箱根・山のホテルのツツジ 貴重種評価の「ナショナルコレクション」に神奈川初認定 管理に社員・アルバイトが奮闘

徐々に満開に近づいている山のホテルのツツジ庭園=2日午前(小田急エージェンシー提供)

 小田急山のホテル(神奈川県箱根町元箱根)の庭園で1世紀以上受け継がれてきたツツジが、貴重な植物を評価する日本植物園協会「ナショナルコレクション」に神奈川県内で初めて認定された。

 園芸の専門知識がなかった社員ら5人の“素人チーム”が試行錯誤しながら手入れを続けていたが、2014年の大雪被害を機に行った調査で多くの貴重種が残っていることが判明。明治時代から咲き誇るツツジを保つべく、社員らは日々奮闘している。

 赤やピンクに色づき、まりのような「玉仕立て」に整えられたツツジ庭園(約3万3千平方メートル)は、1911(明治44)年に三菱財閥の岩﨑小彌太氏が建てた別荘の庭園に整備された。戦後の48年に同所にホテルがオープンした後も受け継がれてきた。

 江戸時代に作られた古品種で樹齢100年以上のツツジをはじめ、貴重種で明るい紫色の八重咲きツツジ「紫麾(むらさきざい)」や、白い花をつける「白万葉」など、84種類約3千株を楽しめる。

◆大雪被害機に調査

 ツツジの世話をしているのは、元ウエーターで、施設管理アシスタントマネージャーの大橋明雄さん(50)ら社員2人と、シニアアルバイト3人。大橋さんは携わって20年ほどになるが「調査を始めるまではどれが貴重な品種か知らなかった」と目を丸くする。30年以上ホテルの広報を務める髙木美恵子さん(69)も「古品種が存在するという資料は残っていても、敷地内にある品種の数や名前が把握されていない状態が長く続いていた」と振り返る。

 8年前、庭園が雪に覆われ、ツツジの枝が折れる事態を目の当たりにして初めて「このままの管理体制では庭園を残せない」と声が上がり、新潟県立植物園顧問でナショナルコレクション委員長も務める倉重祐二さん(60)に調査を依頼した。判明した品種のアーカイブ化、デジタルマップ化などを進めたことで、広大な庭園で行うツツジの枝切りや、草刈りなどの作業効率が格段に上がった。

 今では、倉重さんが「素人と言いながらも、通年の手入れが満遍なく丁寧。さらに品種管理の正確さは植物園以上と言えるほど」と評価するまでに5人の技も上達。ただ、年にわずか2週間しか開花しないツツジの品種をすべて見分けることは困難で、データは今なお約2割が空白という。

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