はたらく世代にも増えている摂食障害! SOSサインに気づくポイントは5つ

新型コロナウイルス感染症発生以降、摂食障害で医療機関を受診する人が増えています。
2021年10月に国立研究開発法人国立成育医療研究センターが公表した調査によれば、新型コロナ流行前の2019年度と比較して、2020年度は摂食障害による20歳未満の新規外来患者数は約1.6倍、入院患者数は約1.4倍に増加しました。
また、厚生労働省の精神保健福祉資料によると、摂食障害の国内患者数は20万人以上であり、この背景として、自粛生活や行動制限のストレスや不安の高まりが考えられます。
そこで今回は、新型コロナで身近になった摂食障害の病態と当事者の特徴、周囲がSOSサインに気づくポイントについてわかりやすく説明します。

摂食障害はどんな病気?

摂食障害は、ストレスにうまく対処できないときに体にさまざまな症状が現れる「心身症」のひとつです。
ここでは代表的な摂食障害を2つ説明します。

神経性やせ症

神経性やせ症は、食事摂取を制限して慢性的な低体重に至る病気で、低体重にもかかわらず「太っている」と自覚するボディイメージのゆがみ、体重増加への強い恐怖感を抱いています。
過食や排出行動(自己誘発性嘔吐や下剤乱用)を行わない摂食制限型と、習慣的に行っている過食排出型があります。
過食排出型も結果的には低栄養で低体重となります。

神経性過食症

神経性過食症は、食行動のコントロールがきかず、頻繁に過食をしてしまう病気で、大量の食物を一気に詰め込む「むちゃ食い」が特徴です。
この行動には自己評価に対する体重や体型の影響があります。

神経性やせ症と神経性過食症は、いったりきたりすることもありますが、いずれも結果的には低栄養状態に陥ることで、さまざまな身体合併症を伴います。
また、摂食障害は自身でコントロールができず、就労状況にも影響を及ぼします。
2018年に一般社団法人日本摂食障害協会が実施した調査によれば、およそ8割の当事者が摂食障害のために仕事上の困難を感じていて、その内容は「同じ時間・空間の昼食休憩での緊張」「食べないことへの干渉」など、食べることに伴う困難が多数です。

摂食障害の人は自分を病気だと思っていない

摂食障害の原因は、社会的な「やせ指向」や本人の完璧主義傾向、自己評価の低さなど、さまざまな要因が複合的にかかわっていると考えられていますが、多くの摂食障害当事者に共通しているのは「病識が乏しい」「病気を隠そうとする」ことです。
この傾向により、当事者は医療につながりにくくなっています。
ところが、摂食障害は心身にさまざまな症状をもたらし、死亡率の高い疾患なのです。
だからこそ、周囲の人の気づきが早期発見・早期治療に向けた大きな後押しになります。

周囲が気付けるSOSサインは?

周囲の人は異変を感じながらも、デリケートな問題でどう声をかけたらよいのか迷うかもしれません。
食行動の異常に目が向きがちですが、問題はそのような食べ方でSOSを出している心にあり、「やめようと思ってもやめられない」のが普通のダイエットと大きく違う点です。
腫れ物に触るように接してしまうなど、上司や同僚などからのサポートが少ないと本人は職場内で孤立してしまいます。
食にかかわることや体型変化の指摘は避けるなど、配慮は必要ですが、特別視せずに接しましょう。
周囲の「気づき」は当事者の「SOSのサインキャッチ」ととらえ、ぜひ上司や産業保健スタッフに相談してみてください。

≪摂食障害のよくあるSOSサイン≫
・ やせたり太ったりをくりかえす
・ 食事の後にしょっちゅうトイレに行く
・ 手の甲に「タコ」ができている(自己誘発性嘔吐でできる)
・ いろいろな理由をつけて人と食事するのを避ける
・ 気分の浮き沈みが激しい

「気づき」を大切にしながらも、それにとらわれすぎて「摂食障害」という決めつけが独り歩きしないようにしたいものです。
職場の仲間として、当事者の能力を後押しできるような配慮やサポートをこころがけてください。

【参考】
・ 国立研究開発法人国立成育医療研究センター「コロナ禍の子どもの心の実態調査 摂食障害の「神経性やせ症」が1.6倍に」
・ 厚生労働省「摂食障害」
・ 食障害情報 ポータルサイト(一般の方))「摂食障害について」
・ 菊池裕絵、吉内一浩「摂食行動」(「産業精神保健」2022年2号18~22頁)
・ 一般社団法人一般社団法人日本摂食障害協会「摂食障害患者の就労実態調査と社会復帰支援 報告書(PDF)」

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