痺れたQ1「早く行けよ!」「SFライツの経験が活きた」。予選殊勲賞3名に聞く/第2戦富士GT300

 驚速ラップあり、1000分の1秒差ありと、じつに見応えのあったスーパーGT第2戦『FAV HOTEL FUJI GT 450km RACE』のGT300クラス公式予選。SUBARU BRZ R&D SPORT山内英輝の2戦連続ポールポジション獲得、そしてダンロップ勢の上位独占に目がいくが、予選Q1はA組もB組も、上位は非常に僅差の戦いが繰り広げられた。そのなかで好走を見せた3人のドライバーに話を聞いた。

■急遽代役参戦も「SFLの経験が活きた」と菅波冬悟

 まずは、新型コロナウイルス感染により出場を見合わせた吉田広樹の代役として、急遽埼玉トヨペットGB GR Supra GTをドライブし、Q1・B組を3番手で突破した菅波冬悟だ。

 2019年の第6戦から昨年までメルセデスAMG GT3のステアリングを握った菅波。急遽代役として搭乗することとなった初のGT300規定車両トヨタGRスープラGTは「どちらかと言えばフォーミュラ寄りの挙動で、フロントがよく入ります」と語る。

「GT3はリヤが安定していて、それをどう曲げるかという話になりますが、結構フォーミュラのようにフロントがスパンと入っていくので、これをどう使って(コーナリング中の)ボトムスピードを上げるか、みたいなところだと思います。幸い、今年からスーパーフォーミュラ・ライツに挑戦してるので、いきなりの代役参戦でしたが、クルマには問題なくスッと馴染むことができました」と菅波。

 菅波にとって幸運だったのは、代役のオファー直後、富士のレース直前に鈴鹿サーキットで2日間のタイヤテストがあったこと。ここで菅波はチームに合流し、本戦を前にマシンの習熟を進めることができた。

 さらに、富士は埼玉トヨペット Green Braveが得意とするコースということで「できあがった状態」で参戦を迎えることとなった。予選日も、公式予選からセットアップはほとんど触っていないという。

 とはいえ、埼玉トヨペット Green Braveにとって“必勝ラウンド”となる富士だけに緊張はあったようだが、「コースに出てみないとわからないことも多いので。もう出たとこ勝負。しっかり合わせることができたらと思い、それだけに集中して頑張りました」と菅波。“必勝ラウンド”でエースドライバーを欠く危機的な状況かと思われた埼玉トヨペットGB GR Supra GTだが、心強い代役とともに“必勝ラウンド”に挑むことになる。

2022スーパーGT第2戦富士 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(川合孝汰/菅波冬悟)

■トーを狙ったと憶測も呼んだ谷口信輝のアタック「場所どりが悪かった」

 続いて、A組7番手でQ2進出を決めたグッドスマイル 初音ミク AMGの谷口信輝だ。

 このところGOODSMILE RACING & TeamUKYOは好調に見えるが、谷口によれば「昨シーズンから、HWAのエンジニアなどを雇って、よりプロフェッショナルにデータ解析をしています。昨シーズンは経験を積む1年でしたが、2年目の今年は持ち込みセットもほぼバッチリ」という。

 また、今回は高地補正に伴いエアリストリクター径が34.5mmから36mmに拡大されている。参加条件の影響もあり苦戦が続くグッドスマイル 初音ミク AMGだけに、「ここでやっと人並みだから頑張ろう」という思いで富士を迎えた。

 今回のQ1・A組セッションではLEON PYRAMID AMG蒲生尚弥の背後でアタックに臨んだ谷口。その接近具合から、蒲生のトーを狙ったのでは? と憶測も呼んだが「場所どりが悪かったですね」と谷口は振り返った。

「蒲生の後ろにいたのでが、さぁこれからアタック行きますよってときに、GRスープラコーナーで蒲生が少しスローダウンして。それで僕としては『うわ! ピッタリになっちゃった』ってなりましたね。だから蒲生に『頼むぞ、早く行けよ! でもあまり速くなくていいからね!』みたいな。ホームストレートでも微塵も速くなりませんでしたね。むしろ100Rやコカ・コーラコーナーはダウンフォースが不足していました」と谷口。

 決勝の戦略は「これから」と語ったが、「この(スタート)タイヤがどれくらい行けそうか、というところから」作戦を話し合う、ということでそれほど自由度がないといった雰囲気を漂わせていた。

2022スーパーGT第2戦富士 谷口信輝(グッドスマイル 初音ミク AMG)

■初予選でQ2進出も、悔しさを滲ませる木村偉織

 もうひとり、Q1で好走を見せたドライバーとして、ARTA NSX GT3のルーキー、木村偉織に話を聞いた。

 ストレートスピードに秀でるホンダNSX GT3であり、サクセスウエイトも0kgという状況で、こちらも狙い目のラウンドを迎えた。前戦の55号車はQ1で先輩の武藤英紀がアタックも、A組の12番手に終わっており、今大会のQ1が木村にとっての初めてのGT300予選セッションとなった。

「鈴鹿のタイヤテストなどで見つけたセットアップを試しました。バランスの面でも大きくタイヤを使えるようなセットアップを見つけることができたので、それもあってQ1通過できたかなと思います」と語った木村。しかし自身のミスもあり、満足とは程遠い表情を見せる。

「自分のアタック的には、ブレーキングなど細かい部分でミスもありうまく最後まとめてタイムとしてはA組6番手でしたが、2番手から1分36秒2台が続いているところで、ぜんぜん2番手は取れる上げ幅はあったので。ミスなくきちんと2番手をとっていかないとこれから上を目指していくドライバーとしては、足りない部分であり、課題も多かった予選だったと思っています」

 初めて挑んだ予選で、Q1突破の喜びよりも、「まだまだ詰めが甘いなというところですね」と悔しさを滲ませた木村。

 決勝に向けては「ブリヂストンとNSXのパッケージではロングでの強みがあるので、そこをしっかりと活かして優勝を目指します」と、期待ができる雰囲気もある。

 果たして、予選での好走をロングレースとなる決勝で結果に結びつけられるか。それぞれの450kmの長い戦いの行く末からは目が離せない。

2022スーパーGT第2戦富士 木村偉織(ARTA NSX GT3)

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