<金口木舌>さんぴん茶と伝統継承

 今日は立春から88日目の「八十八夜」。暦の上では今日から夏だ。「夏が近づく八十八夜」で始まる唱歌「茶摘」を思い出す人も多いだろう

▼沖縄でお茶と言えば、さんぴん茶。各メーカーのペットボトルのさんぴん茶は県内のどのスーパー、コンビニでも売られている。さっぱりした味は沖縄の料理によく合う

▼それまで急須で入れた温かいものを飲んでいたのを、1993年に沖縄ポッカコーポレーションが缶入りの冷たいものを売り出したことが、さんぴん茶を県民のソウルドリンクの座に引き上げた。伝統を現代風にアレンジし、県民の生活に浸透させた代表例だ

▼沖縄には誇るべき伝統が多数ある。紅型や各地の織物もその一つ。首里の街に「首里染織館」がオープンした。展示された作品はどれも美しく、デザイン性が高い。染め織りをあしらったバッグなど普段使いできる商品の進化には驚いた

▼伝統継承に必要なのは技術をつなぐことだけではない。使われなければ衰退する。伝統に触れ、使ってみよう。県民一人一人が伝統継承者だ。

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