手のひらが痒いが頻繁なアルコール消毒でケアできない…医師に聞く原因や治療方法 生活習慣やアレルギーの可能性も

 手のひらがかゆくて困っています。急に手のひらの中心部や指の間などにかゆみが起こり、かさぶたになるぐらい掻きむしってしまいます。ハンドクリームを塗っているのですが、感染症予防のため、頻繁にアルコール消毒や手洗いをするため、あまり効果がないように感じます。かゆみの原因やケアの方法を教えてほしいです。(福井県福井市、40代男性)

【お答えします】尾山徳孝・福井大医学部皮膚科准教授

■消毒でも保湿成分が不十分に

 手や指のかゆみは日常で遭遇することが多い半面、日々使いながら治療する安静を保てない部位のため、治りづらい疾患です。“手あれ”と間違われやすいのですが、合併することもあり、理容・美容師、調理師、医療従事者、主婦など、水仕事の多い人によく生じます。特に最近は、手の洗浄や消毒を頻回にする機会が増え、天然の保湿成分が失われやすいことが関与しているケースも見受けられます。

 手や指の「ひら」の皮膚は厚いアカの層(角質)で覆われており、空気が乾燥する季節には角層にとどまった水分が失われやすくなります。手や指のひらには皮脂の分泌に重要な毛穴がないため、他の部位に比べて角質の保湿が不十分になりがちなことも乾燥を助長させます。さらに、手指は生活の中で多くのものに触れるため、刺激を受けやすく、知らないうちにアレルギーを起こす物質に触れる機会も少なくありません。

■医師と原因共有し、治療・予防を

 このような手指の皮膚の特徴を理解しながら、治りづらい原因について医師と情報を共有することが重要です。悪化させる因子への対策や生活改善は、手あれの予防や治療にもつながります。

 悪化因子は人それぞれ異なるため、生活習慣や仕事内容、過去に食材・物質へのアレルギーやアトピー性皮膚炎があったかどうかなどを聞き取り、皮疹の特徴を踏まえて、刺激性かアレルギー性か、もしくはそれらが一緒になった状態かの評価が必要です。また、食品や歯科金属、環境中の金属はごく微量ですが口、腸、気道の粘膜から吸収され、一部が汗に混ざって排せつされます。この汗に含まれる金属により、手や足に小さい水ぶくれをきっかけにしてカユミや湿疹ができることがあります。手のひらや足の裏は人体の中で汗を出す器官(汗腺)が最も多い上に、汗に含まれる金属濃度が高くなりやすい部位です。

 保湿剤による日々のハンドケアはもちろん大切ですが、一度できた手指の皮疹やかゆみの多くは、皮膚のバリアー自体が壊れていることがあり、治すきっかけをつくるにはしっかりした診断と治療が必要になります。

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