現代の成人式よりシビアな「大人への通過儀礼」 「元服」で一人前と公認、利害関係や生きることに直結

狩衣姿で元服の誓いを読み上げる生徒=5月5日、福井県福井市の金井学園金井講堂

 改正民法施行で成人年齢が18歳に引き下げられた。そもそも「大人」って何だろう。福井県内の専門家によると、現在の「成人式」は七十数年前に始まった比較的新しい行事。「元服」など大人への通過儀礼は古くからあり、周りから一人前と公認される意味合いが現代よりも強かったようだ。

 「大人への通過儀礼は古来、各地にあった。年齢だけでなく、一人前だとコミュニティーに認められる側面が強かったと思う」。福井県立若狭歴史博物館の川波久志学芸員(43)はこう切り出した。成人年齢は1876(明治9)年の太政官布告で20歳とされた。「成人の日」は1948(昭和23)年施行の祝日法で制定され、成人式はその少し前から広まったイベントだという。

 「国史大辞典」によると、元服(げんぶく・げんぷく)は、「冠礼」とも呼ばれた。冠礼は7世紀以降に朝廷で冠帽が普及してから定着し、冠を着けることを認める儀礼として貴族社会の中で重要視された。中世の武家社会の元服では、烏帽子(えぼし)を着けるようになったとされる。川波さんは、複数の資料を示し「古くから庶民にも身近な儀式として行われてきた」と説明する。

 「日本民俗大辞典」によれば、大人への通過儀礼は男子は数え年の15歳(満14歳)ごろ、女子は数え年の13歳(満12歳)ごろか初潮を機に行われ、これを経て労働、行政、婚姻などの面で一人前の村人として認められたという。

 県内各地でも元服に関わる記録がある。「福井県史」によると「烏帽子着(えぼしぎ)」「十六祝い」「サムカエ」「オトナゴト」などの名称で行われてきたとされる。

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 川波さんは「一人前と認められれば、水路の番など責任ある仕事を任されたり、集落の青年組織に入ったりした。利害関係や生きることに直結し、現代よりシビアな位置付けだった」と指摘。「かつてと今は覚悟と生き方が違うが、成人年齢の引き下げは、若者に一人前になることについて考えてもらうきっかけになるのでは」と話した。

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