オシム監督が愛した「チルドレン」10選

5月1日に病気のためこの世を去ったイヴィチャ・オシム氏。かつてジェフユナイテッド市原・千葉と日本代表を指揮し、標榜した「走るサッカー」で一時代を築いた。

今回は、そのイヴィチャ・オシム監督に愛された愛弟子たち「オシム・チルドレン」を振り返ってみよう。

阿部勇樹

ジェフ市原のユースで育成され、16歳でJリーグにデビューを果たした天才MF。もともとは「アベッカム」と呼ばれるほどのフリーキックなどで話題になっていたが、オシム監督の下で「2度目の才能開花」をした。

若くしてキャプテンを任されたことで精神的な成長をし、守備的なプレーに磨きをかけ、セットプレーではターゲット側にも。様々なことを万能にこなせるユーティリティ性を手にし、日本代表にも定着した。

巻誠一郎

オシム監督の下でプレーしたことで代表まで上り詰めた選手は数多い。2006年のワールドカップに滑り込み選出された巻誠一郎はその象徴ともいえる。

マリオ・ハースの後を継ぐ形でチームのポストプレーを担い、まさに「水を運ぶFW」としてジェフの最前線に君臨。2009年のJ2降格以降もチームに残ったものの、後に契約延長の見込みがないこととロシアからのオファーが届いたことで海外に挑戦している。

羽生直剛

「オシムチルドレン」といえば羽生直剛の名前が上がるファンは数多いだろう。小柄で細身の軽量アタッカーは、その運動量と動きの質によってオシム監督に最も寵愛された選手の一人だ。

代表監督に就任した際にもまっ先に彼を招集し、アジアカップの予選と本大会を戦った。残念ながらそこで活躍は見せられなかったものの、オシム監督の指導によってJリーグ屈指の選手として一気に名を上げることになった。

佐藤勇人

ふたりともJリーグ屈指の名選手になった「佐藤ツインズ」の弟。兄の寿人がジェフ市原を離れて活躍の場を求めた一方、勇人はクラブに残ってイヴィチャ・オシム監督の下でレギュラーを奪取した。

阿部勇樹とともに生え抜きコンビを形成し、献身的なディフェンスを武器に中盤を締め、数年でJリーグ最高クラスのボランチになった。オシム氏によって日本代表にも選出され、弟の寿人とともにプレー。日本サッカーの歴史上双子の同時出場は初めての記録だった。

水野晃樹

ジェフのサイドで「オシムチルドレン」と呼べる選手は多い。村井慎二、坂本將貴、楽山孝志らのプレーも記憶に新しいが、やはりオシムの手によって急成長したといえば水野晃樹だろう。

清水商業高校から加入後、積極果敢なドリブルを武器に1年目から出場。若くしてレギュラーを奪取し、Jリーグでも指折りの攻撃的なウイングバックとして評価され、2007年にはセルティックへと引き抜かれている。残念ながら海外では成功できなかったが、J時代のインパクトは凄まじかった。

山岸智

水野晃樹と両サイドを組んだ山岸智も、オシムから高い評価を得たことによって飛躍を遂げた選手だ。右足も左足も使え、右サイドも左サイドもこなし、中央のポジションもでき、攻守にわたってプレーする。

まさに「ポリバレント」の権化のような存在であり、オシム監督によって日本代表にも選出された。2007年を最後にジェフを退団してからも川﨑、広島、大分で長くプレーし、現役の最後は千葉に戻ってVONDS市原に所属していた。

林丈統

マリオ・ハースやチェ・ヨンス、サンドロ、巻誠一郎などのストライカーが所属していたオシム時代のジェフであるが、その中でも林丈統の存在感は独特であった。スーパーサブとして高い信頼を受け、短い時間での仕事を任された。

オシム監督が「彼は日本で最も才能ある点取り屋」と評価したことは有名で、快速を生かしたキレのある抜け出しと得点感覚はまさに他の選手にはないものだった。

中島浩司

オシム監督によって「再生された」選手が中島浩司だ。ベガルタ仙台で戦力外通告を受けてしまった彼であるが、Jリーグの合同トライアウトを経てジェフ市原に加入したという経緯を持つ。

ボランチやセンターバックなど守備的なポジションを複数こなせるユーティリティ性を武器に評価され、レギュラーの時期こそ短いものの貴重な働きを見せた。その「這い上がりエピソード」が非常に印象的である。

水本裕貴

センターバックであれば斎藤大輔、茶野隆行も捨てがたいところがあるが、やはりオシムチルドレンのストッパーといえば水本裕貴であろう。高卒で加入したジェフで1年目から徐々に出場機会を獲得し、2006年にはレギュラーを奪取した。

豊かなスピードと身体能力を生かしたマーキングと一対一の強さは、ジェフの「走るサッカー」にピッタリハマった。そしてオシム監督に寄って日本代表にも選出されている。

鈴木啓太

ジェフでプレーしたことはないものの、オシム監督がおそらく最も愛した守備的MF…いや、全ての選手の中でもそうだったかもしれない。日本代表に招集した彼をボランチに固定し「水を運ぶ選手」として起用した。

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献身的なディフェンスを武器に戦い、オシム体制の試合では唯一となる全試合先発。残念ながら監督が健康問題で倒れ、鈴木啓太自身も怪我によってポジションを失ってしまったが、この二人が無事に戦い続ける世界線を見てみたかったものだ…。

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