花嫁衣裳を着て、ゆるキャラ・せんとくんと記念撮影!? 「自称彼女」との急展開イベントにも注目

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奈良県の公式マスコットキャラクター「せんとくん」と一緒に花嫁衣裳を着て記念撮影ができる子ども向けイベント『せんとくんとお嫁さんごっこ!』が、SNSで「面白そうだなw」「大人の部希望」などのコメントともに注目を集めている。

江戸時代末期のものと考えられる花嫁衣裳(白地)を身に着け、「せんとくん」と記念撮影ができる(提供:奈良県立美術館)

同イベントは、4月23日に奈良県立美術館(奈良県奈良市)で開幕した特別展『寿ぎのきもの ジャパニーズ・ウェディング −日本の婚礼衣裳−』開催期間中に計3日間にわたって、男女問わず子ども向けに開催されるもの。2回目の申し込みが終了し、定員をオーバーして抽選になるほどとなった(3回目の申し込みは5月11日から)。

そんななかで、「ごっこ」とはいえ、他の子がお嫁さんになるため、ジェラシーを抱いてしまうのでは?と勝手ながら心配してしまったのが、せんとくんの自称彼女として知られる奈良県葛城市の公式マスコットキャラクター「蓮花ちゃん」。今回、その蓮花ちゃん、イベントを企画した籔内佐斗司館長(彫刻家・文化財修復家)と、同展を担当する飯島礼子学芸員に話を聞いた。

葛城市公式マスコットキャラクター「蓮花ちゃん」。7世紀創建の葛城市にある當麻寺で一夜にして曼荼羅を織り上げたと伝えられる中将姫をモチーフにして生まれたキャラクター。SNSでは「おはれんかっ!キラッ☆」でお馴染み(画像提供:葛城市商工観光課)

公式プロフィール内「好きな男の子」の欄に「せんとくん」と記載する蓮花ちゃんに、「せんとくんの隣で、日本の花嫁衣裳を着てみたいか?」「私という存在がありながら、他の子とお嫁さんごっこするなんて!!という思いは?」と伺ってみたところ…「ライバル大量発生で大ピンチ。これからもっと頑張るからね!!」という、ポジティブで意味深な回答をいただいた。

その取材後に、葛城市が奈良県立美術館に「ぜひ蓮花ちゃんもお嫁さん気分に…」とお願いしたところ、2人が出会えるイベントが急遽企画されることになった。

特別展会場内にある誰でも「せんとくん」とお嫁さんごっこができる顔出しパネル。せんとくんの生みの親である籔内佐斗司館長 (画像提供:籔内佐斗司)

5月15日に、2人で一緒に会場を回り、蓮花ちゃんが打掛を羽織って記念撮影デートするという。かつて七夕の日に「せんとくんと結ばれますように」と願いを短冊に込めた際には、「私もその願い応援します」という応援ツイートがあったり、御坊市観光協会のみーやちゃんが「お二人、とってもお似合いなのみゃ」とつぶやいたこともあったりすることから、ファンには話題となりそうだ。

また、籔内館長も「好意を抱いてくれている彼女(蓮花ちゃん)を否定する理由は何もありません。(イベントが)みんなが笑顔になるような和やかなひとときになりますように」と、今回の2人のイベントが決まった後に、喜びのコメントを寄せてくれた。

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近世から近代にかけての日本の婚礼衣裳をテーマとする特別展『寿ぎのきもの ジャパニーズ・ウェディング −日本の婚礼衣裳−』をきっかけに企画された今回のイベント。籔内佐斗司さんと飯島学芸員に企画意図や展示内容を教えてもらった。

博物館に展示されるレベルの貴重な花嫁衣裳を実際に

お嫁さんごっことは表記されているが、「イベント対象者について「推奨する身長(身長120~140cm)」と「児童」は表示していますが、その他の条件はありません」と籔内館長。そして「100年くらい前の古い花嫁衣裳に実際に触れて、ほんものの真綿の柔らかさや軽さ、着心地の良さを子どもたちに体験してもらえたら嬉しいです。これを機会に、着物好きが増えることや、文化を伝えることの大切さ感じてもらえたら」と企画意図を話す。

ただ、貴重な展示物を実際に触ることはできない。さらに、同展は巡回展であるため、各館の個性を大きく打ち出すのは難しい。しかし、今までも『喜んでもろおてなんぼ』という関西人ならではの気持ちで活動してきた籔内館長は、自ら個人所蔵する約100年前の貴重な花嫁衣裳を子ども達のために用意したのだ。

飯島学芸員は、「イベントのために館長が用意した白地と赤地の花嫁衣裳ですが、私の所見では、白い方は江戸時代末期(幕末)まで遡るものだと思います。本来であれば、保全管理の観点からケースに入れて、ミュージアムで展示されてもおかしくない品なので、そういったものを実際に身に着けられるのは、本当に貴重な機会になると思います。江戸時代と現代では蚕の種類が違うため、当時の絹がとても軽いことを男の子、女の子関係なく身に付けて知っていただけたら」と話す。

飯島学芸員がぜひ観て欲しいとおススメする江戸時代(19世紀前半)の白・赤・黒地の三つ揃い。近江商人の家に伝わったもの(3点とも近江八幡市所蔵、白と赤は5月22日までの前期展示のみ)

SNS上で大人も希望する声があったが、近世・近代では、現代人と平均身長が異なり、小柄であったことや結婚する年齢が今より早かったこともあり、現代の身長130cmの人がしっくりくるサイズの衣裳であったため、「子ども向けイベント」になった。

ジェンダーとは違う視点で花嫁衣裳を見つめて

「女性の婚礼衣裳の用途にフォーカスした展覧会は、今まであまりありませんでした。『婚礼』という言葉で、ジェンダーを意識してしまう人もいると思うのですが、そうではなく、婚礼衣裳を通じて、私達日本人が当たり前に『めでたい』と伝統的に思っている松竹梅鶴亀といった模様などを見つめ直すきっかけになれば。日本人の幸せを祈る表し方、当時の人々がハッピーをどのように表現したのかという伝統的な感覚を辿っていただけたら」と飯島学芸員。

地模様に鶴が織られた綸子(りんず)という格の高い織物。扇の中に松竹梅の刺繡が施され、細部まで凝った模様

日本の伝統的な婚礼衣裳についても一般的には「白無垢」「色打掛」ばかりをイメージしがちだが、江戸時代では、花嫁は一度の婚礼で、白地、赤地、黒地の基本カラーの「三つ揃い」の打掛(うちかけ)に着替えていた。白無垢で式三献(しきさんこん)の儀式に臨み、儀式後に赤(紅・緋)無垢にお色直しをして、その後の行事には黒地の打掛を着用したという。

青い婚礼衣裳!?従来のイメージとはちょっと違う近世の婚礼衣裳

また展示で驚かされるのは、江戸時代に青地の婚礼衣裳が存在したことだ。武家の婚礼では、随伴する女中にも衣裳があり、青地(空色)は、低い身分の女中が身に着けたとされる。青い婚礼衣裳は、両家の結びつきを強固にすることが重視された武家の婚礼を簡略化した町人の婚礼で取り入れられた。

「身分差があるので、武家と同等のものを取り入れることは憚られたため、格が下と考えられていた青地(空色)の婚礼衣装は町人に取り入れやすかったのだと思います。ただ、メジャーだった訳ではなく、あくまで白、赤、黒に次ぐ色として、ときどき青が着用されたようです」(飯島学芸員)。裕福な層では、三つ揃いに続く4着目の衣裳として着用されたと考えられているそう。

江戸時代の裕福な町人女性が着用した婚礼衣裳に青地の打掛が多く見られる。裕福な層では、白・赤・黒の三つ揃いに次ぐ4着目の衣裳として着用されたと考えられている

そして、身分制度が形式上取り払われた明治時代になると、婚礼を挙げることができる階層が増え、形式の簡略化や衣裳の多様化が進んだため、「三つ揃い」から、白・赤・黒地の振袖を重ねる「三つ重ね」に。さらには一般的に黒地の振袖を着用することが定着した。ちなみに当時は、神前式が珍しく、むしろ白無垢は特殊な婚礼衣裳だった。今回の特別展では、婚礼衣裳を通じて、人々の「幸せを願う心」が伝わってくる内容となっている。期間は6月19日まで、観覧料は一般1000円ほか。

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『せんとくんとお嫁さんごっこ!』の3回目のイベント(6月5日開催分)は、5月11日受け付け開始(5月25日受け付け終了)。奈良県立美術館まで、メール(museum@mahoroba.ne.jp)にて申し込み。また、蓮花ちゃんのモチーフとなった葛城市の中将姫に関しては、7月に奈良国立博物館(奈良県奈良市)で特別展『中将姫と當麻曼荼羅』が開催されるので、2人は今後もミュージアムデートを重ねるのではないだろうか。

■奈良県立美術館 https://www.pref.nara.jp/11842.htm

■せんとくんとお嫁さんごっこ https://www.pref.nara.jp/item/265172.htm#itemid265172

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・いずみゆか)