「海の見える理髪店」柄本明との共演で藤原季節が受けた感銘

NHK BSプレミアム・BS4Kで5月9日に同時放送されるスペシャルドラマ「海の見える理髪店」(午後9:00)に出演する柄本明と藤原季節が、コメントを寄せた。

荻原浩氏の「海の見える理髪店」を原作に、安達奈緒子氏が脚本を手掛ける本作は、海辺の小さな町の理髪店を舞台に、老店主と若い客の1時間あまりの静かで熱い邂逅(かいこう)を描く。柄本が老店主、その店を訪れる若い男を藤原が演じ、眞島秀和、水野美紀らが脇を固める。物語は、鏡越しに交わされる2人の会話を中心に進んでいく。

「これからご覧になる方の邪魔になってしまうので、あえて魅力はお伝えせずに、実際に見て作品の魅力を感じていただきたいです」と率直な思いを伝える柄本は、「この作品に限らず、役を演じる際は年齢・職業がバラバラなのでいつも苦労しています。今回は理容師の役だったので理容所作には苦労しました。事前に資料を見て勉強したり、実際に理容指導を何度も行ってもらいました」と役作りにも言及。

また、藤原との2人でのシーンが多いが、撮影を振り返り、「藤原季節さんに限らず、監督やほかの出演者の方とは、現場では (演技については何も)話さず撮影しました」と明かし、「楽しく見ていただければ役者冥利(みょうり)につきます」と語った。

そんな柄本との共演に、藤原は「どのように撮影に臨んだかといえば、何も考えずに臨みました。考えても無駄だからです。僕の小さな頭で考えるよりは柄本明さんと同じ空気をただ吸おうと。それ以外のことは何もしないように注意しました」と回想。

撮影中は「柄本さんとは演技について話したというよりは、もっといろんな話を聞かせていただきました。それはもう楽しくて笑いが止まりませんでした。チェーホフの『かもめ』のセリフを読み聞かせていただいたり、忘れられない時間でした。あの日から僕の心や体には柄本明さんの影響がずっと残っています」と感謝しきり。

加えて、演じるにあたり、「何もしないように、ただそれだけを心がけました。柄本さんがポロッと『これだけカメラに囲まれてると何かしたくなっちゃうよね』とおっしゃって、これは何もするなというサインかなと勝手に解釈しました。“書かれてあるセリフを言う”という柄本さんが体現されている究極に触れさせていただいた気がします。果てしない道のりです。柄本さんが演じる店主の言葉を聞いてるうちに、気付いたら涙が出てくるような時間があって、新しい自分に出会ったこの瞬間は大切にしようと思いました」と貴重な経験だった様子。

そして最後に、「理髪店に流れる心地よい空気と、店主と青年の間に流れる緊張感が同居する、重厚なドラマに仕上がったと思います。それぞれの時代の空気感や俳優陣も素晴らしいです。ぜひ、部屋を暗くして、少し大きめの音で、店主の言葉を堪能してみてください。そうすればラストシーンにはきっと美しい瞬間に導かれるのではないかと思います」と話している。

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