闘牛の日常追い続けて レンズ越しに高まる気持ち 宮城県出身の写真家がハマるまで

 沖縄県復帰50周年記念大闘牛大会(主催・復帰50周年記念実行委員会、共催・琉球新報社)が7日午後2時から、うるま市石川多目的ドームで開催される。8日午後1時からは、同会場で第116回春の全島闘牛大会(主催・県闘牛組合連合会、共催・琉球新報社)が開かれる。牛の世話をしながら撮影する闘牛写真家・小林司さん(41)=宮城県出身=は「日常から牛と関わっているからこそ撮れる1枚がある」と、闘牛の日常から本番までを追い掛け続ける。

 20代後半から毎年の沖縄旅行が恒例で、自宅に首里城のポスターを貼るような「沖縄病」だった。原点には東日本大震災がある。2011年3月11日はたまたま奈良県にいたため被災を免れ、角田市の実家も無事だった。だが沿岸部は津波で甚大な被害を受けた。無力感を抱きながらも勇気付けられたのが、かりゆし58など被災地に駆け付けたアーティストの活動だった。「沖縄の人に助けられて、いつか恩返ししたいと思うようになった」

 19年10月31日、首里城火災をテレビで見て「いてもたってもいられなくなった」。一念発起して勤めていた会社を辞め、沖縄移住を決断。首里城のがれき撤去などボランティアに精を出した。

 しかし、間もなくコロナ禍のため自粛生活を強いられるように。元々プロレスラーを志し、重量挙げで国体出場経験があるつわものだ。「何もできずエネルギーの持って行き場がなくなった」。そんな時、たぎる気持ちをぶつけられるのが闘牛だった。気持ちは高まり、現在は聖地・うるま市石川多目的ドームの目と鼻の先に引っ越し、牛舎で撮影しながら削蹄(さくてい)師を目指す。

 小林さんの写真は、会場に設置された看板や、大会チケットに使われている。今後の目標は個展を開くことだ。「牛主の思いを写真で記録し、観客とのつなぎ役になりたい」。一瞬も逃すまいと、闘牛にまなざしを向ける。

(古川峻、写真も)

© 株式会社琉球新報社