彦根城天守前でラジオ体操続けたい 市「文化財保護のため場所変更を」

【資料写真】国宝の彦根城天守(滋賀県彦根市)

 2024年の世界遺産登録を目指す彦根城(滋賀県彦根市)の国宝・天守前で、早朝にラジオ体操をしている市民に対し、市が場所を変えて行うよう求めている。開場時間外で文化財の管理面などが理由。参加者らは陳情書を提出し、継続できる環境づくりを求めている。

 天守前には広場があり、市民らが一年中集い、毎朝6時半にラジオ体操を始める。30年前から続ける男性(80)によると、市民らが自然に集まるようになり、昨年は家族連れや高齢者ら延べ約6800人が足を運んだ。

 琵琶湖や城下町の町並みの眺望も魅力で、男性は「城はもちろん、朝日を受けた一帯の景色を見ることができる超一流の場所で健康増進ができ、値打ちがある」と話す。これまで大きなけが人が出るなどトラブルはないという。

 世界遺産登録活動を進める中、市は3月中旬、参加者側に口頭で場所を変えるよう求めた。文化財課は「そもそも開場時間(午前8時半~午後5時)外」とし、国宝や重要文化財の保全や防災・防犯面から、城の内堀沿いの金亀児童公園などでの活動に移行するよう伝えた。

 これに対し、男性らは「天守で健康づくりをする会」(仮称)を立ち上げ、4月4日、市に陳情書を提出。約140人分の署名を添え、「長年ラジオ体操を通じ、生活リズムや郷土愛を育んできた。城内の異変や不審者にも注意を払い、一定の防犯、抑止効果も担っている」とし、理解を求めている。

 市も、市民らの長年の生活習慣を突然断ち切るような事態は避けたいとし、対応に頭を痛める。

 井伊岳夫文化財課長は「参加者の方々の城を大切にされる思いはありがたい」とする一方、各地の社寺で液体がまかれた事件や3年前の首里城(沖縄)での火災などを念頭に、「市としても国宝などの文化財を保護し、将来に伝えなければならない。何とか場所を変えてお願いできないか」とし、今後、参加者との話し合いの場を設けるとしている。

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