越前和紙の産地、福井県越前市五箇地区。紙漉きの技は約1500年前、岡本川の上流に現れた女神からこの地に授けられたとされ、紙の神様「川上御前」として岡太神社・大瀧神社(同市大滝町)に祭られている。職人たちは、例年5月3日から3日間にわたって営まれる両神社の例大祭で、産地が神とともにある感謝と喜びに浸る。
山中の奥の院からご神体を迎える3日の「お下り(おおり)」で例大祭は始まる。4日は地元の女子児童が川上御前の所作を再現した紙能舞を奉納。和紙の原料のコウゾを刈り取り、皮を煮て、紙を漉く―。厳かな舞が参拝客の目を引き付ける。
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5日は下宮を出発した輿が五箇地区の各神社を威勢よく巡行し、熱気はいよいよ最高潮。夜の「お上り(おあがり)」でご神体を奥の院に送り、和紙の里が沸いた祭りは幕を閉じた。産地は日常に戻っても、各工房の神棚には川上御前の分霊が祭られている。紙漉きの営みは、信仰と一体となって受け継がれている。