トムス1-2が消えた「一番やっていはいけない同士討ち」。両監督の見解とドライバーへの試練【第2戦富士GT500決勝】

 オープニングラップで4番手スタートの37号車KeePer TOM’S GR Superaのサッシャ・フェネストラズがトップを奪うと、3周目には36号車au TOM’S GR Supraの坪井翔が8番手スタートから2番手にポジションを上げて、序盤で1-2体制を気づいたトムス陣営。その後のペースも快調に徐々に後続を引き離す展開となったが、44周目に起きたGT300マシンのクラッシュによる赤旗中断で、それまで築いたギャップはゼロになってしまった。

 そして、赤旗後のリスタートで36号車auのジュリアーノ・アレジが1コーナーでのブレーキングでやや膨らんだところに、3番手39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraとバトルしていた2番手37号車KeePerの宮田莉朋がぶつかってしまい。まさかのトムス同士討ちに。

2022年スーパーGT第2戦富士スピードウェイ決勝でトップを争うau TOM’S GRスープラとKeePer TOM’S GRスープラ

 その2台が接触している隙間にDENSOがトップを奪うという、トムスにとっては悪夢のようなシーンとなってしまった。その後、37号車KeePerは接触のペナルティが課せられて14位でレースを終えることに。36号車は2位表彰台となったが、3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zの高星明誠の大クラッシュと合わせて、トムス陣営には二重に苦いレースになってしまった。レース後、36号車の伊藤大輔監督、37号車の山田淳監督に聞いた。

「まずは高星選手が大丈夫そうなのと、今のところグランドスタンドのお客様にも怪我の報告が出ていないので、まずはそこが一番、ひと安心しています。レースとしては序盤から非常に速くて、予選のときもそうですけど最近の坪井は非常に乗れていますし、クルマもタイヤもかなりいい状態で、坪井もかなり自信を持って攻めることができたと思います」と話す、36号車の伊藤監督。2度の赤旗でレースの最後までのパフォーマンスは見れなかったが、36号車はかなりの手応えがあったようだ。

「戦略的にはウチは早めに最初のピットに入って、第2スティントでジュリアーノ(アレジ)が走った後、坪井で最後にガンガン行ってもらう予定でしたけど、セーフティカーが入ったことで我々にとってはマイナスになってしまいました。ただ、あのセーフティカーが入って差がなくなった状態でも、我々のパフォーマンスレベルから言うと最後は坪井でトップ争いに行ける展開だったと思っています」

 大きな誤算は、やはり53周目のリスタート後の1コーナーだ。

「リスタートの時に後ろの宮田(莉朋/37号車KeePer)と関口(雄飛/39号車DENSO)が近かったこともあって、ちょっと心配はしていました。ジュリアーノも後ろからふたりが来ているのはわかっていたので、1コーナーでブレーキを遅らせて行ったのですけど、その後ろの2台がブレーキング競争になって、トムスの同士討ちになってしまった形になりました。レースをしていたら、そういうことも仕方ないかなと思いつつ、同じチームであってはならないことなので残念ではあります」と、伊藤監督。

 その後、接触がありながら2位フィニッシュを果たしたが、実は36号車にとっては薄氷の2位だった。

「結果的にセーフティカーランのまま時間制限で終わって良かったのですけど、我々のクルマは(3号車の)アクシデントのあとはレーシングスピードで走れるクルマではなかった。飛んできた3号車のパーツが当たって、左フロントのフリックボックスあたりのパーツがない状態でした。宮田と接触して破損したのは右側でしたが、左フロントはカウルがなくて結構ひどい状態でした。幸いラジエターからは水は漏れていなかったので、ゆっくりなら走れる状態だったのでですけど、レーシングスピードならボンネットが飛んで行くという状態でした」

「ですので、リスタートになっていたら我々はスタートせずにすぐにピットインする予定で、そこで修復できるか、そのままリタイアするかという状況ではありました。ウチだけではなくて、他にも多くのクルマに同じような破損があったと思いますので、本当にお客様、ドライバー、無事だったのが何よりです」

 一方、ペナルティを受ける形となった37号車の山田監督も高星や同じチームの36号車へ配慮しつつ、複雑な心境と宮田への気遣いを見せる。

「一番やってはいけない同士討ちがありました。『仕方がない』で済ませられる問題ではないですけど、そこを除いて考えればクルマは速かったですし、タイヤ選択も間違っていなかったですし、アクシデントがなければトムスのワン・ツーは間違いなかった。ですけど、結果的にこうなってしまったのは……まあ、受け入れるしかないですね」
 
 36号車に接触してしまった宮田は、レース後はメディアの取材にノーコメントで通している。本人にとってもこの一戦はショックとなったに違いない。

「(宮田選手は)それはもう、落ち込んでいるでしょう。(同士討ちに加えて3号車の)アクシデントもあって、宮田みたいな若いドライバーにとっては辛いと思うけど、レースって残酷だけどこういうことがあって、そこは宮田自身も受け入れて強くなっていくしかないですよね。まだまだ若いドライバーで、間違いなく速さは持っているので、頭を切り替えて乗り越えてほしいですね。ここで強くなって、バネにしていくしかないと思います」

 多くのアクシデントやトラブル、ショッキングなクラッシュで心に重い一戦となってしまった第2戦富士。トムスには同士討ちという、さらに重さが加わったレースになったが、若い4人のドライバーにとっては今回の速さを次の機会に結果として残すことが成長の証となる。

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