実態のあるものへ投資せよ、詐欺を見抜く方法は?

資産運用に対して、しっかりとした考え方がかなり広まってきた印象を受けます。多くの個人投資家がいわゆる「長期・分散・積立」に基づいて、つみたてNISAの非課税制度を活用して資産形成をしています。これはひとえに投資を啓蒙してきた方々の継続の結果だと思います。

しかし、一方で投資よりも前に身につけておくべきお金を守るという姿勢や考え方は未だに普及していないと感じることが多いので、今回は一般的なアプローチとは少し毛色を変えて投資について考えてみましょう。


続発する詐欺被害の実態

最近やたらと詐欺被害の話を耳にします。熊本県内では「介護保険料の還付金がある」という虚偽の電話をかけてATMで現金を振り込ませる還付金詐欺の被害が急増し、熊本県警察が注意を呼びかけています。また、滋賀県大津市では投資名目で約540万円をだまし取られた詐欺事件が発生しました。筆者のもとにもtwitterのダイレクトメッセージや、メールで投資詐欺の勧誘が頻繁に送られてきます。

上記の大津市の例をみてみると、ネット上で「元本保証」や「数日後に配当」という投資会社の広告を見つけて、「お試しプラン」として1万円を投資したそうです。数日後に2万5千円も配当が入ってきて、その後に更なる投資を求められて投資金額が膨らんでいき、最終的には会社との連絡が取れなくなったとのことでした。

筆者は何度も注意勧告していますが、世の中においしい話などそうそうありません。まず「元本保証」というのは詐欺師が使う常套手段であり、基本的にはそのようなものはないと考えましょう。更に現実的ではない「利回り」が並んでいれば、それは100%詐欺と考えていいでしょう。1万円を投資して1週間も経たずに配当として2万5千円というのはどう考えてもあり得ません。仮にそのような高利回りを元本保証で実現できるなら、その会社に年金運用を任せれば日本国民全員が60歳で定年退職して、毎月何十万円も年金をもらって生活できるようになってしまいますからね。

上場企業も騙されるポンジスキーム

しかし、このような詐欺に引っかかるのは個人だけではありません。上場企業であるオウケイウェイヴが2022年4月19日に49億3,300万円の債権の取立不能または遅延のおそれがあると発表しました。何が起きたのかと、いろいろと資料を見てみると、資産運用を委託していた外部企業にだまし取られていたという、いわゆるポンジスキームにはまっていたのです。

ポンジスキームとは、出資者から集めたお金を運用するのではなく、そのお金を配当にまわしてあたかも運用がうまくいっているかのように見せかけて新たな出資者を集めていく詐欺の手法です。

たとえば、Aさんに1万円を出資してもらったら、1週間後に5千円を払い戻します。運用益が出たから配当をしたというのです。一見、1週間で50%の利益を得たようにみえます。すると、これだけうまくいくのなら、もっとお金を出そうと、Aさんは更に1万円を出資します。このやり取りをみたBさんも1万円を出資します。詐欺師の手元には2万5千円あるので、また1週間後にAさんとBさんに5千円ずつ配当を出します。運用しているかどうかは置いておいて、実際に高利回りの投資が実現しているように見えるので、どんどんと出資者が増えていくのです。

しかし、このスキームはいずれ限界がきます。その時になると急に連絡がとれなくなり、気づけば大損をさせられてしまうのです。

やはり怖いのは大学生への詐欺

このようなスキームは昔からあるのですが、時代の流行に合わせて投資対象が株や不動産だったり、太陽光発電、仮想通貨、NFTなど変遷していくのです。最低限の知識があれば見抜けてしまう典型的なスキームですが、人間は欲に負けてしまい騙されてしまうのです。

日本各地で詐欺被害が報じられているのをみて筆者が怖いと感じるのは、大学生の詐欺被害です。今年の4月から成年年齢が18歳に引き下げられました。この結果、大学1年生、2年生が契約をしてしまった時に、未成年だからという理由で事後的に契約を解消することができなくなってしまったのです。

最近は詐欺師がSNSなどを活用しているため、知識がなく、警戒感が薄い大学生が更に詐欺の被害にあってしまうのではないかと心配でなりません。大学のうちから投資を学び、早々に資産運用を始めている学生が増えていますが、その前にお金を守る知恵をつけて欲しいなと思うのです。

お金の使い方を考えよう

元本保証や短期間で高いリターンを提示されてしまうと、ついつい気持ちが揺れ動いてしまうのは仕方がありません。あり得ないとわかっていても、この話だけは本当かもしれない、と都合よく物事を解釈してしまう人間の欲深さや軽薄さも仕方のないと思います。

そのような時は、果たして自分は何に投資をしようとしているのか、根本的な問いを自分に向けて欲しいのです。たとえば、株式投資であれば、上場企業の株式に投資をしていて、そこには企業が抱える資産という裏付けがあるわけです。ただ、よくある詐欺の投資スキームには実態がないことが多く、提示されるのは元本保証や高いリターンと言った言葉だけです。

せっかく大事なお金を投じるのであれば、しっかりと実体のあるものに投資をしましょう。それは必ずしも株や投資信託だけではありません。食事やトレーニング、英会話やプログラミングの勉強にお金をかけることで自分の健康が増進されたり、知識やスキルが向上したりします。筆者はそのような自己投資も含めて、しっかりと何に投資をするのかを選択できる能力を身につけさせることが金融教育だと考えるのです。

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