3位チェッカーのARTAが優勝。CRAFTSPORTS Zの大クラッシュ、トップフィニッシュDENSOが降格という未曾有の波乱【第2戦富士GT500決勝レポート後半】

 晴天の富士スピードウェイで開催された恒例のゴールデンウイーク決戦、5月4日に決勝を迎えた2022年のスーパーGT第2戦は、レース距離中盤にして2度の赤旗掲出という大荒れの展開となり、3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zの高星明誠が首位攻防の最中にサーキット全体を凍りつかせる大クラッシュに見舞われてしまう。これにより、14番手スタートだった39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraが暫定首位のままレーススタートから2時間を迎えたところで、レースは赤旗中断されている。

 最初の赤旗中断は44周目に起きた。100R出口からヘアピンへ向かう地点で、GT300クラス車両が大クラッシュを喫しマシンが大破。すぐさまFCY(フルコースイエロー)が宣言される。そのまま車両やデブリの回収とバリア修復の必要からセーフティカー(SC)ランに切り替わると、39号車(DENSO KOBELCO SARD GR Supra)のシートを引き継いだ関口雄飛は80km/hのスロー走行を強いられていた隊列の3番手でコースへと復帰。トヨタ陣営が思わぬ展開でトップ3を固めることに。

 しかし時を同じくして、6番手の38号車ZENT GR Supraにはピット作業違反によるドライブスルー・ペナルティが課されており、リスタート後にはその消化が予測されるなか、やはりバリアのダメージが大きく修復に時間を要するため、49周目にレッドフラッグの判断が下された。

 その後、約30分の中断を経て16時25分にSC先導で動き出したレースは、53周突入時点で再開。

 するとレーシングスピードで飛び込むリスタート直後の1コーナーで首位au TOM’S GR Supra のジュリアーノ・アレジがオーバーシュート。アウト側に残った36号車に対し2番手争いで39号車とサイド・バイ・サイドの勝負を強いられ、イン側からターンインしていた37号車KeePer TOM’S GR Supraの宮田莉朋と36号車が同じトムス同士で接触。これでわずかに失速したトムス勢の2台を出し抜き、DENSO関口が首位奪取に成功。背後に3号車CRAFTSPORTSの高星明誠、3番手にKeePer、4番手にARTA NSX-GT野尻智紀、5番手auのオーダーとなる。

 56周目には38号車ZENTがペナルティのためピットへ向かい、12号車カルソニック IMPUL Z、23号車MOTUL AUTECH Zがそれぞれ6番手、7番手へ。するとここからギャップがリセットされた上位勢はドッグファイトを展開し、ダンロップコーナーでは2番手高星がブレーキングで39号車関口のインサイドを狙ったものの、関口がこれを封じ首位を堅守してホームストレートへ戻ってくる。

 そして迎えた59周目。首位関口のスリップに入った2番手のCRAFTSPORTS Zは、改善されたストレートスピードでGR Supraに迫るが、前走車に視界を遮られた状態のままピットウォール側でスローダウンしていたGT300車両の接触を避けようと左に大きくステアリングを切ったところでコントロールを失い、ストレートの速度がほとんど落ちていないままグランドスタンド前のガードレールにクラッシュ。

 激しくガードレールにヒットした3号車Zの高星は錐揉み状態でホームストレートを滑走して止まり、これに対しすぐさま赤旗が掲出される。場内放送ではグランドスタンドの観客にクラッシュの破片の注意が伝えられるなど、場内は騒然となる状況に。

 あまりに激しいクラッシュに何よりもドライバーの安全が心配されるアクシデントとなってしまったが、幸いにして高星は自力でマシンを降りて、無事に医務室にて検査を受けていることがGTアソシエイションの坂東正明代表から場内アナウンスで伝えられ、富士スピードウェイに居合わせた誰もが胸を撫で下ろすことに。

 ただ、ストレートスピードのまま衝突したガードレールは目視でも10メートル以上に渡って倒壊して穴が空いてしまっている状態。17時現在も重機が入って、59周時点で赤旗中断中となっている。

 その後、ガードレールの前にタイヤバリアを設置する形で18:10にレースは再開。しかし、走行はセーフティカー先導のままで行われ、18:20の日没延長最大時間を迎えた62周を終了した時点でレース終了。

 しかし、レースフィニッシュ直前にトップの39号車は赤旗中の作業違反でペナルティ、また2番手の37号車に2度目の赤旗のリスタート直後の1コーナーの36号車との接触についてのペナルティが発表され、セーフティカーランで3番手フィニッシュした8号車ARTA NSX-GTが優勝するという、まさかの結末に。

 レース距離の75パーセント未満でのフィニッシュとなったことで入賞車両は通常のハーフポイントの獲得となるとともに、2022年の第2戦富士の決勝レースはなんとも後味のよくない閉幕となった。 優勝は8号車ARTAとなったが、その後のペナルティを加味した正式結果の発表には審査委員会の最終判断を経て、しばらくの時間がかかる模様。正式発表が出た段階で、結果を更新いたします。

※「2度目の赤旗中断。SCのタイミングを活かしたDENSOがトップも、CRAFTSPORTS Zがストレートで大クラッシュ【第2戦富士GT500決勝レポート続編】」の記事に追記を加え、タイトルを改編して掲載しています。

59周目のアクシデントの破片が残るホームストレート
59周目のアクシデントの破片が残るホームストレート
ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)

© 株式会社三栄