B29搭乗兵の冥福祈る 戦時中墜落、田辺市龍神村で慰霊祭

碑の前で営まれた慰霊祭(5日、和歌山県田辺市龍神村殿原で)

 和歌山県田辺市龍神村殿原(深瀬松視区長)で5日、太平洋戦争末期に区内に墜落した米軍爆撃機B29搭乗兵の慰霊祭があった。今年で78回目。地元住民らが参列して犠牲となった搭乗兵を追悼し、世界平和を祈った。

 殿原に飛来したB29は、1945年5月5日午前11時ごろ、日本の戦闘機に撃墜され、搭乗していた11人のうち7人が死亡。パラシュートで脱出した4人のうち3人がその後に処刑され、1人は不明とされている。墜落の翌月、地元の住民らが仏式の供養をし、毎年5月5日に慰霊祭を営んできた。47年12月には墜落した山中に慰霊碑を建立。水害などで数回場所を変えているが、現在は惣大明神のそばにある。

 慰霊祭は新型コロナウイルス感染防止の観点から規模を縮小しており、今年は深瀬区長(75)や墜落の史実を調査してきた古久保健さん(84)ら15人が参列。大応寺(龍神村東)の松本周和住職(74)が読経し、参列者が焼香した。

 今回初めて、3年前にアメリカから奈良県川上村に移住し、地域おこしや奈良県に墜落したB29の調査などに取り組むジャーナリストのデイビッド・カパララさん(33)も参列した。カパララさんは「ここで営まれている慰霊祭は素晴らしい活動で、本当に感謝している。将来は奈良県でも、搭乗兵の遺族に来てもらい交流できるようにしたい」と語った。

 古久保さんは「碑を建て、慰霊祭を続けてきたことで、人の死を悼む心を培ってくれた先人に感謝したい。戦争はしてはならないと思わせてくれる象徴で、誇るべき文化だと思う」。深瀬区長は「平和を願い、二度と戦争のない社会にしたいという思いでこの慰霊祭をやってきた。ロシアによるウクライナ侵攻は大変残念で、一日も早い終戦も願ってお参りさせていただいた」とそれぞれ話した。

 この日は、新宮市在住のジェームス・カレン神父(80)と田辺市や御坊市、新宮市などから集まったカトリックの信徒15人も碑を訪問。カレン神父が聖書の一節を朗読して祈りをささげたほか、信徒と共に聖歌を歌い、世界平和を祈った。

デイビッド・カパララさん(右)に、墜落したB29について書かれた本を紹介する古久保健さん

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