎月の世帯の手取り金額:40万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:55万円(来年以降は100万円以上)

【毎月の支出の内訳】

・毎月の世帯の支出の目安:30万円

・住居費:7万2,000円

・食費:4万5,000円

・水道光熱費:2万2,000円

・教育費:3万1,000円

・保険料:2万5,000円

・通信費:1万5,000円

・車両費:1万5,000円

・お小遣い:4万円

・その他:4万5,000円(被服費や日用品、突発的な出費、奨学金返済2万3,000円)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:7万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:30万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):500万円

・現在の投資総額:12万円

・現在の負債総額:150万円(奨学金。夫婦合わせて月2万3,000円。無利子)

・夫婦ともに退職金あり。夫の会社は転職したばかりで不明なため500万円程度。妻も転職したばかりで1,000万円程度と少なめに見積もっている。

渡邊:こんにちは、ファイナンシャルプランナーの渡邊です。共働き世帯の住宅購入のご相談です。共働きの場合、資金計画をどのように考えればよいのか、どのように住宅ローンを組むのが最適なのか、悩まれる方も多いです。共働き世帯が住宅購入の際に考えるポイントについて押さえていきましょう。

4000万円の物件に手が届く?

まず、共働きで購入する際、世帯年収で資金計画を立てることが多いと思います。ご相談者の場合、手取り収入から逆算し、世帯年収約760万円/年程度と想定します。銀行の住宅ローン審査は、一般的に年収に対して返済比率35%程度として審査する銀行が多いです。

760万円/年×35%÷12カ月=22万1,666円/月
奨学金等のその他ローンを差し引くと、
22万1,666円/月―2万3,000円/月=19万8,666円/月
となります。

住宅ローンの審査時に適用される審査金利は3.5%~4%なので、
4,400万円・金利4%・期間35年・19万4,820円/月 < 19万8,666円/月
世帯年収で約4,400万円程度は借入れが可能ということになります。

また、安心して返済できる金額の目安が年収に対して返済比率20%程度なので、
760万円/年×20%÷12カ月 = 12万6,666円/月

検討されている物件が4,000万円程度とのことで、仮に借入れを4,000万円としても、
【変動金利の場合】
4000万円・金利0.45%(変動)・期間35年=返済額10万2,952円/月
【固定金利の場合】
4,000万円・金利1.44%(固定) 期間35年=返済額12万1,301円/月
となり、いずれも12万6,666円/月以下に納まることから、一般的に考えると無理のある範囲ではないと言えます。

相談者の場合の理想の月の返済額は?

しかし、重要なのはそれぞれの世帯の家計状況に合わせたプランニングです。現状の生活費と比較をすると、住居費7万2,000円/月に対して、変動金利だとしても約3万円/月ほどアップするため、今後お子さまの成長に伴い生活費が上昇することを考えると、少し負担感としては重く感じることになりそうです。

生活費の内訳を確認すると、水光熱費や保険料負担が少し高めとなっています。生命保険料については、もしかすると貯蓄性の保険も含まれているかもしれませんので、保険の内容の整理もポイントになります。今後の貯蓄計画を考える際は、固定費から生活費の見直しをしてみましょう。

住宅購入後の貯蓄額の目標としては、世帯年収の15%程度が目安になります。ご相談者の場合、760万円/年×15%=114万円/年となります。

来年以降、夫の手取りボーナスが40万円増えるので、そのうちの半分を貯蓄にまわせると想定すると、ボーナス貯蓄が50万円/年となるので、住宅ローンを組んだ後も月々5万円程度は貯蓄にまわしたいところです。仮に現状の生活費を見直すことが難しい場合は、返済額は約9万円程度に抑えたほうがよいでしょう。

3,500万円・金利0.45%・期間35年=返済額9万83円/月

上記のとおり、借入金額を3,500万円程度に抑えると、現在の生活をベースとした上で、目標とする貯蓄をすることが可能になります。

夫婦でローンを組む場合の3パターン

では次に、ご夫婦での効果的な住宅ローンの組み方についてみていきます。ご夫婦で住宅ローンを組む場合、大きく3つの方法があります。

1. ペアローンで住宅ローンを2本組む
2. 夫婦収入合算して連帯保証で住宅ローンを組む
3. 夫婦収入合算して連帯債務で住宅ローンを組む

1. ペアローン
同一の金融機関で夫婦がそれぞれ住宅ローンを契約します。夫婦それぞれの名義で住宅ローンを組むため、それぞれで住宅ローン控除を利用することが可能です。ケースによっては、1人で組むより、より多くの還付金を受け取ることも可能になります。また、団体信用生命保険もそれぞれが加入するので、どちらかに万が一のことがあった場合にはそれぞれで団信が適用されます。一方で、2本契約をするため、諸費用が倍必要となります。また、どちらか一方が死亡した場合に、片方のローンは残ることになります。

2. 収入合算(連帯保証型)
ペアローンと比べると諸費用を抑えることができます。デメリットとしては、住宅ローン控除や団体信用生命については、「主たる債務者のみ」が対象となるため、従たる債務者はこれらもメリットを享受できないことになります。

3. 収入合算(連帯債務型)
こちらもペアローンと比べると諸費用を抑えることができます。また、住宅ローン控除もペアローンと同様に二人とも負担割合に応じて利用することが可能です。ただ、取り扱っている金融機関が少ないことと、団体信用生命保険については、「従たる債務者」は対象外となることが多いので、団信とは別に万が一の保障を準備しておくことが必要となります。

相談者のケースで効果的なのは?

ご相談者の場合は、住宅ローン控除や団信の効果を考えるとペアローンを検討されるとよいでしょう。それぞれのご年収から住宅ローン控除のメリットを最大限享受する割合で組みましょう。また、その割合で団信へ加入するので、保険の見直しと合わせて考えるとより効果的です。

最後に、ペアローンで組む場合、あくまでお二人の年収が継続的に続く前提での返済プランになります。将来的に、どちらかの収入が減少することや、なくなる可能性についてもよく考えた上で計画を立てましょう。

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