男性育休、職場環境に左右 「1カ月がぎりぎり」「前例ないと難しい」

次男をあやす県南在住の30代男性。育休を取得し「夫婦で協力すれば育児の大変さを分散できる。楽しむ余裕もできた」と語る=4月下旬

 「イクメン」や「イクボス」といった言葉が定着し、男女共に仕事と育児を両立しやすい企業が人気を集める中、男性の育児休業取得は栃木県内でも広がっている。ただ、職場の環境によっては短期間にとどめたり、取得そのものに二の足を踏んだりするケースは少なくない。男性の育児参加をさらに進めるには、企業や管理職の意識や対応が大きな鍵を握っている。

 県南在住の30代男性は、今年1月に次男が誕生してから半年以上の育休を取得中だ。4月に長男の小学校入学が控えていたため、長めの期間を選んだ。現在は次男の育児や家事に加え、長男の学校行事への対応など慌ただしい日々が続く。それでも、「子どもの成長をそばで見られるのは何よりもうれしい」と目を細める。

 育休は、長男が生まれた時も取得した。だが、「忙しい業界だったため1カ月取るのがぎりぎりだった」。子育てに理解のない職場の雰囲気に加え、子どもの寝顔しか見られないほど遅くまで働く毎日。「もっと子どもとの時間を大切にしたい」と考え、転職を決めた。

 今の職場は「育児経験がある上司だったからこそ、知識や理解があり長期でも取得することができた」という。育休を取得する世代は、若手や中堅のポジションが多いため、「上司が否定的であれば断念する人もいるでしょう」と推し量る。

 一方、県央在住の40代女性は6年前に次女が誕生した時、夫に育休を取得するよう頼めなかった。人手不足の中、外回りで多忙を極める夫は帰宅が深夜になることもしばしばだったためだ。

 男性の取得が進まない背景として、育休を「単なる休暇」と捉える風潮も感じるという。「職場に前例がなく制度も整っていないと、男性の育休取得を実現するのは難しい」と漏らした。

 宇都宮共和大子ども生活学部の蟹江教子(かにえのりこ)教授(家族社会学)は「男性は仕事、女性は家庭と決め付けず、社会全体で子育て世代を支援するという意識を持つことが大事」と指摘している。

育休中の県南に住む30代男性が作成した1日のスケジュール。青い丸は夫、赤い丸は妻が担当。緑は2人で協力した項目だ

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