京急「みさきまぐろきっぷ」なぜ売れる コスパだけじゃない魅力とは

〝おトクなきっぷ3兄妹〟をPRする宮﨑さん=横浜市西区

 京急線品川、横浜駅などから三崎口駅(神奈川県三浦市)までの往復乗車券やマグロ料理の食事券、レジャー施設利用券などがセットになった京浜急行電鉄(横浜市西区)の「みさきまぐろきっぷ」。2017年度には、発売当初(09年度)の10倍超となる20万枚以上が売れる人気商品となった。「おいしいお店を、地元をよく知る人たちから聞きたい」という消費者心理をくすぐったのが、ヒットの要因と言えそうだ。

◆ヒントは西鉄にあった

 かつて海水浴客でにぎわった三浦市だが、レジャーの多様化を受けて、観光客数は1990年代をピークに減少。92年に年間270万人を数えた三崎口駅の乗降人員(定期外)は、2008年に242万人まで落ち込んだ。

 再び三浦に足を運んでもらおうと打開策を考える中で誕生したのが、「みさきまぐろきっぷ」だ。

 当時、計画営業部にいた30代の男性社員が、乗車券、川下り乗船券、地元グルメの食事券がセットになった西日本鉄道(福岡市)の「柳川特盛きっぷ」にヒントを得て発案したという。

 「『ご当地のおいしい物は、出かけるモチベーションになる』という発想でした」。企画段階からまぐろきっぷに関わった運輸営業部の宮﨑暁子さん(43)は振り返る。三崎口駅に近い三崎港は、全国有数のマグロ水揚げ基地。「三浦のご当地グルメといえば一択でした」

◆「地元を知る人の提案」に支持

 課題となったのは、それまでノウハウがなかった飲食店選び。宮﨑さんは「鉄道会社なので乗車券を売るのは得意だが、店舗に乗客を送り込むのは初めて。良い思い出をつくってもらうため、味もサービスもしっかりしているお店を選ぶ必要があった」と話す。

 三浦市のほか、沿線の生麦駅近くに工場がある縁でキリンビールの飲食店営業担当にも協力を得た。「本当に客が来るのか」といぶかしがる店舗もあったが、最終的には「みんなで地域を盛り上げよう」という雰囲気になったという。09年夏、対象の飲食店は12店舗、レジャー施設は3施設でスタートした。

 13年に「かながわ観光大賞」の審査委員特別賞を受賞し認知度が上がると、同年度約6万枚だった年間売上枚数は翌14年度に倍増。17年度には、過去最高の約20万枚を記録した。

 「食事と乗車券のセットの需要がこんなに隠れていたとは。想定以上でした。みんなマグロが好きなんですね」と宮﨑さん。割安感はもちろん、「地元を良く知る人が飲食店を提案するのが受け入れられているのではないか」と分析する。

◆みさきまぐろきっぷ 京急線往復乗車券と指定区間の京急バスフリー乗車券、加盟店舗で食事ができる「まぐろまんぷく券」、観光施設などで使える「三浦・三崎おもひで券」の3枚で構成。品川発は3570円、横浜発は3480円(いずれも大人料金)。京急線各駅で販売している。

© 株式会社神奈川新聞社