オンライン遊漁券アプリ拡大中 「川の未来、DXで変える」福井県のフィッシュパス社長

オンライン遊漁券アプリ運営など、DXで日本の川の課題解決を目指すフィッシュパスの西村成弘社長=福井県坂井市丸岡町熊堂

 日本の川が抱える構造的な課題をデジタルトランスフォーメーション(DX)で解決する事業を進めるのが、2016年設立のフィッシュパス(本社福井県坂井市丸岡町熊堂、西村成弘社長)だ。主力は川釣りの遊漁券をオンラインで24時間購入できるスマートフォン向けアプリ。新領域のビジネスモデルで全国150以上の内水面漁協と提携し、シェア約2割まで拡大中だ。

 西村社長「稚魚を放流し、河川環境を管理する全国の内水面漁協は、担い手不足と経営悪化に悩んでいる。川を守り、地方を豊かにするためにも、ICT(情報通信技術)で漁協の課題を解決し、川と人との関係性を変えたい」

 県外で会社勤めをしていたが結婚を機に帰福。故郷の坂井市丸岡町竹田地区で祖父と川釣りをした幼少期を思い出し、竹田川に釣りに行くと、かつての魚のすみかは減り、変容ぶりに愕然とした。原因を探るため福井県立大学大学院に入学。研究で全国の川が抱える構造的な問題が見えてきた。

 西村社長「内水面漁協の収入は遊漁券販売が大きいが、釣り客の9割は県外客で券の購入場所が分からず未購入者も多かった。釣り客を監視する業務も非効率で、それらを解決するDX化をやろうと遊漁券販売アプリを開発した。釣り客を衛星利用測位システム(GPS)で把握する機能も加え、監視を効率化した」

 竹田川漁協で17年にアプリの実証を始めると、遊漁券販売が1.5倍となり漁協経営が一気に黒字化。事業を本格化させ、県内外の漁協にアプリのシステムを提供、券販売に応じ利用料を得る事業モデルを構築した。釣り客向け保険、急な増水の防災通知などのアプリ機能も拡充している。

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 西村社長「県内のほとんどの内水面漁協と提携できた。九頭竜川や足羽川はアユ、サクラマスなど川釣りの聖地として全国的に有名で、県外進出時には名刺代わりになった。全国の漁協は約800あるが、戦略的にまずは川釣りの有名河川を押さえ、北は青森、南は宮崎県まで広げている」

 目標は25年の東証グロース上場だ。シェア6割、売上高21億円に設定し、新規事業にも着手している。一つはドローンを使った河川モニタリング。カワウによるアユの捕食被害が漁協の深刻な問題で、追い払いにも使える。さらに海釣り分野や川の環境評価事業への参入を目指す。

 西村社長「日本の川と地方の未来を変える。その理念の実現に向け、最短で最大の方法が株式上場だと思っている。川の環境が世間に注目され、当社のような地域課題解決型事業が企業経営として成り立つことを示せるし、社会的意義もあるはずだ」

 ■フィッシュパス オンライン遊漁券アプリの開発、運営。IT・デジタル系企業が多く入居する県産業情報センター内に事務所を構え、従業員数18人。アプリのユーザー数は現在約14万人で、提携漁協は36府県で150超。22年9月期の売上高は2億円弱を予想。

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