<社説>施政権返還50年(4)教育振興 無償化含め大胆な施策を

 27年間の米施政権下で沖縄の教育は大きく立ち遅れた。日本復帰からの50年間、学力向上の懸命な取り組みによって、広がった県外との格差は埋められつつあるが、大学進学率など、全国水準にはなお届かない。 不利性を抱える島嶼(とうしょ)県で、将来の展望を切り開くため、県民が最も重要な分野と考えているのは教育だ。県は今後の10年間、教育分野へ集中的に予算を充てるなど、従来にない大胆な施策を展開するべきだ。復帰60年の2032年まで、教育費を従来の2倍以上とすることを提言したい。

 これを原資に、県立高校までを完全無償化し、卒業後、県内で大学や高専、専門学校に進む学生には給付型奨学金を支給してほしい。希望する誰もが高等教育を受けられるようにする必要がある。

 戦後10年の1950年代後半、沖縄の教育費は徐々に増加したが、本土とは開きがあった。1960年度の小学生1人当たりで2倍強の差があったという。

 復帰後、社会資本整備が強力に進められ、教育費も増加した。校舎建設など普通建設事業費の占める割合は全国平均を上回った。

 ただ、建設費を除いた教育費ではいまだ差がある。文部科学省の2011年度の地方教育費調査によると、県内の児童1人当たりの教育費は62万3千円で都道府県別で47位。中学生1人当たりは76万6千円で41位だった。

 年度ごとに増額しており、20年度の同調査では児童が69万3千円で43位、中学生が88万2千円で35位となった。中学は大きく伸びたが、全国平均は93万3千円で届いていない。

 1位は児童108万円、中学生150万円でいずれも高知県。差を見れば、予算額の倍増は荒唐無稽な話ではない。

 経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、日本の教育費の公的負担は低水準だ。政府が取り組むべき課題だが、待ってはいられない。県民の強い要望があるからだ。

 共同通信社による県民世論調査で、今後の沖縄の発展のために力を入れるべき分野として最も多くが望んだのが「教育」だ。県は政府に先んじ、教育の振興に予算を厚く投じてもらいたい。

 少人数学級は、小中学校で順次拡大している。これに対応して教員の数を確保する必要がある。高校生の学習端末は公費で用意してもらいたい。公共交通による通学費の無料化の所得制限を外し、大学や各種学校の学生にも適用することは温室効果ガス削減にも資するはずだ。

 地方自治の確立と深化、産業の振興、貧困や基地問題と課題は山積する。島嶼地域での科学技術の振興といった可能性を形にしていくためにも、それぞれの分野のリーダーたる人材の育成が欠かせない。多くの県民が今、強く求めていることだ。

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