天神崎の保全活動紹介 大切にする会の玉井さん講演

天神崎の保全活動や南方熊楠について講演した天神崎の自然を大切にする会の玉井済夫さん(8日、和歌山県白浜町で)

 和歌山県白浜町の南方熊楠記念館は8日、天神崎の自然を大切にする会の業務執行理事、玉井済夫さん(83)の講演会を開いた。玉井さんは天神崎(田辺市)の保全活動や博物学者、南方熊楠と天神崎のゆかりについて紹介した。

 記念館は昨年度、南方熊楠没後80周年特別展「天神崎―熊楠の環境保護精神を受け継いだ地」を開き、あわせて玉井さんの講演も計画していたが、新型コロナの影響で延期した。今回、あらためて開催することとなった。

 玉井さんは、天神崎の保全活動について、1974年に海岸林に別荘の建設計画が持ち上がったことを発端に、未来の子どもたちのために自然を残そうと取り組んできたこと、全国の人々からの寄付による土地の買い取り運動(ナショナル・トラスト運動)として継続し、目標とする面積の半分くらいが保全地となっている経過について説明した。

 また、熊楠の長女、文枝さんから聞いた話として、熊楠は天気が良いと天神崎に行き、採集したり、遊びに来ているお年寄りから民話や昔話を聞いたりしていたことを紹介。さらに熊楠は「天神崎は磯が広いし、景色が良く、いまに大阪の不動産屋がやって来て、土地を買い占め、別荘を建てるに違いない。県や政府に働きかけて、天神崎一帯を保護地区に指定しなければいけない」と語っていたと言い、将来を予見していたようなエピソードも披露した。

 天神崎は森、磯、海が一体となった生態系で、多様な生物、植物があり、子どもたちの自然学習や発表、会や住民による清掃活動などが続いていることにも触れた。

 玉井さんは「天神崎という小さな自然は地球という大きな自然とつながっている。その小さな自然のために会は48年間頑張ってきた。皆さんの温かい支援に感謝している」と語った。

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