【こどもの日】2021年の出生数は過去最低。少子高齢化の影響は選挙にも(原口和徳)

5月5日はこどもの日です。

総務省統計局の人口推計によると、2022年4月1日時点でのこどもの数(15歳未満人口)は1,465万人で、前年に比べて28万人減少しています。こどもの数は1982年から41年連続の減少となり、過去最少を記録しています。

少子高齢化が選挙に及ぼしている影響を確認してみましょう。

進む有権者の高齢化

図表1は2000年代に行われた衆議院議員総選挙について、総務省の抽出調査を基に有権者と投票者それぞれの平均年齢(平均値)と中央値の推移を図示したものです。

少子高齢化の影響もあり、平均値と中央値ともに右肩上がりの傾向にあることがわかります。

図表1_衆議院議員選挙と参議院議員選挙における平均年齢の推移

同様に、参議院議員選挙も確認しておきましょう。

こちらも衆院選の結果と同様に右肩上がりの傾向にあることが確認できます。

なお、それぞれの選挙において、2016年以降の選挙において18歳選挙権が導入されたこともあり右肩上りの傾向は一度横ばいになっています。

若者の低投票率によってさらに進む投票者の高齢化

小さい方から並べたときにデータ全体のちょうど真ん中となる数値を表す中央値は、有権者年齢よりも投票者年齢の方が高くなっています。

このことの背景には、若年層の投票率が他の世代よりも低いことがあります。

図表2_第49回衆議院議員総選挙における年齢階級別ヒストグラム

図表2では、前回衆院選での有権者数と投票者数を10歳区切りでまとめています。(10代有権者は20代と合算)

有権者数をみると、10代・20代有権者の数を基準とした場合に50代有権者は1.2倍、70代有権者は1.1倍の規模と、それほど大きな差がないことがわかります。一方、投票者数を見ると、若者は少なくなり、70代を頂点として年齢が高い世代側に重心のある山形の構造なっていることがわかります。

具体的には、10代・20代投票者を基準とした規模は、50代で2.0倍、70代で2.2倍となっています。

また、過去の選挙を見るとグラフの形が変化していることがわかります。

図表3_第42回衆議院議員総選挙における年齢階級別ヒストグラム

第42回衆議院議員総選挙(2000年)では、20代有権者数は60歳代以上の有権者よりも多くなっており、近年、有権者の高齢化が進んでいる様子がわかります。

一方、投票者数の比較では、20代投票者を基準とした規模は、50代が2.1倍、70代が1.3倍となっています。

10代・20代有権者の投票率(第42回衆院選は20代のみ)は、38.3%(第42回衆院選)、37.6%(第49回衆院選)とさほど違いはないため、少子高齢化によって有権者の年齢構成が変化することで、だんだんと投票者に占める10代・20代の割合が下がっていることが推察されます。

なお、今回は国政選挙のデータを基に分析を行っていますが、地方自治体の選挙では若者の低投票率はよりその傾向を強め、投票者に占める若者の割合はますます小さなものとなっていきます。

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少子高齢化の影響は有権者数、投票者数ともに生じており、特に投票者数では若年層の投票率の低さとあいまってその影響が強化されていることがわかります。

若者の低い投票参加は各国共通の課題

若者の政治参加の状況について他国とも比較してみましょう。

若い世代の投票参加を考える際に日本の特徴となっているのが、投票率が低下する勢いの激しさです。

図表4_高齢者の投票率と他の年代の投票率の比較

図表4では、65歳~74歳の投票率を基準として、各年代での投票率がどの程度低下(増加)しているのかをグラフ化しています。

日本(衆院選。2021年)では18歳~24歳世代の投票率は65歳~74歳の世代に比べて約35%低下していますが、次に低下幅が大きいアメリカやイギリスでは25%程となっています。

また、各年代の投票率の低下の幅も他国よりも大きく、45歳~54歳の世代であったとしても他の国に比べて2倍に近い低下幅を示しています。

また、日本のこの傾向は、ここ数年で表れるようになってきたものではなく、過去20年以上続くものとなっています。

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今後も有権者の高齢化が進む中で求められること

日本の人口構造を見ると出産適齢期とされる年代(25歳~39歳)の女性人口は減少傾向にあります。(2020年は対前年29万人の減少。2019年は約17万人の減少。出所:日本の統計2022)そのため、今後も少子化の傾向は続き、有権者に占める若者世代の割合は低下していくことが予想されます。

世代の違いが政治に要求するものを決める唯一の要素となるわけではありませんが、当事者だからこそ鮮明に感じることのできる問題もあるはずです。

そのような中で、自分たちの世代の人数が他の世代よりも少ないということは、選挙に参加するためのモチベーションを下げる十分な理由となってしまいます。特に様々な政策課題に対して「選挙で示された民意」が強調されることの多い昨今の風潮の中ではその影響が強まります。

人口構成というすぐには変えられない条件によって最初から不利な立場に置かれることがわかっている若者に選挙への参加を促すためには、意識啓発に加えてより若者を優先した参加しやすい環境づくりが必要となります。

これまでの選挙でも、大学や高校、ショッピングモールなどの若者がいる場所へ投票所を設置することや投票所の運営に若者が参加する取組み、投票済証明書を使った各種割引サービスなど、様々な取組みが行われています。また、インターネット投票や、投票所をフォトジェニックな場所にすること等の提案もされています。

海外に目を向けてみると投票しやすい環境づくりや若者の意識啓発のために、投票日を3日間に延長(オランダ。2021年総選挙。投票率74.92%)、小学4年生から中学3年生までの子どもたちがスタッフとして投票所の運営に参加(キューバ。2018年、80.82%)、投票所の運営・研修参加に対価を支払うとともに進学時のアピールに活用可能(アメリカ)などの取り組みもあります。

成功するものもそうでないものもあると思いますが、これからも有権者の高齢化が見込まれる状況において若者が参加しやすくなるための環境づくりは、構造的に強者の立場にいる世代が当然なすべき配慮と言ってもいいかもしれません。

例えば、アメリカでは極端に投票者が少ない状況では民主主義の基本理念である「一人一票の原則」が損なわれかねないといった問題提起をする活動も行われています。

現在、社会の中枢を担う方々もそうであったように、年齢の低下につれて投票率が下がっていくことは、日本に暮らす多くの人たちが当事者として経験してきた、私たちの暮らしに埋め込まれた社会的課題ともいえる状況です。 これからも少子高齢化が続くことが見込まれる中だからこそ、各地の取り組みを参考に選挙を通して若者も一緒に日本の、地域の未来を選択していくことのできる環境づくりが求められています。

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