グリッケンハウス、予定していたエンジンの改造を中止「信頼性を確認する時間がなかった」/WEC

 グリッケンハウス・レーシングは、今週末に行われるWEC世界耐久選手権第2戦スパ・フランコルシャン6時間レースに向けたLMHエンジンの改造を中止し、この計画の再開が早くてもル・マン24時間レース後になることを明らかにした。

 ハイパーカークラスに参戦しているアメリカのコンストラクターは、セブリングでのシーズン開幕戦で、WECで新採用された2022年用の持続可能燃料に合わせたエンジンパッケージの変更をピポ・モチュール社と取り組み始めたことをSportscar365に明かしていた。

 当時は新しいスパークプラグや燃料ポンプを含む改造が、この週末に行われる第2戦スパまでに実施される予定だった。

 しかし、チーム代表を務めるルカ・チャンセッティは、信頼性の懸念を理由にグリッケンハウス007 LMHに搭載される3.5リットルV8ツインターボエンジンの改造は行わなかったと述べた。

「いいや、それは実施されていない」と同氏はSportscar365に語った。

「私たちは実際にエンジンの進化の可能性に取り組んでいたが、信頼性やすべてを確認するために充分な時間がなかったんだ」

「進化の中でいいものを見つけたが、今シーズン中にそれを使うことはない」

 チームオーナーのジム・グリッケンハウスも同様に、キャンペーンの半ばで信頼性を危険にさらすことは望んでいないと述べ、これが当初の計画が中止された理由となっている。

 彼はまた、エンジンはふたたびホモロゲーションを取得する必要があると述べたが、セブリングではエンジンの変更が2021年から2025年の間にLMHメーカーに認められた計5つの“エボジョーカー”のうちのひとつを占めることになるのかどうかは不明だった。

 現在、これらのジョーカーを使用できるのはグリッケンハウスとトヨタだけで、アルピーヌは“グランドファーザーカー”と呼ばれる旧規定のLMP1カーを用いているため、車両やエンジンの改造を認められていない。LMH(ル・マン・ハイパーカー)の技術規則では、エボジョーカーはパフォーマンス上の理由から使用されることになっている。

 チャンセッティは、この件に関する決定がまだなされておらず、来月のル・マン24時間レースが終わるまで行われないことを認め、グリッケンハウス007 LMHのエンジンの改造が2023年のWECシーズン開幕時まで実施されないことを示唆した

 彼は「現時点で決定されたものではない」と付け加えた。

「(少なくとも)ル・マンの前に試したいことではないね。ル・マン後に機会があるかどうかを確認し、FIA国際自動車連盟やACOフランス西部自動車クラブともいつ、どのようにアップグレードを行うか話し合うつもりだが、現時点では待機している状態だ」

2022年WEC開幕戦で3位表彰台を獲得した708号車グリッケンハウス007 LMH 2022年WEC第1戦セブリング

■スパでの初レースながら、高速サーキットに自信

 グリッケンハウスは3月のセブリング1000マイルで3位表彰台を獲得した後、昨年は欠場したWECスパに臨む。彼らにとってスパ・フランコルシャンは、数年前にニュルブルクリンク24時間レースを戦うグリッケンハウス003Cのテストを行っただけで、同地でのレース経験はない。

 ライバルのアルピーヌA480・ギブソンがBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)で約27PSに相当する20kWのパワー抑制を受けることと、コースレイアウトがグリッケンハウス007 LMHの強みを発揮できる可能性があることから、チャンセッティはチームの可能性について慎重になりながらも楽観視している。

「最初のフリープラクティスの後にわかることだが、今のところはとくに心配はしていない」と語ったチャンセッティ。

「確かに我々のクルマは、長いストレートでトップスピードが必要なところでは、いつもいいパフォーマンスを見せてくれる。だから、その点ではいいと思う。昨年のモンツァのようにね。だが、実際には大きく異る部分もある」

「(モンツァとは)異なる特性が必要だが、それはスパでは良いポイントになるだろう」

「クルマだけでなく、私たち自身のことでもあり、このコースでどれだけ早くクルマのいい使い方を見つけられるかが勝負だ」

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