知の巨人に迫る 白浜の記念館で熊楠の模写資料展

南方熊楠が書き写した「和漢三才図会」(和歌山県白浜町の南方熊楠記念館で)

 和歌山県白浜町の南方熊楠記念館は、特別展「熊楠の模写資料展 学びは真似(まね)から」を開いている。熊楠が12~16歳の時に書き写した江戸時代の百科事典「和漢三才図会」や動植物の絵など17点とパネル16点を展示し、「知の巨人」の源流に迫る。7月10日まで。

 同館学芸員の三村宜敬さんによると、熊楠は幼少期から「本草綱目」など江戸時代に刊行された事典を書き写すことで、自然現象や動植物などの知識を得ていたという。

 「和漢三才図会」は、江戸時代の医者寺島良安の編集。熊楠は幼少期にこの事典を親にねだったが、「年齢不相応だ」とひどくしかられ、悔しい思いをしたという。これをきっかけに熊楠はこの事典を幅2ミリほどの大きさの字で、和紙にびっしりと書き写し、大学予備門では活字版を予約して購入。留学の際にも持って行くなど思い入れが強く、著作にも多数引用している。

 三村さんは「熊楠の字を見るとすごく神経質なことがうかがえる。幼少期に勉強したいという思いがあったが、親の教育方針で思うようにいかず、大学予備門でそのフラストレーションが爆発したのではないか」と話した。

 特別展ではそのほか、原本は不明だが、熊楠が模写したネズミ、サル、コアラなどの動物、ヒイラギ、スギ、マツなどの植物、中国の書物に登場する人物などの絵を展示。子ども向けのクイズコーナーも設けている。

 開館時間は午前9時~午後5時。入館料は600円(小中学生300円、幼児無料)。木曜は休館で、6月28~30日は臨時休館。

 会期中の5月15日、6月19日、7月3日の午後2時から、30分程度、三村さんによるギャラリートークがある。参加申し込み不要。

 問い合わせは、同館(0739.42.2872)へ。

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