京都向日町競輪の売り上げ急増 廃止危機から一転、その理由は

京都向日町競輪場の場内(2020年3月撮影、向日市寺戸町)

 赤字が続き京都府が廃止を検討するとした京都向日町競輪場(向日市寺戸町)の売り上げが急増している。新型コロナウイルス禍で、どこにいても車券が購入できるインターネット投票が大きく伸び、新たに始めた夜間の「ミッドナイト競輪」も貢献した。府の外部監査は競輪場存続を提言、今後の展開が注目される。

 2021年度の向日町競輪場の売上高は235億円となり、前年度の125億円から88%増えた。黒字は9億5600万円で、3倍超に伸びると見込む。一方、来場者数は1971年度の97万人をピークに減り続け、21年度はわずか2万4千人にまで落ち込んだ。

 来場者数が低迷する中、92年度以降で最大の黒字になった要因として、インターネット投票の普及と、昨年6月から同競輪場で催してきたミッドナイト競輪の存在が大きい。

 インターネット・電話投票の売上高は、17年度と比較すると、5.3倍の185億円となり、売り上げ全体に占める割合は32%から78%に拡大。来場者による売り上げの2億800万円を圧倒する。

 また、午後8時半~11時半に無観客で行うミッドナイト競輪は、昨年度に計23日開催した。真新しい照明23基が、一周400メートルのバンクを照らす。レースは動画投稿サイトのユーチューブやCS放送で速報し、インターネット投票しやすい環境の整備に力を入れた。

 ミッドナイト競輪の21年度の売り上げは85億円で、グレード別シェアでトップの37%を占める。無観客のために警備や清掃、場内発売・払い戻し経費がかからず収益性が高い。

 向日町競輪場での競輪事業は、収益を府の財源に充てることを目的に1950年に始まった。だが、1998年度以降は赤字が目立つようになった。2011年12月の府議会で当時の山田啓二知事が「府財政への貢献は困難。赤字を税金で穴埋めする状況も予想され、事業存続は非常に難しい」と答弁し、廃止の危機に直面した。

 17年度からはゴールの写真判定を行う企業に運営を委託し、以降は2億円超の黒字が続いているが、25年度以降に競輪事業を継続するかどうかは決まっていない。

 府の行財政を公認会計士がチェックする21年度の外部監査では、収益の改善を受けて「今後はこれまで以上の黒字も見込まれる。25年度以降の競輪場存続について再検討を行うべき」と提言した。西脇隆俊知事は「競輪を続ける場合には投資が必要。専門家の意見も踏まえて再検討する」としている。

 外部監査によれば、老朽化が進む競輪場の設備更新には約45億円が必要という。5万6千平方メートルの敷地には、広い駐車場や半数以上が撤退した売店エリアなど、来場者が少ない現状では必要性に乏しい施設も多い。

 競輪事業を含む公営ギャンブルへの追い風は、コロナ禍が落ち着けば、どう変化するか見通せない。広大な敷地の有効活用を含め、府は向日町競輪場の将来像を府民に示す必要がある。

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