1910年にドイツで創業した灯油ランタンブランド『ペトロマックス』。今回はペトロマックスのアイテムの中でも多くのキャンパーが憧れる定番モデル『HK500』についてご紹介していきたいと思います。気になるメンテナンスや点検・調整のしかた、点火の手順も詳しく解説! ぜひ参考にしてみてくださいね。
圧力式灯油ランタン『KH500』とは? ペトロマックスの大定番モデル
ペトロマックス(Petromax)とは、1910年にドイツで誕生した灯油ランタンブランドです。
灯油の“PETRO”と開発者の“MAX”を合わせたブランド名で、当初発売していた圧力式灯油ランタンが、今もほとんど変わらぬ形で販売し続けられています。
脅威の明るさ「5000ルーメン相当」
今回ご紹介する『HK500』は、ペトロマックスの大定番アイテム。229ものパーツでできている美しいランタンで、5000ルーメン相当というかなりの明るさを誇ります。
参考までに、コールマンのツーマントルが3000ルーメン程度なので、『HK500』がいかに明るいランタンかおわかりになると思います。
部品数が多い=調整や破損のリスクも高い?
ただ、部品点数が多いと言うことは、それだけ調整や破損のリスクも増えるということ。使っている間になぜかあちこち緩んできてしまって、火だるまになる事もしばしば……。
そうならないためにも、整備はまめに行う必要があるんです。
手がかかるほど愛着が湧いて手放せないアイテムに
ここまで聞くと購入を迷ってしまう人もいるかもしれませんが、「手のかかる子はかわいい」とはよく言ったもので、段々と愛着が湧いて手放せなくなってしまうという不思議な魅力があるのです。
【スペック】
- サイズ:φ 17 × 40cm
- 本体重量:2.4kg
- タンク容量:1L
- 燃焼時間:約8 時間
- 明るさ:500CP(約400W)
- カラー:ニッケル、ブラス
- 使用燃料:灯油、スターケロシン
今回は、そんなペトロマックス『HK500』を実際にメンテナンスしながら、メンテナンスの方法や点検・調整の方法、点火方法をご紹介します。
ペトロマックス『HK500』をメンテナンス方法を紹介
写真が、数日間ペトロマックスの『HK500』を使った後の姿。ご覧の通り、煤(すす)で汚れて真っ黒に……。
コールマンのランタンのようにホワイトガソリンであれば、煤が出にくい燃料なので使用後にこんなことにはならないのですが、『HK500』の燃料は灯油なので、このように煤だらけになってしまいます。
それでも完全燃焼させてやればこんなことにはならないのでしょうが、我が家の『HK500』は当りが悪かった(?)のかツンデレちゃんなので、些細なことですぐにへそを曲げて、燃料を噴いたり火だるまになったり……。使った後はこんな姿になっていることが多いのです。
こんな煤だらけのまま使っていては『HK500』の機嫌が良くなるわけもないので、使った後はメンテナンスしてあげます。
煤汚れをしっかり磨く
まずは煤だらけのヘッドカバーを磨いていきます。火だるまになるとここから炎が上がるので、ヘッドカバーは真っ黒になってしまうのです。
mウエスで拭いてあげればある程度はきれいになるのですが、黒くなってしまった場合、僕はワコーズのメタルコンパウンドを使って磨いてやります。
ただし、このメタルコンパウンドは研磨剤が入っているため表面を削って汚れを落とします。
黒くなってしまった部分を手早く落とすためだけに使い、本体を磨かないようにしましょう。
次に、インナーチムニーとミキシングパイプ周りを磨きます。
このミキシングパイプで霧状になった灯油と空気を混ぜ合わせるのですが、これはひどい……。
細いワイヤーブラシで細かな部分まで磨いて煤を落としてやります。
磨き完了です。しっかり磨いたので、黒光りしています。
見づらいですが、写真右下に見えるブラシが僕がいつも使っているワイヤーブラシです。ワイヤーと言っても金属ではなく、硬い樹脂の毛でできています。
細いものを選べば、こういった細かなパーツの細かい部分までゴシゴシ磨けるのでおすすめです。
チムニーの内側、ガスチャンバーとノズル周りもきれいにします。
ワイヤーブラシでゴシゴシ磨いていると、なんとガスチャンバーが割れていることに気がつきました。
細かな部品も購入できるお店がありますので、ガスチャンバーを購入。僕は2,640円で購入できました。
次はホヤの磨きです。
ご覧の通り、ホヤまで真っ黒!前回使ったとき、どこかが緩んでいたことで燃料が噴出し、火だるまになってしまったので、どこもかしこも真っ黒!
ここもウエスでカラ拭きして、それでも煤が取りきれない場合はメタルコンパウンドで軽く磨いてきれいにします。
最後に、サポートフレームとニップル、ジェネレーター周りをクリーニングします。
ここが一番大事な部分。溶接部の亀裂や破損がないかじっくり観察しながらきれいにしていきます。
購入した時は、金色で一点の曇りもなく、鏡の様にピカピカだったのですが、使っているうちに黒光りしてくすんだ色になって来ました。
使う度に、手入れをする度に少しずつ積み重なっていき、味わいが増してくるのが良いですね~。
ペトロマックス『HK500』の点検・調整方法を紹介
メンテナンスでくまなくきれいにし、細かな部分まで観察したら、次は点検・調整をします。
ペトロマックス『HK500』を購入すると、写真のようなツールが同梱されています。
これらのツールで、ある程度の点検・調整ができるようになっているんです。
ノズルが緩んでいないか点検
まず、ペトロマックス『HK500』の一番のウィークポイントであるノズルが緩んでいないかどうかを点検します。
純正ノズルの材質はセラミックなのですが、金属にセラミックをねじ込んでいるので、熱による膨張率の違いで、使っているうちに緩んでしまうんです。
僕は使っている最中にマントルごと落下して、『HK500』が火だるまになったことがあります。また、セラミックが割れてしまうこともあるので、この部分は真鍮製に変えてあります。
ジェネレーターが緩んでいないか点検
次に、ジェネレーターが緩んでいないかチェックし、増し閉めしておきます。
前回使ったときは、この部分から燃料が吹いて火だるまになりました。
[ 画像が省略されました ]
我が家のHK500はいつも火だるまになっているな~。
ニップルとニードルを点検・調整
次は、一番大事なニップルとニードルを点検します。
ニップルには小さな穴が開いていて、この穴を「ニードル」と呼ばれる針で塞いだり開けたりすることで、明るさを調整したり消したりしています。
まずニップルを外します。ニップルを外すとニードルが顔を出します。
この針がニップルの穴を塞ぐのですが……曲がってますね~。
交換用のパーツは『HK500』を購入したときに1本付いてきたのですが、まだ使えそうなのでこれを真っすぐに延ばして再利用します。
真っすぐになりました。
ニップルを元に戻す時には、まずグリップホイールを回してニードルを下げてから装着してください。でないと、またニードルが曲がってしまいます。
細心の注意を払いつつ、元に戻します。
ペトロマックスの『HK500』は前述の通りたくさんの部品を使用しているのですが、調整しなければならない場所はここだけになります。
タンクに圧力をかけることで、ニップルに開いた小さな穴から霧状になった灯油が勢いよく吹き上げます。
その際にこの隙間によって灯油の霧は空気と混合し、ミキシングチューブを通ってノズルから噴射してマントルの中に溜まり、それが燃焼するのです。
ここのネジを緩め、ミキシングパイプを上下することで空気の量を調整します。
これで点検と調整は終わりです。
ペトロマックス『HK500』の点火手順を紹介
煤をきれいにし、点検・調整しましたので、いよいよ点火です。
ここではペトロマックス『HK500』の儀式とも言える、点火の方法を解説します。
マントルをセット
まずマントルをセットします。
写真右側はペトロマックス『HK500』専用のマントル、左側は同じ位の大きさで僕が代替品として使っているコールマンの11型です。
※代替はメーカーが推奨しておりません。使用の際は必ず自己責任で行なってください。
『HK500』の専用マントルは黒くならず11型よりも明るいのですが、ちょっとした衝撃ですぐに崩れてしまい、専用マントルよりもコールマンの11型の方が安価に購入できることから、僕はコールマンを使うこともあります。
それではマントルをノズルにセットします。
余った紐は切っておきましょう。
給油 & ポンピング
次に、燃料である灯油をタンクに入れます。目一杯入れてしまうと空気が少なくなりポンピングしても空気を圧縮することができなくなるので、給油はタンク8割ほどに。
タンクの注油キャップには圧力計と圧力調整スクリューが付いています。給油したらキャップと圧力調整スクリューをしっかり閉め、圧力が抜けないようにしてからポンピングします。
ポンピングしていくと圧力計の針が上がってきますので、赤いラインに達するまで圧力をかけてゆきます。
万が一『HK500』が火だるまになった時には、この圧力調整スクリューを反時計回りに回せば、タンク内の圧力が抜けて消火することができます。
マントルのから焼き火入れ
ここからいよいよペトロマックス『HK500』に火入れします。
まずは、プレヒートとマントルのから焼きを行います。
余熱バーナーのレバーを手前に引くと、圧力の掛かったタンクから霧状の燃料が噴出します。
このガスにライターなどで火を点けると、「ゴー!!!!」と言うすごい音がして勢いよく火が付きます。
マントルに火が燃え移ったら、余熱バーナーのレバーを閉じ、マントル全体にゆっく火が回り白く変色するのを待ちましょう。
マントルが白くなったらから焼き完了です。
タンク内の圧力が弱くなっているので、今一度ポンピングをして赤いラインまで圧力を上げていきます。
プレヒート
次に、余熱バーナーのレバーを手前に引き、霧状に出ている燃料に点火してプレヒートを行います。
約90秒間、余熱バーナーの炎によってジェネレーターを熱し、中の燃料が気化して安定した燃焼になるまで我慢します。
プレヒートしている間もタンク内の圧力は下がり続けますので、目盛りを確認しながらポンピングします。
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『HK500』が火だるまになるかきれいに燃焼するかは、このプレヒートにかかっていると言っても良いくらい。すごく重要な儀式なのです。
点火
90秒間のプレヒートが終わったら、グリップホイールを180度、矢印を上から下に向けて、ガスを放出します。
マントルが光り始めたら余熱バーナーを閉じてタンク内の圧力を確認。何度か暗くなったり明るくなったりしながら、マントルが眩しいほど明るく光ったら、点灯完了です。
安定して点灯したからと言ってこれで終わりではありませんよ。
燃焼が続けばタンク内の圧力は下がってきますので、1~2時間ごとにポンピングして圧力を保ちます。
ペトロマックス『HK500』は一緒に経験を積み重ねられるキャンプの相棒
皆さんには、一緒に経験を積み重ねられるキャンプの相棒はいますか?
今回ご紹介したペトロマックスの『HK500』は、コールマンのランタンのようにメンテナンスなしでも常にベストパフォーマンスを発揮してくれるようなギアとは決して言えません。
ご覧いただいたように、火だるまになるし、煤だらけになるし、いろんな所から燃料が漏れるし、部品が緩んで脱落するし、点火するときに面倒な儀式があるし、キャンプに連れて行ってもまともに点灯するとは限らない、すごく気分屋で、手のかかるランタンなのです。
でも、キャンプサイトで光り輝いているときの姿は唯一無二。
その姿を楽しむために、煤だらけで黒くなってしまったHK500を磨き、点検・調整する。そしてキャンプへ行くたびに傷や汚れが増えて味わいが増していく。そうやって一緒に経験を積み重ねて成長するたびに、愛着が深まっていくのです。
僕はそれがペトロマックス『HK500』の魅力だと思って使い続けています。
購入を検討されている皆さんも、今回の記事を参考に、キャンプの相棒を手に入れてみてくださいね。
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