記者コラム=ドキドキメイド喫茶体験記=気恥ずかしさの先にある景色

メイド喫茶で取材を行うコラム子の様子

 メイド喫茶が編集部から徒歩5分の場所にオープンした。
 コラム子(24歳、3世、男)はこれまでメイド喫茶やそれら「カワイイ世界」とは無縁の人生を送ってきており、その界隈に対しては、正直なところ「何が面白いのか」といった批判的な見方を持っていた。
 編集部会議でそのメイド喫茶「Dokidoki Maid Café」を取材することが決定し、4月13日正午、サンパウロ市リベルダーデ区ガルボン・ブエノ街351番2Fにある同店へ向かった。
 道中さほど早く歩いているわけでもないのに、鼓動が早くなっていることに気づいた。どうやら初めてのメイド喫茶体験に知らぬ間に緊張している様だ。「メイド相手に何を緊張することがある」と胸中自分に言い聞かせても、店が近づくにつれ、耳下に響く鼓動は否応なく勢いを増していく。その音はまさに「Doki doki」――。
 現場に到着。店舗入り口にはパステルカラーのメイド服を着たブラジル人メイドさん3人が待っていてくれた。メイドさんたちは、満面の笑顔で「おかえりなさいませ」とポルトガル語訛りのある出迎えの挨拶をしてくれたのだが、こちらは突然の「おかえりなさいませ」にどう対応したらいいかわかわず、また気恥ずかしさも相まって、激しく動揺。事前に考えていた取材案が頭の中から消えていくのがわかった。
 数秒後、オーナー夫妻が店舗奥から現れ、先にこちらから開店経緯などを取材することになり、ほっと一安心。取材をしながら次第に落ち着きを取り戻し、オーナー夫妻への取材は何事もなく終えることができた。
 しかし、これで終わりではない。メイド喫茶名物『おまじない』の取材がまだ残っている。日本のメイド喫茶では注文した料理に「萌え萌えキュン♡」などといった料理が美味しくなるおまじないの言葉を料理にかける文化があり、同店でも行っているという。入店時に味わった強い気恥ずかしさの再来が予感される中、意を決して『おまじない』取材を開始した。
 さて、ここで『おまじない』の詳細については語らない。絶好の景色は写真からではなく実際に見なければその雄大さがわからないように、その場に足を運び、肌で感じなければ分からないものがある。
 コラム子はメイド喫茶を後にした時、知りもしないものを批判していた自分がいかに惨めだったかを感じた。メイド喫茶とは、ただ「カワイイ」を求める場所ではなく、人に安らぎを提供する場所であり、決して痛々しく見られるような場所ではなかった。
 ぜひ、読者の皆様にも知らないことを積極的に経験し、自分の価値観の枠を大きく広げてもらいたい。そうしたことの積み重ねが社会から差別や偏見を無くし、みんなが生きやすい社会の実現に繋がっていくのだと思う。そんな未来への第一歩としてメイド喫茶に足を運んでみてはいかがだろうか。(仲)

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